模擬戦開始
─ あれは・・・。
こちらへ歩いてくるディアロ理事長、ドルト先生、カルド先生の後ろには2人の影があった。
1人は身長90センチくらいの小柄な女性。
髪は縦ロールで、ローブのようなものを着ている。
もう1人は和服に下駄、短髪で顎には短めの髭が生えている。
そう、3人の後ろにいたのは英雄ヴェリアと英雄ハクの2人だった。
─ 何でまだ冒険者にすらなっていない俺達の模擬戦なんかに英雄の2人が!?
アカサ達は目を開いて驚く。
ヴェリアは胸を張って堂々と歩き、ハクは笑みを浮かべながら歩いてくる。
アカサ達の前まで来るとディアロ理事長を中心に右側に英雄の2人、左側にドルト先生とカルド先生が並んだ。
そして、ディアロ理事長が口を開いた。
「まず、1年間の特訓お疲れ様でした」
ディアロ理事長は、労いのこもった言葉を笑みを浮かべながら言った。
「この1年、虚獣と戦ったり、オーラの扱いを学んだり、チームで戦う事を学んだはずです」
アカサ達は無言で頷く。
「今回の模擬先では、その1年で経験したことを存分に発揮して欲しいと思っています」
ディアロ理事長はそう言い終わると。ドルト先生に今日やる模擬戦の説明を託した。
「今回の模擬戦の対戦形式だが、4体4のバトルロワイヤル型式で行いたいと思う」
ドルト先生は次のように説明してくれた。
・初めは各自バラバラで始まる。
・敵と出会い次第、戦闘開始。
・戦ってもいいし、逃げて仲間と合流をしてもいい。
・どちらかのチームが全滅した時点で終了。
─ なるほどな・・・仲間と合流し連携して戦ってもいいし、1人の時は個の力でどうにかしないといけない。
虚獣相手に培ってきた仲間との連携、オーラの扱いを上手く出来るようになって成長した個の力。この1年の集大成を見せるにはちょうど良いな。
「説明は以上だ。何か質問はあるか?」
ドルト先生がそう言うと、レナが手をあげる。
「その形式じゃ、学校内は狭くないですか?」
当然の疑問だった。
学校の校庭は広くはあるが、何も障害物はなく遠くまで見渡せるのでわざわざバラバラに始める意味がない。
だからと言って、王都の外で模擬戦を行えば虚獣が邪魔に入る可能性が高い。
今回の模擬戦では、木などの障害物が生えていて虚獣が出現しないある程度広い場所が必要だった。
そんなレナの疑問に対してドルト先生が答えようとすると、
「場所に関しては問題ないわ!だって、私がいるんだもの!!」
右端にいるちっこい娘がドヤ顔をしながら大きな声でそう言った。
突然の大声にアカサ達とドルト先生、カルド先生が唖然としている中、ハクと元英雄のディアロは慣れているのか、やれやれな表情になる。
「・・・えっーと、まぁ、そう言うことだ。場所に関してはヴェリア様の魔法があるから問題ない。その為に今日は来てもらった」
ドルト先生は唖然としながらも喋りだした。
ヴェリアは以前として、ドヤ顔のまま胸を張り立っている。
「他に質問はあるか?・・・ないなら始めたいんだが」
「あ、あの」
アカサは手をあげる。
「何だ?」
「ヴェリア様はわかったんですけど、ハク様は何で?」
ハク様の方をチラッと見る。
「ああ、わしのことは気にしなくていいぞ。ただ暇だったから見にきたんじゃ」
ハクはニコッと笑う。
「だそうだ。他に質問は・・・なさそうだな。それではヴェリア様お願いします」
右端にいたヴェリアはドシッドシッと歩きながら、アカサ達の前まで来た。
「やっと、私の出番ね!それじゃあなた達、そこから動かないでね」
ヴェリアは右手を広げ掲げると、手のひらにオーラを集める。
それは、段々と杖の形に形成されていった。
「じゃあ、いくわよ!」
ヴェリアは身の丈くらいある長さの杖の形をした魂創器を出すと、トンッと地面を突いた。
すると、アカサ達の周りを囲むように白い線が地面に描かれる。
そしてヴェリアが、
「魔法 私の箱庭」
そう呟くと、地面に描かれた白い線から白く光っている壁が現れ、あっという間にアカサ達は白い箱に包み込まれた。
白く光っている箱に包み込まれたアカサ達は、その眩しさに数秒目を瞑る。
そして数秒後、アカサが目を開けるとウツロの森のような木々が生えている場所に立っていた。
─ 何が起きたんだ・・・?ヴェリア様が杖をついて、それで白い壁に囲まれて、眩しくて目を瞑って開いたら、ここにいた・・・。
アカサは辺りを見回す。
─ ここは森?ヴェリア様は転移の魔法を使ったのか?いや、でも王都の外だとしたら虚獣がいるはずだけど・・・静かすぎる。どこなんだここは?・・・まぁでも、さっきまで隣にいたレナ達がいないって事は、もう模擬戦は始まってるんだよな?
アカサは困惑しながらも歩き始める。
─ レナ達と合流しても良いけど、ナイトとは1対1で戦いたいよな。
そんなことを思いながらしばらく歩いていると、遠くの方にこちらへ歩いてくる人影が見えた。
─ 誰だ?レナ達だったら合流しても良いが、ナイト達だったら・・・。
アカサは剣を構え、オーラを纏う。
そして、こちらへ歩いてくる人影の姿がはっきり見えると、お互い走り出す。
アカサは思わず笑みが溢れる。
あちらも、笑いながらこちらへ走ってくる。
そして、あちらが剣を振ってくるとアカサはそれをガードし振り払い、後退させた。
「ははっ、よかった。最初に出会ったのがナイトで」
「それは、こっちのセリフだ!」
お互い睨み合う。
会話はいらない。
ただ、この1年を思いっきりぶつかるだけ。
アカサは剣にオーラを勢いよく纏わせる。
「本気で良いんだよな」
「魂創器化・・・は、ははっ、おもしれぇ!そう来なくっちゃな!」
純白に光っているアカサの剣を見て、声を弾ませるナイト。
お互い剣の柄を強く握る。
そして、同時に踏み込み剣を振った。
純白に光っている剣と白いオーラを纏っている剣がガキーンッと激しい音を立てぶつかった。
♢♢♢
(もう、始まってるんだよね?)
レナは困惑しながら、森を歩いていた。
すると、茂みを掻き分けながら誰かがこちらへ歩いてくる。
「あら、レナさん」
リーベだった。
レナは少し嫌そうな顔をする。
「ちょうどよかったです。レナさんと話したいことがあったんで」
リーベは微笑みながらそう言うと、腕を胸の前で組み胸を強調させる。
(ぐっ!この女!)
レナは拳を握り、悔しがった。
♢♢♢
(さて、とりあえずアカサ達を探すか)
ゴウは仲間と合流しようと歩き始める。
しばらく歩いていると、木に囲まれている開けた場所に出た。
すると、中央に細身の長身の男と前髪が目にかかっている低身長な男が集まって立っていた。
(たしか、カタンとヨウと呼ばれてたな)
2人はゴウに気付く。
「カタン先輩、誰か来ましたよ」
「ちっ、でかいのが2人、最悪だ」
「ちょっと、俺は味方ですよ」
ヨウはカタンの頭をポンポン叩く。
カタンは舌打ちをしながら、その手を強く払った。
「いてっ、そんなに強く払わなくても良いじゃないですか」
ヨウは手を振り、痛がる。
「ささっと、やるぞ・・・」
「はいはい。分かりましたよ」
カタンは短剣を両手に持ち、ヨウは槍を構えオーラを纏い始める。
(まずい、2対1か。どうする、逃げてみんなと合流するか・・・)
ゴウはそんなことを考えながら、とりあえず両手剣を構えオーラを纏い始める。
すると、ゴウの正面から槍を持った女の子が森から出てきた。
「サラ!」
中央にいるカタンとヨウをゴウとサラが挟むような形になった。
サラはすぐにオーラを纏い、戦闘体制に入る。
アカサ対ナイト
レナ対リーベ
ゴウとサラ対カタンとヨウ
戦いが今、始まる
続く。




