初めての4人戦闘
カルド先生がナイトたちを連れていった後、アカサ達はドルト先生に連れてかれ馬車でウツロの森へ向かっていた。
道中、みんなと話しながらもアカサはナイトの事が気になっていた。
─ ナイト・・・初めて聞いた名前だった。まぁ、他のクラスの奴とは授業とかでも関わること事が無かったから知らないのは当たり前・・・いや、違うか。単に俺が他の奴に興味がなかっただけだ。現にナイトのあの感じシークとは知り合いみたいだった。関わろうと思えば他のクラスの奴とも関われたはずだ・・・それに、ラインハイト先輩を見た後だったからか、感覚が狂っててあの時は気がつかなかったけど、今思い返せばあいつも凄まじい気迫だった・・・でも何でだ、負ける気がしないのは。これは俺が強くなっているからなのか、それとも・・・。
アカサは先程『他の奴に興味がなかった』そう思ったが、正確には『俺よりも弱い奴に興味がなかった』だ。
これが、自分でも気が付いていない本心。
未だにアカサの頭の隅には学校に入る前に先生とやった模擬戦時の順位があった。
『俺より強い奴はシークだけ、シークにさえ勝てればいい』
その時から、すでに他の人に興味がなくなりシークだけを見ていた。
そのおかげか、驚異的な成長速度を見せ約1年でシークと引き分けるという結果になった。
しかし、今のアカサは経験豊富なドルト先生からしたら[過去に囚われている]、そう見えていた。
1年前の順位に囚われ、他の人も成長している事に気が付いていない。
それに気が付かない限り勝つのは難しい。
ドルト先生は、馬車に揺られながらそんな事を思っていた。
すると、レナがナイトについて話す。
「あのナイトって人、強そうだったね。1年後勝てるかな?」
「確かに強そうな雰囲気はあったな」
「はい、強そうでした・・・」
3人は少し不安な様子だが、アカサは余裕を見せる。
「大丈夫だって、勝てるだろ」
「根拠は?」
「えーっと、ほら俺もレナもゴウも入学前に先生とやった模擬戦時の順位上位だっただろ。それに1年生トップのサラだっているんだ」
「そうだけど、それはあくまで学校に入る前の実力でしょ。みんなだって強くなってるから分からないわ。舐めてかかると負けちゃうかもよ」
「別に舐めてるわけじゃ・・・」
─ ただ、シークの事件をきっかけに英雄・・・本物の強者達を近くで感じたんだ。今さら同学年の奴と戦うなんて・・・。
レナはアカサの本心が分かってるかのように核心をつく。
(前から思っていたがレナはよく周りが見えている。相手の細かいところまで気が付き、それとなく核心をつく。洞察力がこの4人の中でずば抜けている)
4人の会話を黙って見ていたドルト先生は、このチームのリーダーをレナにしようと決めた。
馬車を走らせてしばらく経った。
後少しでウツロの森の入り口に到着。
このタイミングでドルト先生は今日の目的を話す。
「今日はみんなの今の実力、それとチームで戦う事に慣れてもらうためE級、D級の虚獣と戦ってもらう。余裕がありそうならC級に挑戦しても構わない」
C級の虚獣、それは冒険者になった時に訪れる最初の壁。
E級の虚獣は何かが特化してるのが特徴で飛行型なら速さ、獣型なら力、こんなふうに1つの能力が突出している。
なので、劣ってる部分を上手く突けば簡単に倒す事ができた。
しかしD級、特にC級からは全体的に能力も高くなり、知恵もついてズル賢く立ち回ってくるので苦戦を強いられることが多い。
ちなみに人型は何かが特化してるというのは無いが、他の虚獣より少し賢く、成長する。
前に倒しきれず逃してしまったD級の人型がC級になって再び現れたという報告もある。
「そして、チームのリーダーはレナ、お前に任せる」
「えっ!?な、何で私が、リーダーは強い人の方が・・・」
「もちろんリーダーが強いと安心はする。ただ、強いだけでは務まらん。チームで戦闘をするということにおいては仲間のことを考え的確に指示することの方が大事だと私は思う。だから、レナが適任だと判断した」
レナはいつも何かあるたびに手を差し伸べ助けてくれる。
それは周りが見えていたり、気が利いていないと出来ないことだ。
それを普段から感じている3人はレナがリーダーになるという事に一切の疑問や不満は無かった。
「まぁ、レナ以外あり得ないよな」
「そうだな!安心して背中を預けられる」
「安心です・・・!」
「みんな・・・ありがとう、私頑張るね!」
皆んなからの信頼を感じたレナは心良くリーダーになる事を受け入れた。
そして、ウツロの森に着くまでの間、レナを中心に話し合って戦闘時の役割を決めたり、ドルト先生から渡されたE級、D級の虚獣について書かれてる資料を読んだりした。
そして、あっという間に馬車はウツロの森に着いた。
森に入りしばらく歩いているとD級の獣型ヴォールクが現れる。
[虚獣 ヴォールク]
オオカミのような見た目をしていて、いつも3匹で行動している。
しかし、実際は1匹の虚獣で2匹の分身を出していた。
1匹、1匹はそこまで強くはないが、本体を倒さない限り復活し続ける。
と、レナ達は認識していた。
早速チームでの初戦闘が始まり、アカサ達は馬車の中で決めた陣形を組んだ。
前衛には体が大きく力のあるゴウを置き、中衛には速さのあるアカサとサラ、そして最後尾に全体を見回せて指示を出せるレナを置いた。
陣形を引くと1匹だけゴウに襲いかかる。
それを大きく面積のある両手剣でガードするとヴォールクは反動で少し硬直した。
すかさずアカサは追撃する。
2匹になったヴォールクだったが直ぐに復活し、再び3匹になる。
「まぁ、偽物だよな」
「獣型だから力はあるがベアほどではないな。これならいくらでもガードできそうだ!」
男2人が久しぶりの虚獣との戦いで楽しそうにしている中、レナはしっかりヴォールクを観察していた。
「めんどくさいから3匹同時に倒せばいいんじゃないか?」
アカサは誰もが思いつきそうな提案をする。
確かにそれの方が確実で手っ取り早いが、レナはそれだけでは倒せないんじゃないかと、先程の復活するヴォールクを見ていて何となくそう感じていた。
しかし、レナはアカサの提案に乗る。
結局、それが本体を見つけ出すのに必要だったからだ。
「いいよ、それで行こう!アカサとサラは1匹ずつお願い、ゴウは私と最後の一匹を倒そう」
レナは指示を出し、3人は速やかに実行する。
アカサは片手剣で攻撃をいなしつつ、カウンターで倒す。
レナとゴウは先程と同じように、ゴウがガードし隙を見てレナが片手剣で攻撃し倒した。
そんな中、サラは身の丈より長い槍を突くというよりは薙ぎ払いながら、敵を一切近づかせずに慣れた手つきで圧倒し倒した。
「余裕だったな」
「中々、すばしっこかったな!」
「ふぅー、何とか倒せました」
3人は倒して一息つく。
しかし、レナだけは周りをキョロキョロして警戒している。
すると、倒した筈の3匹が復活しだした。
「えっ、何でだ!?・・・あっ、そういえばコイツら倒したのに消えてない!」
「確かに、虚獣は倒したら消えて魂石を落とすんだったな!」
「あわわ、あわわ・・・」
3人は倒したと思い完全に油断していた。
その中でレナだけは復活するのが分かってたかのように動き、何故か茂みの方に向かって勢いよく走り出した。
「大丈夫よ、本体は見つけたから!はぁー!」
「グウォーー・・・」
掛け声と共に茂みに向かって剣を突き刺した。
すると虚獣の唸り声が聞こえ、復活した3匹のヴォールクは煙のように消えていき、魂石は茂みの中に落ちてあった。
「えっ何、4匹目?」
「そう、実はヴォールクは3匹の偽物を操る1匹の虚獣だったのよ」
レナは皆んなに説明をする。
最初にアカサがヴォールクを倒した後に、後ろの茂みが不自然に揺れてから復活したのを見ていた。
そこでレナは、もしかしたら4匹いて本体は隠れているのかもしれない、そう思った。
その疑念を確かめる為、3匹同時に倒し復活した直前に揺れていた茂みに向かって剣を突き刺したらしい。
「よくあの一瞬で気が付いたな」
「流石レナだな!」
「レナ先輩、かっこいい・・・!」
3人からの賛辞に照れながらも嬉しそうに笑顔を見せるレナ。
離れた所で見ていたドルト先生も拍手をしながら近づいてきた。
「良く気が付いたな」
「・・・『良く気が付いたな』じゃありませんよ!ヴォールクが4匹だったなんて配られた資料には書いてなかったじゃないですか!」
ドルト先生から渡された資料にはわざと書いてない事もあった。
ドルト先生曰く、生徒達の観察力を鍛える為だとか。
「お、鬼だ!ここに鬼がいるぞ!死にそうになったらどうするつもりだったんですか!」
「その為に私がいるんだ」
「んぐっ・・・」
元英雄候補にそう言われ、何も言えなくなるアカサ。
それから、E級、D級の虚獣を2体倒して今日の特訓は終わった。
5人は馬車に戻り、王都へ帰った。
続く




