技
─ やっと・・・やっと、C級の虚獣を倒せた。俺1人の力じゃ絶対に無理だった。レナ、ゴウ、サラが道を切り開いてくれたから倒すことができたんだ。
アカサは地面に落ちた魂石を拾い、3人に感謝をしながら強く握りしめた。
「アカサ!」
後ろを振り返ると、3人が嬉しそうにアカサの下へ駆け寄ってくる。
さらにその後ろには、遠くで見守っていたドルト先生の姿もあった。
「良い連携だったな」
そう一言いって褒めると、ちらっとアカサの方を見て少し難しい顔をした。
(最後、一瞬だけだが魂創器化した・・・あの時点でのシークの魂創器化にも驚いたが、元々持っていた素質がシークは頭ひとつ抜けていた)
オーラの量を体内にどれだけ持って生まれるかは人それぞれだ。
産まれた時点で新米冒険者よりも多くオーラを体内に秘めている赤子もいる。
体内にあるオーラの量が多いと身体は強化されていく。
力が強くなったり、足が速くなったり、怪我の治りが早くなったりと。
シークは産まれつきオーラの量が多かった。
だから、人より身体能力が高く、それに加えてオーラのコントロールも人より上手かった。
実戦前のアカサとシークの最後の模擬戦。
シークはアカサと同じように初歩的なやり方で武器や体にオーラを纏わせていた。
この時、既に魂創器化どころか魂創器を出せるようになっていたのに。
シークはアカサが深夜に部屋を出て、何か特訓をしている事に気が付いていた。
何か奥の手を忍ばせている事に。
だから、シークも魂創器化と魂創器を奥の手として忍ばせる為に、わざと初歩的な纏い方をした。
その為、ドルト先生はシークの魂創器化に驚いた。
(シークはいわゆる天才。魂創器化には驚いたが魂創器を出した事には何も驚かなかった。ただ、アカサは入学当初、確かに他の生徒よりは抜けていたが、シークとはかなりの力の差があった。それなのに、約1年でシークと引き分けるほどに強くなった。それに今も・・・やはり、アカサは人よりも成長速度が・・・)
ドルト先生はアカサの持つ異常な成長速度に不気味さすら感じていた。
その後、アカサ達は身体を休めるため、一旦馬車に戻った。
各々休む中、アカサは自分の手を見つめていた。
─ 最後ジンを斬った時、学校で棒を斬った時よりも刃が軽く入っていったような気がした・・・それに一瞬だけだったけど、いつもよりも剣が白かったような・・・神創器化・・・?
困惑しながらその言葉が頭に浮かんだ。
─ だとしても、どうやったか覚えてないな。あの時はただ、3人がつくったチャンスを無駄にしたくなかった。だから一振りで、一撃で仕留めることだけを考えてた。コントロールなんて全くしてない・・・でも、何となく今もあの感じが残ってる。
アカサの頭は魂創器化の事でいっぱいになり、休憩中にも関わらず、残ってる感覚を頼りに魂からのコントロールに勤しんだ。
そして、休憩が終わるとアカサ達は再び森に入っていった。
若干、C級との疲れが残っていた為、無理せずにE級.D級の虚獣とだけ戦い、この日は特訓を終えた。
くたくたになりながら馬車に乗り、王都へ帰るその道中、アカサはゴウのある変化に気がつく。
「そういえば、ゴウが馬車で酔うこと無くなったよな」
「ん?ああ、確かにそうだな。アカサに言われてはじめて気づいた」
初めて実戦の授業でウツロの森へ向かった時、ゴウがひどく酔っていたのをアカサは覚えていた。
─ あの時は盛大に俺のズボンに吐かれたな。
「何でだ?馬車に慣れたとかか?」
「多分だけどオーラの量が増えたからじゃない?ほら、オーラの量が増えると身体能力が上がったり、身体が強化されるでしょ」
疑問を抱くゴウへレナがそう言った。
すると、本を読んでいたドルト先生が本を閉じ、会話に入ってくる。
「その通りだ。体内におさめられるオーラの量が増えたからだろう。オーラが増えれば増えるほど、身体は強化されていく。ゴウだけではない、アカサ達も特訓初日と比べて疲れにくくなっているはずだ」
─ 確かに・・・疲れすぎて帰りの馬車で眠ることは無くなったし、次の日に疲れが残ってることも無くなった。
「でも、今日は疲れた・・・」
「そうだね。流石に今日は疲れたね。初めてC級を倒したんだもん」
サラは背中を丸め座り、レナもぐったりとした様子で壁に寄りかかった。
─ それにしてもC級か・・・あの時、もし魂創器化?をしてなかったら仕留めきれずに逃げられてたかもしれない。人型は成長する・・・逃げられてたら危なかった。まぁ、その時はドルト先生が倒してくれたはず・・・でも、毎回ドルト先生がいるわけじゃない。学校を卒業したら自分達の力でやっていかなきゃならないんだ。
アカサはもっと強くならないと、そう強く思う。
そして、ある事が頭にふと浮かぶ。
「そういえば、まだ技に関しての授業って無かったよな?」
「そういえばそうだな。技か・・・技を使えるようになればC級ももっと楽に倒せるかもな」
アカサの疑問に対して、女子2人よりも元気そうなゴウが返答した。
2人は教えを乞うような眼差しでドルト先生へ視線を向ける。
それに気づいたドルト先生は再び本を閉じ口を開いた。
「技に関しての授業は本来なら3年の後半辺りからある。そもそも、技と言うのは・・・」
ドルト先生は技とは何かを説明し始めた。
技とはオーラを用いた特殊な攻撃のこと。
そして技には2種類ある。
1つ目は、鍛錬すれば誰でも使えるようになる基本的な技。
2つ目は、自身に合うように具現化された武器[魂創器]の特性や、自身が発現した神力を使って繰り出す独自の技。
例えば、獣型のレオ戦で見せたドルト先生のオーラを斬撃にして飛ばす攻撃、[纏月]は基本的な技に含まれる。
他には、シークが模擬戦で使った[纏撃]も基本的な技の一つだ。
2つ目で言うと、ドルト先生がシークを襲った謎のクロビトに放った[審輝]という技は、ドルト先生の神力によって繰り出された独自の技。
もちろん、基本的な技を繰り出すにもそれなりにオーラのコントロールが必要。
基本的な技を使えるようになるには、最低でも魂創器化は必須だった。
「まだまだ先の話だったな」
「あ、ああ、そうだな・・・」
話を聞き終わると、ゴウも壁に寄りかかり休み、ドルト先生も再び本を読み始めた。
そんな中、アカサは何かに気付いたような表情をしていた。
─ 何となくそうなんじゃないかと思ってたけど、ドルト先生の話を聞いて確信した。俺は一回も竜断なんて使ってなかった・・・俺が今までやってたのは、ただの居合だったんだ・・・。
確かに居合の威力は凄まじかった。
魂創器化した武器と渡り合えるくらいに。
ただ、リョーマの放つ竜断と言う技は、飛行型の中でも最強と言われている竜すらも一撃で倒してしまうと言われている。
そう、竜断とはリョーマの持っていた神力と居合を組み合わせた技だった。
神力は魂創器を出せるようになってから発現する。
魂創器化すらできてないアカサが使えるはずはなかった。
─ リョーマの事が書かれてる本はほとんどない。だから、リョーマがどんな神力をもっていたのかは分からない・・・でも、いつか竜断のような居合の技を使えるようになりたい、心からそう思う。だって、居合は俺にとって特別な構えだから。
アカサにとって居合は母から学び、シークが初めて教えてくれた英雄の構えだった。
アカサの中でリョーマという英雄が徐々に目指すべき像になっていく。
それはシークの影響なのか、はたまたアカサの中に流れる血がそういうふうにさせているのか・・・。
続く




