C級のジン
ドルト先生に言われるがまま後をついていった場所は、C級の虚獣が出るエリアだった。
茂みをかき分け出てきたのは2メートルを超える人型のジン。
黒い大剣を地面に擦りながら近づいてくる。
「あの鬼スパルタドS教師ぃー!!」
アカサは取り敢えず、遠くでニタァーと笑っているドルト先生の悪口を叫ぶ。
「み、みんな落ち着いて・・・まだ敵は遠い、今のうちにオーラを纏うわよ」
ジンの放つプレッシャーに耐えながら、レナはリーダーとしてみんなを落ち着かせる。
深呼吸をし、落ち着きを取り戻した4人は手の震えが止まった。
そして武器と体にオーラを纏う。
それが戦闘開始の合図となり、ジンは勢いよく走り出して大剣を力任せに横へ振る。
「うおっ!」
横一列に並んでたアカサ達を一度に斬ろうとしてきたが、何とか後ろに跳んで避けた。
「あっぶねー、みんな大丈夫か!」
「なんとかね!」
「危なかったな!」
「ギリギリ・・・!」
咄嗟に身体が動き何とか避けれたが、ジンは4人に余裕を与えない。
大剣を両手で握りサラに向かって振り下ろしてくる。
「サラ!」
ゴウはサラの前に入り、振り下ろされてくる大剣めがけて両手剣を思いっきり振る。
「おらぁーー!!」
ガキーンッ!
武器同士が激しくぶつかる音が響く。
最初は拮抗していたが、段々とゴウの腰が沈んでいく。
「っぐぅーー!」
このままではゴウが押し潰されてしまう。
アカサはジンの腕を斬り落とそうと攻撃する。
ジンはそれにいち早く気付き、大剣に力を入れるのを辞めて後ろに思いっきり跳んで避けた。
「大丈夫か、ゴウ!」
「くっ、はぁはぁ・・・助かったアカサ」
3人はゴウの元へ集まり固まる。
ゴウの手はプルプル震えていて、両手剣を持つので精一杯だった。
─ どうする・・・この中で1番力のあるゴウが1回ガードしただけで握力が無くなってる。俺達がガードなんかしたら腕ごと折れちまう・・・!それに、あの体格で手には大剣を持ってるのにあんなに跳びやがった。見た目以上に身軽だ・・・これが、C級の虚獣・・・。
E級、D級の虚獣を何体も倒して自信がついてきたアカサ達だったが、たった2回の攻撃でその自信にヒビが入る。
(・・・流石にまだC級は早すぎたか)
その様子を離れて見ていたドルト先生は助けようと動き出す・・・が、すぐに足を止める。
何故なら、4人の目がまだ死んでいなかったから。
─ C級の虚獣・・・確かに今までより力、速さ何もかもが違う。ただ、俺は圧倒的な力を持ち、見に見えない速さで動くそんな理不尽と戦った・・・いや、戦いにすらなってなかった。あのクロビトを倒せるくらい・・・大切な人を守れるくらい強くなると決めた・・・!だからこんな所で簡単に諦めてられるかぁ!
アカサは再び剣を構え、みんなを鼓舞するように煽る。
「3人とも、まだ行けるよな?」
「当たり前でしょ・・・!」
「俺だってまだ動けるぞ!」
「私も・・・やれます!」
3人もこんな所で簡単に諦めるような覚悟をしてきたわけじゃない。
武器を構え、先程までとは全然違う顔つきになる。
ジンは4人の気迫に押されたのか、自分からは仕掛けようとしてこない。
「気合いを入れたはいいがどうするか・・・何かないですかねレナさん」
「・・・一応あるけど、チャンスは1回だけよ」
レナは人型だからこその弱点を見つけていた。
3人に作戦を話し、すぐに実行する。
まず、レナとサラが攻撃を仕掛けた。
ジンは2人の攻撃を軽く避けると、不気味な声を出し大剣を振り回して反撃に出る。
「アー」
2人は攻撃をやめ、回避に専念する。
「くっ・・・」
周りにある木がバタバタと斬り倒されていき、辺りは見通しが良くなっていく。
しばらく大剣を振り回して2人を攻撃していたジンだったが嫌な気配に気付き、攻撃をやめアカサの方へ顔を向ける。
アカサは体に纏っていたオーラ、体内にあるオーラをありったけ剣に纏わせていた。
刃のまわりにはモヤモヤと白いオーラが漂う。
"危険"
そう感じたのか、ジンはレナとサラを無視して一直線に走り出し、無防備なアカサ目掛けて大剣を振り下ろしてくる。
「ゴウ!」
それを予知してたかのようにレナはゴウに声を掛けた。
「任せとけ!少し休んだら握力が回復したわ!どりゃーー!!」
ガキーンッ!
再びジンとゴウの剣同士が激しくぶつかり、ゴウがガードしている間にアカサが攻撃をする、そんな先程と同じ展開になる。
しかし、それだとまた避けられてしまう。
それなのに、ガードをしているゴウの顔はジンを嘲笑っていた。
「がっはっはっはっ!かかったなー!」
ジンはアカサの剣に纏ってあるオーラに気を取られ、レナとサラが背後まで来ていることに気が付いていなかった。
「行くよ、サラ!」
「はい!」
C級の虚獣 、人型ジン。
今のレナとサラの攻撃ではかすり傷すらつけられないほどの強敵だ。
しかし、そんな彼女らでも背後から攻撃する事によって体勢を崩す事はできる。
(まったく、いきなりC級の虚獣と戦わせるなんてドルト先生最低よ!・・・ただ、相手が人型で助かった)
2人が狙う場所は頭?背中?足?・・・いや、そんなとこ狙ってもびくともしない。
(子供の頃、よく父さんにやったわ。体格差がある大人の体勢を簡単に崩せるところ・・・膝の裏よ!)
2人が狙ったのは膝の裏、いわゆる関節だった。
人型の虚獣は人間の構造と全く同じなので関節がある。
どんなに体格差のある人でも、膝の裏を押すだけで体勢は崩れる。
人型だからこその弱点だった。
2人はジンの横を通り過ぎるように、左右の膝の裏を攻撃した。
すると、ジンの膝がカックンと落ち、体勢が崩れて重心が不安定になりよろける。
「アカサ!」
「ああ!」
アカサはありったけのオーラを纏わせた剣を鞘に納めて居合の構えをする。
「次は膝カックンされないように気をつけるんだな・・・!これが今の最大火力だ、おらぁーー!!」
-竜断-
その一撃はジンの胴体めがけて放たれ、ドゴーンッと大きな音を立てて5メートルくらい吹き飛ばした。
仰向けに倒れたジンは動かない。
「くそっ!最大火力でも倒せないのかよ!」
「でも、動いてないわ!後少しで倒せるはず、今のうちに追撃を、サラっ!」
「はい!」
まだ動けるレナとサラは、倒れてるジンを追撃しようと近づく・・・が、途中で近づくのをやめた。
「レナ、サラどうした!?」
「・・・ってる」
「えっ?」
「笑ってる・・・」
ジンは空を見ながら、無邪気に笑っていた。
それに恐怖を感じたレナとサラは身体が震えてこれ以上近づけなかった。
ジンはそんな2人に気付き、ゆっくりと立ち上がる・・・すると、アカサとゴウにも見えた・・・口角を上げ楽しそうに笑っているジンが。
「アー♪」
─ っ!?な、何だこのジンの鳴き声・・・今まで戦ってきたE級、D級のジンも『アー』と鳴く事はあったが、こんなんじゃなかった・・・コイツの鳴き声には感情?みたいなのを感じる・・・それに、さっきよりもプレッシャーが凄い・・・!もしかして、まだ本気じゃなかったのか?・・・あいつは俺達とただ遊んでいただけなんじゃ・・・。
「アー♪」
楽しそうに鳴くと、大剣を肩に担ぎゆっくりレナに近づいていく。
「レナ!」
アカサはオーラを使いすぎて身体が思うように動かない。
ゴウは2回もジンの攻撃をガードして、立つことすら出来ない。
誰もレナを助けに行ける状態じゃ無かった。
しかし、アカサ達は戦闘に夢中で忘れていた・・・この状況を作った鬼スパルタドS教師の事を・・・。
「まぁ、合格だな」
そう言って、レナの前にスッと現れた。
「ドルト先生!」
─ そうだ、すっかり忘れてた!ここまでドルト先生と一緒に来てたんだった。
「アーッ!」
ドルト先生が目の前に現れると、ジンの鳴き声が変わる。
怒っているような鳴き声に。
アカサ達の時とは全く違う動きで襲いかかる。
ドルト先生は片手剣の魂創器を手に持つと、襲いかかるジンより速く剣を振り、豆腐を切るかのようにスゥーッとジンの体を真っ二つにした。
「アー・・・」
そして、虚無の声で鳴いたジンは魂石を落として煙のように消えた。
続く




