魔法(スペル)
「始まったみたいじゃのう」
校庭にあるアカサ達を包み込んだ白い箱を見てハクはそう言った。
箱の側面の壁に声は聞こえ無いがアカサ達の姿が映し出されている。
「やはり、ヴェリアの魔法は便利ですね」
「ちょっと、ディアロ!そんな物みたいな言い方はやめてよね!便利じゃなくて、凄いって言いなさい!」
ディアロの発言に指を指して怒るヴェリア。
「そんなこと言うなら、魔法解除しちゃうわよ!」
顔をプイッと背ける。
「まぁまぁ、落ち着いてください。ヴェリアの好きなオレンジジュース用意してますから」
どこから出したのか、ディアロはコップに入ったオレンジジュースをヴェリアに渡した。
「わーい!」
好きな飲み物を渡され怒りがどこかに飛んでいったヴェリアは、子供のようにオレンジジュースを飲み始めた。
ディアロはそれをニコニコと笑いながら見ている。
(相変わらず、ディアロはヴェリアをからかうのが好きじゃのう)
そんな2人の様子を懐かしそうにハクは見ていた。
(まぁ、実際のところヴェリアの魔法は凄い。勿論ヴェリア自身もじゃが、"詠唱"が必要そうな魔法を無詠唱だからのう。[魔法の達人]の二つ名に偽りは無しじゃな)
ハクは白い箱に視線を戻し、ヴェリアの凄さを改めて実感する。
[魔法]とは簡単に言ってしまえば、神力の能力を引き上げてくれる、手助けしてくれる力だ。
神力はオーラを消費することなく自由に発動できるが身体的に疲労する。
対して、魔法は使用する際に身体的に疲労すると共に体内のオーラを消費して発動することが出来る。
そして、通常2つまでの魔法しか扱えず、発動するにはかなりのオーラを消費するものが多い。
更に魔法は神力を使い続けると発現する力。
魂創器を出せるようになったからと言って、直ぐに扱える力ではなかった。
しかし、ヴェリアは発現した神力の能力で初めから魔法を扱え、20以上の魔法を気軽に何発も発動できた。
そんなヴェリアが今回発動したのは、[私の箱庭]という魔法だった。
効果は対象を白い箱で包み込み、箱の中に新たな空間を自由に創る出すことが出来る。
本来は敵を閉じ込め、灼熱の空間を創り倒したりする魔法だが、今回はウツロの森のような木々がたくさん生えていて見通しの悪い空間を創った。
外から見たら小さな箱だが、中はそれなりの広さの森が広がっている。
そんな箱の中をヴェリアは上から見下ろすように見ることができ、箱の中の様子を外側の壁に映し出す事もできた。
白い箱に閉じ込め、自由に空間を創り出し、神のように上から見下ろす事もできる。
まさに、私の箱庭だ。
最強の英雄ハクすらも驚くような魔法を発動したにも関わらず、ヴェリアは疲れた様子を一切見せることなく、ぐびぐびと好きな飲み物を飲んでいる。
すると、ヴェリアをからかっていたディアロは今度はハクに話しかけてきた。
「本当は何を見にきたんですか?」
「ん?」
「暇だからと言ってましたが、本当は何か見にきたんですよね」
「暇なのは本当じゃよ。謎のクロビトも騎士団の人達が追ってはいるが、一向に尻尾を見せんしな。ただ・・・そうじゃの、1人気になってる者はいるのう・・・」
ハクはアカサが映し出された所を見ていた。
(もしかしたら、この模擬戦で扉を開くかもしれないからのう・・・)
心配そうにハクは箱を見つめる。
そんな中、箱の中ではそれぞれが出会い、戦いが始まろうとしていた。
♢♢♢
「サラ!」
森の中の開けた場所でカタンとヨウに出会い、2対1の状況になってしまったゴウ。
戦うか、逃げて仲間と合流するか悩みながらもオーラを纏い始める。
するとそこにサラが現れ、開けた場所の中央に集まっていた2人を挟み込むような形になった。
そのまま2対2で戦う、そんな雰囲気が漂う中、ヨウの目にはゴウは写っていなく、サラしか見えていなかった。
「サラーッ!」
ヨウは興奮気味に声を出し、一直線にサラに突っ込んでいった。
「あっ、おい!・・・ちっ、勝手に動きやがって。これだから、でかいやつは」
カタンは予想だにしないヨウの行動に一瞬焦るも、直ぐに舌打ちをし呆れたような声を出す。
「サラ!」
ゴウはサラの下に駆けつけようとするが、カタンが斬りかかり止める。
「ぐっ!」
「行かせるわけないだろ・・・」
ゴウはカタンの攻撃をガードする。
そんな中、ヨウはサラの名前を荒げながら呼び、槍を突き刺すように突っ込んでいく。
「っ!」
サラはそれを避けるように森へ入っていき、ヨウもサラを追いかけるように森へ入っていった。
開けた場所にはゴウとカタンだけになる。
「結局1対1か」
ゴウは両手剣を肩にかつぐ。
「それにしても、昨日からカタンとは何故かは分からんが、妙な縁があるな」
笑顔でカタンに話しかける。
「昨日、あったばかりなのに、もう呼び捨てかよ・・・」
小声でそう言った。
「何か、言ったか?」
「別に・・・まぁ、でもちょうどよかった。お前のこと気に入らなかったから」
「昨日のことなら謝っただろ」
「昨日の事なんか、どうでもいい」
「じゃあ、何でそんな怒ってるんだ?」
「・・・お前には一生分からない」
(分かるはずない・・・そんな恵まれた体を持ってるんだから!)
カタンは短剣の柄を強く握り、再びゴウに斬りかかった。
続く




