冒険者の纏い方
まず、ドルト先生は4人の纏い方を正す。
4人とドルト先生の纏い方の違いは、身体から直接纏わせるかどうかにあった。
ドルト先生はオーラを生成する魂から直接体を通して纏っていた。
左胸辺りにある魂から、肩、腕、手、そして武器へと。
そうやって纏うことで、隙間なくオーラを武器へ纏わすことができる。
逆にアカサ達は一旦ある程度のオーラを武器に覆ってから刃に沿うように纏わせていた。
それは、一見多く纏ってるように見えるアカサ達の武器だったが、実際は剣とオーラの間に隙間ができ強度は全く無かった。
「でも、1年の時にこうやって纏えって言ってたじゃないですか」
アカサは少し不満そうに言う。
「確かに去年はそう言った。何故なら1年生の時はオーラの量もコントロールも不十分だったからだ。本来、この身体の中から纏うやり方を教わるのは虚獣と戦い、ある程度のオーラの量、オーラのコントロールが出来るようになる2年の後半あたりからのはずだった」
─ 2年の後半・・・つまり卒業を視野に入れ、卒業条件の魂創器化を学ぶ時期。
「って事は、この纏い方が出来れば武器を魂創器化できる!」
「ああ、そうだ。この纏い方さえ出来れば、魂創器化どころか、魂創器を出すことだって夢ではない」
ワクワクした顔でそう言ってきたアカサに、ドルト先生は魂創器という言葉を出し、さらにやる気を出させた。
(まぁ、魂創器を出すには、更なるオーラのコントロール、そして他にも必要なことがあるんだが・・・今はいいか)
これに関しては、人から言ってもしょうがないことなのでドルト先生は心の中にしまう。
4人はドルト先生から纏い方を教わりながら、早速始める。
が、想像以上に難しかった。
魂から肩まではコントロール出来るが、どうしても腕を通そうとすると、途中で上手くコントロール出来ずオーラが途切れてしまう。
「うーん・・・」
4人とも上手くいかず、声を出し頭を悩ませる。
すると、ドルト先生が口を開き、
「そうだな。魂からのコントロールが難しいなら、まずは腕を循環してるオーラをコントロールしてみると良い」
とアドバイスをする。
言われた通り、とりあえずやってみる。
「武器を持ってる腕だけに集中するんだ。前のように武器に覆ってからコントロールし纏うのではなく、初めからコントロールして纏うんだ。左胸辺りにある魂からオーラは生成され身体全体を循環して行く。肩を通り、肘を通り、手のひらを通り、また肘に戻っていく・・・それを手のひらで終わらすのではなく、持ってる武器まで通すんだ」
ドルト先生は声に出して丁寧に教える。
─ 肩・・・肘・・・手のひら、ここで武器まで通す!
すると、スゥーッと沿うようオーラが纏われていく。
─ この感じだ・・・武器と身体を分けちゃダメだ。今持ってる剣も腕の延長だと思うんだ・・・。
段々と剣にオーラが纏われていき、ついに武器全体に白いオーラがうっすらと纏われた。
「アカサ、その状態のまま棒を斬ってみろ」
「はい・・・」
アカサは先程の長太い黒い棒の前で構える。
─ っ・・・構えた瞬間、コントロールが・・・。
「スゥー、ハァー・・・」
─ 落ち着け、剣も身体の一部・・・。
落ち着いてオーラをコントロールする。
そして先程と同様、斜めに振り下ろした。
すると、自分でも驚くくらい刃がスゥーッと黒い棒に入っていった。
しかし、途中でコントロールがぶれ、剣は黒い棒の7割くらいの所までしか斬れていなかった。
それでも、アカサは興奮している。
─ すげぇ!斬った感覚がまるで無かった!驚いて思わず集中をきらしちゃったけど、纏い方一つでここまで変わるのか!
「スゥーッて入っていったよ!」
「ドルト先生みたいだったな!」
「すごい・・・!」
アカサの一振りを見て、3人も興奮する。
「途中で集中をきらさなかったら、斬れていたな」
「ドルト先生!すごいですよ、これ!」
「まだ、初歩だがな。魂からのコントロールができれば一人前だ」
腕を循環しているオーラを武器に纏うのと、魂からオーラをコントロールして武器に纏わすのでは一つ大きな違う点があった。
それは、纏う速さ。
オーラはある一定の量が体内を巡っている。
循環する速さは常に一定。
しかし、オーラを生成している魂からのコントロールが出来れば、体内を巡るオーラを速く循環させることができ、速く武器に纏わすことが出来るようになる。
そうする事によって、武器を魂創器化する事ができるのだ。
魂創器化とは武器をオーラで侵食すること。
素速く纏わせなければ侵食する事は不可能だった。
「まぁ、とりあえずこれはやり続けることだ。やり続ければいずれ慣れてくる。大変だがな」
─ そうだ。強くなるには一歩、一歩進んでいくしかないんだ。
気を引き締めて、再び特訓を始める4人。
この日は、ひたすらオーラのコントロールの特訓をした。
最初は上手く纏えていたアカサだったが、どうしても途中で集中がきれてしまう。
他の3人も何とか腕からの纏いは出来るようになったが、斬ろうとすると集中が続かなかった。
そうしているうちに、今日の特訓は終わった。
アカサ達は武器を武器庫へしまいに行く。
サラが小走りで武器庫へ向かうのをアカサは追いかけた。
「サラ!」
呼び止めると、こちらへ振り向く。
「どうしたんですか・・・?」
「その、ごめん!特訓が始まる前に変なこと聞いて・・・」
[ムクロ]、この言葉はサラから切っても切り離せない言葉だった。
ムクロとは、ウツロの森の近くにある小さな集落。
そこに住む人達は日々、虚獣を倒して暮らしている。
特訓が始まった初日、アカサはサラの戦闘を初めて見た。
その姿は1年生のはずなのに虚獣との戦いに慣れているように見えた。
その時、アカサはサラが学校に入る前に虚獣と戦ったことがあるんじゃないか、そう思った。
そして、そのムクロは罪人達が暮らしている集落でもあった。
なので、誰も近づこうとしない。
王都に行けば、避けられ、罵声を浴びせられる事もある。
サラはそんな集落で育った。
「アカサ先輩が謝る事は何もないです・・・あれは、私が悪いんです」
暗い顔をしている。
「いや、でも・・・」
「本当に大丈夫ですから・・・」
そう言うが、顔は暗いまま。
「・・・アカサ先輩は、私がムクロ出身だって聞いた時、どう思いましたか・・・?」
サラは自分の両手をぎゅっと丸め、目を瞑りながらそう聞いてきた。
「別に、何も思わなかったけど?」
「・・・えっ?」
キョトンとした顔でそう言ったアカサにサラは目を開けて驚く。
「別にサラはサラだろ。ムクロ出身とか関係ない。俺を癒してくれるただの後輩だ」
「・・・!」
『サラはサラだよ。僕の可愛い後輩だ!』
アカサの言葉はある人がサラに言った言葉に似ていた。
その言葉はサラの暗くなった気持ちを晴らしていく。
「シーク先輩みたい・・・」
サラは下を向き小さな声で呟やく。
「えっ?なんか、言った?」
「・・・何も言ってないです!」
顔を上げ、笑顔でそう言った。
「そっか、何も言ってないか!」
アカサはサラのすっきりした顔を見て一安心した。
そして、抱き抱えようと近づこうとすると、
「今は、いやです。汗臭いので・・・」
真顔で拒否られ、放心状態になるアカサ。
そのまま、サラは1人で武器庫へ向かった。
そんなアカサに後ろから様子を見ていたレナとゴウは駆け寄る。
「前にも言ったでしょ、サラは小さくて可愛いけど1歳しか変わらないんだから気をつけろって」
「別に・・・俺は、気にしないのに・・・」
「あんたじゃなくて、サラが気にするんだって。女の子はそういうの嫌なの」
すると、叱るレナの体をくんくんと嗅ぎ始めるアカサ。
「別に、臭くないぞ」
「嗅ぐなバカ!!」
顔を赤らめ、アカサのお腹を思いっきり殴ったレナは怒りながら武器庫へ向かった。
「なんて言うか、アカサはバカだな・・・」
うずくまるアカサに呆れるゴウ。
サラにシークのような面影を見せたアカサだったが、シークのようなバカの面影もレナに見せたアカサだった。
「・・・助けて・・・ゴウ」
続く。




