レナの不安
「・・・ここ、どこだ?」
アカサは気がつくと暗闇の中にいた。
何でこんなとこにいるのか分からない。
とりあえず適当に暗闇の中を歩き始める。
しばらく歩いていると遠くの方に光が見えた、アカサは光の方に向かって歩き始めると、だんだん視界が明るくなってくる。
暗闇を抜け明るい場所に出ると、そこには白髪で長髪の男が背中を向けて立っていた。
「・・・シーク?」
「・・・」
シークらしき男は、振り向こうとしない。
「シークだよな・・・何で無視すんだよ、おい!」
アカサは男の肩を掴み、無理やりこちらを向かせる。
顔を確認するとやはり男はシークだった。
「やっぱり、シークじゃん・・・こんなとこで何してんだ?」
「・・・君、誰?」
「・・・はぁー、もういいってそういうのは」
悪ふざけだと思い、アカサはため息をつき呆れる。
すると、遠くからシークを呼ぶ声が聞こえてくる。
「おーい、シーク!」
この声に聞き覚えがあった。
「お!ナイト!」
遠くからシークのことを呼んでいたのはナイトだった。
シークは直ぐに反応して、2人は仲良さそうに肩を組みながら何処かに行こうとする。
「お、おいどこ行くんだよ!」
「・・・別にどこだっていいでしょ?何で、知らない人に教えなきゃいけないの?」
振り返ってそう言ったシークの顔は他人を見るような目をしていた。
「な、何だその顔・・・本気で言ってんのかよ!」
「知らないよ、君みたいな弱い人なんか・・・」
─ 弱い・・・俺が!?
「C級の虚獣すら倒せない人は僕の隣に立つ資格はないよ」
─ 隣に立つ資格・・・
「俺達はライバルじゃなかったのかよ・・・」
「ライバル?何で君みたいな弱い人が僕のライバルなのさ」
─ っ!・・・あの日、模擬戦が終わった日にベランダで言た事は嘘だったのか・・・
「おいシーク、こんな奴ほっといて行こうぜ」
「ああそうだね」
「ま、待てよ!おい、シーク!」
呼び止めようと大きな声を出すが、2人は歩みを止めない。
そんな2人をアカサは走って追いかけるが全然追いつく気配はなく、段々と2人の背中は遠ざかっていく。
すると、再びアカサの周りが暗闇に包まれていく。
まるでシークが辺りを照らしていたかのようだった。
「シーーク!!」
そう叫んだ直後、シークの背中は完全に見えなくなり辺りは暗闇に包まれた。
♢♢♢
「はっ!!」
ベットから勢いよく起き上がったアカサはキョロキョロ首を振って部屋を見渡し、部屋の中が朝日で明るくなっていることを確認した。
「なんだ・・・夢、か・・」
勢いよく起きたせいで掛け布団は床に落ちていた。
それを布団の上に置き直して、カーテンを開け陽の光を浴びる。
「んー・・・とっ」
背伸びをして体を伸ばすと気持ちがいい。
陽の光も浴びて、背伸びもした・・・しかし、いつものように晴れやかな朝を迎えられない。
─ シークの隣に立つ資格がない・・・俺が弱いから・・・。
「はっ!」
─ 何、弱気になってんだ!あれは夢だ!シークがあんなこと言うわけがない!・・・でも、ナイトがC級の虚獣を倒したのは事実だ・・・。
『私達のペースで強くなっていけば良いのよ』
─ 昨日レナはそう言ってたけど、早くあいつに追いつかないと・・・。
アカサは支度し、部屋を出た。
特訓3日目、今日もウツロの森に来ていた。
1日目、2日目同様E級、D級の虚獣と戦い体内におさめられるオーラの量を増やす為、勤しんでいた。
「おらぁー!」
ザシュ
「グウォー・・・」
アカサの一撃により虚獣は倒れる。
「今日は一段と気合いが入ってるなぁ!」
「私も頑張る・・・」
積極的なアカサにゴウとサラは感化される。
しかし、レナとドルト先生はアカサのことを心配そうに見つめていた。
そんなアカサに引っ張られ、今日は12体もの虚獣を倒した。
初めはノリノリだったゴウとサラも、次第に心配が勝っていく。
何故なら、ほとんどアカサが単身で突っ込み、傷だらけになりながら倒していったからだ。
(アカサ・・・)
レナは嫌な予感がしていた。
アカサのこの様子に覚えがあったから。
王都に帰ってきて、ふらふらした足取りで寮に戻るアカサ。
対して、3人はしっかり地面を足で踏みながら寮に戻っていった。
♢♢♢
「・・・また、この夢か」
アカサは暗闇の中、ポツンと立っていた。
─ 暗い、何も見えない・・・光があれば明るくなる・・・でも俺の光は、シークはどっかに行ってしまった。俺が弱いから・・・このままE級、D級の虚獣を倒してても強くならない。早くC級の虚獣を倒さないと・・・早く、強くならないと・・・!
♢♢♢
「・・・」
今日は静かに目覚めた。
アカサはいつものようにカーテンを開け陽の光を浴び、背伸びをする・・・が、やはり晴れやかな気持ちにはならない。
しかし、そんな事は気にも留めずに支度を済ませ、部屋を出る。
その顔は強くなろうとしている人の顔には見えず、瞳は曇っていた。
♢♢♢
今日もアカサ達はウツロの森へ向かう。
そんな森へ向かう馬車の中で、アカサはC級に挑みたいとドルト先生に提案をする。
(・・・ここで断れても勝手に挑む・・・そんな顔だ。今のアカサをほっておくのは危険だ・・・)
アカサの目をじっと見て、そう判断しドルト先生はその提案を受け入れる。
「私は別に構わないが、他の3人はどうだ?」
今はチームで動いている、他の3人の同意も必要だ。
「俺は良いぞ、リベンジもしたいしな!」
「私も、頑張りたいです・・・」
ゴウとサラは快く提案を受け入れた。
「わ、私は・・・」
しかし、レナは言葉に詰まる。
(今のアカサ、3年前の時と同じ顔してる・・・自分の身体なんてどうでも良い、強くなる為なら死んでもいい、そんな顔・・・)
3年前と言うと、母が死に父と喧嘩していて荒んでいた頃のアカサだ。
そんなアカサが心配で追いかけるように学校に入ったレナは簡単に提案を受け入れることが出来なかった。
しかし、ここで断っても勝手に1人で挑もうとしてしまう事はドルト先生同様分かっていた。
(その方が危険よね。今はゴウとサラ、ドルト先生もいる・・・それに、もし何かあっても私が守る!)
そう決意し、提案を受け入れるも不安な気持ちでいっぱいなレナは『このまま馬車が着かなければ良いな・・・』、そう思いながら、馬車に揺られていた。
続く




