懐かしい光景
ポツ、ポツと小雨が降る中、アカサはゴウと共に寮へ戻り、レナとサラに会う為、女子の部屋がある2階へ向かう。
「サラもレナの部屋にいるよな?」
「多分な」
「・・・別に、ゴウはついてこなくてもいいんだぞ」
これは自分の問題で、わざわざゴウまでついてくる必要はない。
それに、特訓が始まってから休日が訪れたのは初めてだった。
ここ数日、アカサ達は朝から夕方くらいまで、ずっとウツロの森で虚獣と戦っていた。
だから、ゆっくり体を休めてほしい、アカサは優しさのつもりでそう言った。
「何だ?1人で女子の部屋に行きたいのか?全く、アカサはムッツリだな」
ニヤニヤしながら言ってきた。
「な、何言ってんだ!ただ、俺は・・・」
「がっはっはっ!冗談だ!・・・なぁに、俺もサラに謝りたいと思ってな。サラは俺たちが喧嘩したから怒ったんだ。謝るなら2人で言った方が良いだろ」
「まぁ・・・そうだな。じゃあ、行くか」
「おう!」
昨日、胸ぐらを掴んで喧嘩していたことなんて無かったかのように2人は他愛のない会話をしながらレナの部屋へ向かった。
部屋の前まで来ると、アカサは扉をノックし声を出す。
コンッコンッ
「レナ、アカサだけど入っていいか?」
足音が近づいてきて扉が開く。
「どうしたのアカサ?」
「よぉ、レナ!もう、動いて平気なのか?」
「ゴウまで。体はもうどこも痛くないよ。リン先生に見てもらったからね・・・とりあえず、部屋の中に入ってよ」
レナはアカサの顔を見て何かを悟り、2人を部屋に入れる。
「サラはいないのか?」
「さっきまでいたんだけど、今は席を外してるよ」
床に座ると、レナは2人の顔を交互に見る。
「その様子だと、2人はもう仲直りしたんだね!」
「あ、ああ。ついさっきな」
「そっか、よかった・・・」
レナは安堵した表情を見せた。
「それで、どうしたの?」
アカサは立ち上がり頭を下げる。
「ごめん!俺が勝手な行動をしたせいでレナに怪我をさせた!それなのに俺は謝りもせず、声を荒げた。殴ってもらっても全然いい!」
レナは少し驚いた表情を見せるが、すぐに笑みを浮かべる。
「別に殴んないわよ。前も言ったでしょ、仲間なんだから助けるのは当たり前」
「でも、俺のせいで危険な攻撃を受けた。もしかたら死んでたかもしれない・・・」
「大丈夫だって。ほら、頭上げて」
「今後はみんなに迷惑はかけない!」
「分かったから、頭上げっ・・・」
「本当にごめっ・・・!」
「ぐちぐち、うるさーい!」
頭を下げて必死に謝るアカサの顔面を立ち上がる勢いを利用してアッパーのように殴るレナ。
「がはっ!」
「アカサー!」
床へ座り込むように倒れたアカサの下にゴウは直ぐに駆け寄る。
「レ、レナさん!?殴ってるけど!?」
「ぐちぐちうるさいのよ!!」
両手を腰に当てて、見下ろすように立つ。
「アカサ昨日、『何で笑ってるんだよ』って言ったよね。自分のしたいように行動した、何の悔いもなかった。私が助けたかったから助けたの!だから、笑ったの!きっと、シークも同じ!アカサのことを・・・大切な好敵手のことを助けれたから、最後は笑顔を見せたんだと思う!」
「でも・・・でも死んだら意味ないだろ!」
殴られたところを抑えながら反論をする。
「確かに私達が知ってるシロビトだったシークはもういない。でも、まだクロビトになって生きてる!あんたが言ったのよ!それに、私だって生きてる!」
レナは胸を叩き自分が生きていること、元気なことを見せつける。
そして、落ち着いた声で諭すように話す。
「アカサにとってシークが特別なのは分かってる。だから、目の前で自分を庇って死んだことを1人で背負い込んじゃうのも分かる。でも、きっとシークはそんなこと望んでない」
レナはしゃがみ、アカサに目線を合わせる。
「それでも・・・それでも、1人で背負いこもうとしちゃうなら私達に話して。一緒に背負ってあげるから!」
「レナ・・・」
シークのような優しく明るい笑顔でそう言った。
その瞬間、気持ちが楽になり身体が軽くなった。
アカサは再び、立ち上がる。
「アカサ?」
─ 俺はまだ、レナとゴウに言ってないことがあった。
迷惑をかけたら謝る。当たり前だ。それと同じくらい当たり前のことを俺はまだ言ってなかった。誰かに救ってもらったり、助けてもらった時に言う感謝の言葉を。
「レナ、ゴウ・・・ありがとう・・・!」
レナとゴウはお互いの顔を見てスッと立ち上がる。
そして、
「「どういたしまして」だ!」
声を揃えて笑顔でそう言った。
すると、扉が開く音が聞こえてきた。
振り向くとサラの姿があった。
「アカサ先輩・・・ゴウ先輩・・・」
「サラ・・・」
サラは2人の姿を確認すると、頬を膨らませ、プイッと顔を背ける。
アカサとゴウは直ぐに駆け寄り、頭を下げ謝る。
「昨日はごめん!もう、喧嘩はしない、約束する!」
「ごめん、サラ!」
2人の方を、ジトーッとした目で見る。
「・・・仲直り、したんですか?」
「あ、ああ、もちろん!ほらこの通り!」
「そうだぞ、サラ!こんなに仲良しだ!がっはっはっ!」
肩を組んでアピールする。
「ふふっ・・・それなら、許します」
そんな2人が面白かったのか、小さく笑った。
アカサとゴウはサラの笑顔を見て、ホッとした表情を見せる。
─ 良かった。やっぱ、サラの笑顔は癒されるな。
気持ちがスッキリして気が緩んだのか、アカサのお腹がグゥ〜と鳴る。
─ そういえば、食堂に行こうとしてたんだったな・・・。
「アカサ先輩、お腹空いてるの?」
「昨日の夜から、何も食べてなくてな・・・」
「じゃあ、みんなで食堂に行こうか!ゴウもサラも、まだお昼ご飯食べてないよね?」
「そうだな、もう昼近くだしちょうど良いな。行くか!」
ゴウはそう言うとアカサと一緒に先に部屋を出る。
部屋の中はレナとサラだけになった。
「どうしたの?サラもお腹空いてるでしょ?」
「・・・」
サラは下を向き、今にも泣きそうな顔をしていた。
レナはそっと近づき、頭に手を置く。
「言ったでしょ、直ぐに仲直りするって・・・ほら、みんなで一緒にご飯食べよ!」
「ぐすっ・・・はい!」
サラは願いが叶い、嬉しそうに泣いた。
「おーい、何してんだ?早く、行こうぜ」
部屋から出てこないレナとサラが気になったのか、アカサとゴウが引き返してきた。
そして、泣いているサラの姿が目に映る。
「ど、どうしたサラ!何で泣いてんだ!?」
「見ろ、アカサ!レナがサラの頭の上に手を乗せてるぞ!きっと、押し潰そうとしてるんだ!」
「そんなわけないでしょ!このバカども!」
「バ、バカはシークだけだ!」
「うるさい!シークに隠れてただけで、あんた達もバカなのよ!」
「ふふっ」
それはシークがいた時のような、懐かしい光景だった。
誰か (前は主にシーク)がバカをし、レナが怒り、サラが楽しそうに笑う。
そんな光景。
続く




