割れない覚悟
食堂で一緒に昼食を食べた後、明日からまた始まる特訓の為、早めに解散して身体を休めた。
そして夜、アカサが眠りにつくと今までとは違う夢を見た。
「明るい・・・」
昨日まで、周りは真っ暗で何も見えない暗闇の空間に立っている夢を見ていた。
しかし、今日は周りを見るまでもなく明るい。
自分の手足がはっきりと見える。
「レナ、ゴウ、サラのおかげだな・・・」
アカサは3人に感謝をし、明るくなった空間を歩き始める。
しばらく歩いていると、明るみと暗闇の境目が見えた。
境目ギリギリの所まで行き遠くを見ると、暗闇の中に大きな光が見える。
「あれは・・・」
「シークの光だよ・・・シロビトだった頃の」
いつの間にかクロビトのシークが隣に立っていて、そう言った。
「アカサがここ数日、追いかけていた光さ」
「・・・遠いな」
アカサはその光を眺めながら微笑む。
「まだ、あの光を追いかけるのか?」
「いや・・・今の俺じゃあ、いくら追いかけたって近づけない事に気づいたんだ」
「・・・弱いからか?」
「ああ・・・俺は弱かった、心が・・・」
─ 俺は表面だけの強さしか見てなかった。だから、同学年で頭抜けて強かったシークに模擬戦で引き分けた事で、自分の力に自信を持つと同時に自分の力を過信した。俺は無意識のうちにシーク以外の人達を・・・ナイトの事を下に見てたんだ・・・でも、シークは違った。周りをちゃんと見て、みんなと分け隔てなく接していた。みんなに光を与えていた。俺なんかがシークのライバルなんてありえなかった・・・あの光に追いつけるはずなかったのに、今まで俺は隣にあるのが当たり前だと思っていた。
─ 俺は大切な人を守れるくらい強くなりたい、そんなゴールがあるようでないような思いを持って学校に入った。学校を卒業して冒険者になって虚獣と戦ってたらそんな強さが手に入ると思っていた。そんな中、シークと出会ってあいつは俺に明確なゴールをつくってくれた。自分の背中を見せて。それを俺は必死に追いかけた。そしたらいつか、大切な人を守れるくらい強くなれると思ったから。
─ だから、俺はシークがいなくなってどこに進めば良いか分からなくなっていたんだと思う。ちゃんと覚悟を決めたはずがどこかふわふわしてた。だから脆く、軽く叩けば簡単に割れた。・・・でも、ドルト先生に言われてようやく気づいた。
『遠くだけではなく近くも見ろ』
─ 俺の近くにはシーク以外にも明るく優しい光があった事に。
「俺、強くなるよ・・・」
「また、上辺だけか?」
「今度は違う。一歩ずつ踏みしめて強くなる、みんなと・・・それが大切な人を守れる強さに繋がると思うんだ。そして、いつか力も心も強くなったらあの光に近づける、そんな気がするんだ」
遠くに見える光に伸ばしていた手を掴むように握る。
「その為にはまず、1年後のナイト達との戦いに全力で挑む。それが、初めの一歩だ」
そう決意したアカサの顔を見て、隣に立っていた黒髪のシークはコンコンッと何かを叩く素振りを見せる。
「叩いても割れない・・・とても硬く素晴らしい覚悟だ・・・」
そう呟くと、微笑みながら消えていった。
「シーク・・・」
─ ありがとう・・・今度は夢じゃなくて現実で会おう。絶対だ・・・!
♢♢♢
チュン、チュン。
鳥の鳴き声が聞こえてくる。
カーテンの隙間から朝日が差し込み、部屋が明るく照らされている。
アカサはゆっくり目を開けようとすると、いつもよりも目やにが多く、うまく開けられない。
─ 何だ・・・?
目を擦りながら洗面台に向かう。
顔を洗い、鏡で顔を確認するといつも通り目つきの悪い自分の顔が映る。
そんな見慣れた顔をよく見ると、目の横に何かがつたった跡が見えた。
─ 寝ながら、泣いていたのか・・・?
そう思った瞬間、夢でクロビトのシークが消えていったことを思い出した。
「シーク・・・」
─ 大丈夫だ。ビビるくらい強くなって、会った時驚かしてやる。待ってろよ、シーク!
アカサは再び顔を洗う。
そして、着替えてカーテンを開け、太陽の光を浴びながら背伸びをする。
「んー・・・っと」
晴れやかな気持ちになり、身体がとても軽く感じる。
「よし!行くか!」
そう声に出し気合を入れて、部屋を出た。
朝食を食べる為、アカサは1階の食堂へ向かう。
すると、昨日同様、遠くからこちらへ歩いてくるナイトの姿が見えた。
「何してんだこんな所で?学校、辞めるんじゃ無かったのか?」
目の前までくると、鋭い目つきでそう言ってきた。
それに対して、アカサは真っ直ぐナイトの目を見る。
「昨日のは無しだ。俺は学校を辞めない」
「・・・ころころ意見が変わるな、お前は」
「そうだな、確かにそうだ・・・でも、もう迷わない。俺にはこの学校でやる事がある」
もし、アカサが『英雄になる』そう口に出す時が訪れるとしたら、英雄を嫌いになった原因の父親としっかり話をし、仲直りして許した時・・・それか、父親の事を忘れるくらい何かに夢中で、自分の為ではなく誰かの為になりたい、そう心から思った時だ。
「お前に勝って、シークの夢だった英雄には俺がなる!!」
「・・・!!」
その言葉はナイトの心の奥底まで響き、消えかかっていた炎をメラメラと再熱させた。
「上等だ!!お前が英雄の器じゃないって事を改めて思い知らせてやるよ!!」
口角を最大に上げ、ニヤリと笑い、声を弾ませながらそう言ったナイトはアカサの横を通り過ぎて行った。
アカサはそんなナイトの背中を見つめる。
─ 英雄の器か・・・。
アカサは少しだけ気になっていた事があった。
─ シークは最後に器じゃなく、
『アカサは英雄の心を持ってる』
─ そう言っていた。その意味が何となく分かった気がする。今までシークが死んだことを俺は無意識のうちに1人で背負っていた・・・だけど、レナが一緒に背負ってくれると言ってくれた。その、背負ってくれて軽くなった分、俺はシークの意思を背負おうと思う。
─ 多分だけど、シークの言う[英雄の器]は純粋な強さの事。そして、[英雄の心]は言動や行動で人に元気を勇気を・・・光を与える力、そんなんだと思う。シークにとって英と雄、両方揃って英雄なんだ。
─ シークの光は大きい・・・消えてしまえば暗闇で彷徨ってしまうほどに・・・だから、俺に託したんだ。自分が死んだ後に、シークを失って彷徨う人達を救う事を。ナイトが彷徨ってるかどうかは分からない・・・だけど、あいつの願いを叶えられるの俺だけだ・・・!だから、全力で戦う。それが俺の覚悟でもあり、シークの願いだから・・・。
アカサは朝食を済ませ、寮を出る。
眩しいくらい太陽が照らしている外へ。
続く




