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バカはしんでも治らない(編集中)  作者: すし河原たまご
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覚悟の裏で笑う影

皇帝ストラーフが白の大陸に訪れた翌日。

『成約が破棄された』『クロビトとの争いが始まるかもしれない』と書かれた記事が白の大陸中にばら撒かれた。


[3日前、冒険者や騎士を目指す学校の生徒が外での実戦中、謎のクロビトに襲われ、亡くなると言う事件が起きた。

そして昨日、その事件を女王リア・ランスの手紙で知った皇帝ストラーフは王都を訪れ、謝罪をすると共に成約を破棄したいと申し出た。

破棄したいと申し出た理由は謎のクロビトが生徒を襲った翌日、黒の大陸でクロビトがシロビトに殺されたからだ。

殺されたクロビトは皇帝の右腕と呼ばれていた英雄のセーリオ。

セーリオは死ぬ直前、英雄ハクの名前を言っていたらしい。

皇帝ストラーフ自身は成約を破棄しても、争うつもりはないと言っていたらしいが、英雄を殺されたクロビト達が白の大陸に押し寄せてくる確率は高いだろう。

そして、今後はお互いに一切干渉しない、クロビトが白の大陸で問題を起こしても勝手に殺して構わないと言った。

今後何が起こるか分からない。

再び、人間同士の争いが起きるかもしれない。

騎士達や冒険者達は念の為、争いに備えておいても問題はないだろう]


記事にはシークの名前、英雄ハクが育てた子供という事は伏せられて書かれていた。

もちろん、そのシークがクロビトとなって生き返り、黒の大陸に行ったと言う事は書かれていなかった。


そんな記事を読んだシロビト達は『あの英雄ハクが人を殺すわけない』と、長くこの白の大陸を守ってきたハクを信じた。

しかし、争いが起きるかもしれないという事に怯えるシロビトもいた。

王都ではそんな怯える人達や気合を入れる冒険者達、騎士達がいた中で女王リア・ランスに不満を持ち始める人達が出始めていた。


「この先、本当にリア様で大丈夫か?」

「やっぱり、女王になるのが早すぎたんじゃないかしら」

「ランスの血を引いてるのに、22歳になっても魂創器(ソウル)を出せないんじゃ、頼りないよな」

「前王のヴァーデル王もそうだが、ランスの血も落ちてきたな・・・」


そんな声は徐々に大きくなり、その日のうちに本人の耳にも届く。

リアは自信を無くし、自室に閉じこもる。

心配になった英雄メイはリアの部屋の扉をノックした。


コンッコンッ


「・・・入るぞ、リア」


返事がなかったので、扉を開け勝手に入る。

ドレスのままベットでうつ伏せになり、こちらを見ようとはしない。


「リア、気にすることはないぞ、お主はよくやっておる」


「・・・ないよ」


うつ伏せで、よく聞き取れない。


「メイには分からないよ!私の気持ちなんて・・・」


「リア・・・」


「私だって、女王になりたくてなってるわけじゃない!ランスの血を引いてるってだけで将来を勝手に決められて・・・!言葉遣いだって勉強したし、魂創器(ソウル)も出せるように何回も何回も頑張った!」


ベットから勢いよく起き上がり、普段のリアからは想像がつかないくらいの大きな声を出す。


「それでも出せないんだもん・・・!何が英雄の血よ、何が虚獣よ、何がクロビトよ!・・・何でこんなに争いが起きる世界にしたの、神様・・・」


心の奥にしまってあった本音を、泣きながら打ち明ける。


「何で死んじゃったの父さん・・・」


そんなリアにゆっくり近づき、メイは優しく抱擁する。


「妾や他の英雄達は知っておるぞ、リアが毎日頑張っている事を」


「・・・」


夜遅くまで起きて言葉遣いや歴史を学んでいる事。

それを、アークは邪魔にならないように陰ながら警護していた。

ハクが冒険中、実際に体験したことを積極的に聞きに行き頭に入れ、王都以外の村や町のことも良くしようと考えている事。

魂創器(ソウル)を出そうとして、毎回倒れるくらい頑張っている事。

そんなリアをメイは優しく抱き抱え、毎回ベットまで運んでいた。

リアの不安を減らすために、暇さえあればA級、S級の虚獣(きょじゅう)を討伐に行き、何事もなかったかのように帰ってきて、それを笑いながら面白おかしく話したりするヴェリア。

いつも英雄達はリアの事を1番に考え、見ていて、シロビトのために努力しているのを知っていた。


「何でみんな、私の為にそこまでするの・・・ランスの血を引いてるから?・・・」


「違うぞ・・・」


メイは抱擁をやめ、リアの肩を掴み顔を見る。


「リアだからじゃ、ランスの血を引いてるとかは関係ない・・・ここまでシロビトの事を思い、良くしようと努力してるお主以外、女王にふさわしい奴はいない」


「メイ・・・ぐすっ・・・」


再び目に涙を浮かべる。

しかし、これは先ほどの辛く悲しい涙とは違い、自分の努力を誰かが知っててくれた事への嬉しい涙。


「辛かったり嫌な事があったら、遠慮なく妾達に言えばいい。英雄はどんな時もお主の味方じゃ・・・女王リア・ランス様」


「うむ・・・ぐすっ・・・」


リアはしばらくメイの胸に顔を預けて泣いた。

この涙は覚悟の証。

みんなに認めてもらえる女王になろう、誰もが笑って暮らせるような世界にしよう・・・そんな決意を感じる力強く美しい涙だった。



♢♢♢



リアが立派な女王になると覚悟した裏で、アカサ達も覚悟を決めなければならない出来事が起きる。


いつもなら授業がある午前中、理事長から大事な話があるからと学校に通っている1年生60名、2年生30名、3年生4名、計94名を模擬戦の際に使用している広い校庭に集めた。

アカサはレナ、ゴウと共に2年生が集まっている所へ集合し、理事長が来るのを待つ。

ソワソワしながら待っていると、ビシッとした服を纏い、頭にはシルクハットのような帽子、そして右足に義足をつけた紳士風なおじ様が生徒達の前へ姿を見せた。


─ 会うのは入学式以来だな・・・それにしても引退して5年は経ってるはずなのに、まだ強者の空気を感じる・・・これが、英雄と呼ばれていた人・・・!


[元英雄ディアロ 62歳 男性 二つ名 白鬼夜光(はっきやこう)]


5年前、虚獣(きょじゅう)と戦った際に右足を無くし、現役を引退。

引退した後は冒険者や騎士団を目指す若者達を支援しようと、4年前に以前から王都にあったが休校していた冒険者や騎士を育てる学校を復活させた。

冒険者時代のドルト先生の師匠でもある。


「おはようございます・・・突然ですが、今日皆さんに集まってもらったのはこの学校を辞めるか辞めないか、決めて頂きたいと思い集まってもらいました」


理事長の急な発言に生徒達はざわつく。


「皆さんも知っているとは思いますが、クロビトとの成約が破棄され、争いが起きるかもしれません。

そして、騎士団の人は当然として冒険者も争いに参加する可能性が高いと思われます。

つまり、今この学校に通っている生徒の皆さんはその争いに参加する事になります・・・皆さんに、覚悟はありますか?」


─ 冒険者や騎士団になろうとしてる人は少ない。虚獣(きょじゅう)の数が年々減っていってるというのもあるが、単純に死ぬのが怖いからだ。もちろん、気持ちはわかる。でも、この学校に入った時点でみんなその覚悟はできているはずだ。今更、クロビトと争うからと言ってビビる奴は・・・


アカサは気付く。


─ ちがう・・・理事長が言ってるのは、死ぬ覚悟の話じゃない・・・この学校で冒険者や騎士団を目指している人達は虚獣(きょじゅう)を殺す覚悟はできてる。何故ならモンスターだから、人間を襲うから。でも、クロビトと戦う覚悟ができてる人はほとんどいないはずだ。だって、同じ人間だから・・・つまり、ここで言う覚悟は・・・人を斬れるか、殺せるかの覚悟だ・・・!


昔はそれが当たり前だった。

しかし、シロビトとクロビトの争いが減っていくうちに人を斬る、殺すという普通が普通じゃなくなっていった。

人同士での争いが無くなったこの時代に生まれたアカサ達がその覚悟をするのはとても困難な事だった。


「今すぐに決めなくて大丈夫です。今日1日考えて、覚悟ができた者は明日の朝、同じ時間にまたこの場所に来てください。以上です」


理事長の話が終わり、生徒達は各々自分の部屋に戻り始めた。

その足取りは重い。

アカサ達も一言も会話をせず自分の部屋に戻る。

これは人と相談して決める事ではない、自分の意思で決めなければならない事だったからだ。


アカサは部屋に戻るとベランダに出る。

遠くを眺めていると頭にふとシークが襲われた時のことが浮かぶ。


─ あん時は『シークを助けなきゃ』その一心で斬りかかったから、覚悟とかそんなものはなかった・・・いや、あれも覚悟したからだったのか?『殺してでもあのクロビトからシークを守らなくちゃ』そう覚悟したから、あの時身体が動いたのかもしれない・・・。


ベランダから部屋に入り、次はベットの上に座る。


─ そもそも、俺はこの学校を辞めてその後は何をするんだ・・・強くなるために入ったのにこんな簡単に辞めていいのか?


色々考えている中、2つの嫌な光景が頭に浮かぶ。


─ 母さんとシーク、2度も俺が弱いせいで殺された・・・ここで辞めたら弱いまま・・・何かあった時、また目の前で大切な人を守れず見殺しにしてしまう、そんなのはもう嫌だ・・・!それに、今もシークは黒の大陸で英雄を志して頑張ってるはずだ。・・・今すぐに人を殺す覚悟なんてできない・・・でも、強くなる事を諦めたくない。俺は弱い自分を変えるためにこの学校に入ったんだ。だから、学校は辞めるなんて選択肢はない・・・辞めてたまるか・・・!


アカサは人を殺す覚悟ではなく、大切な人を守れるくらい強くなる、そう覚悟を決めた。

しかし、その覚悟に微かにヒビが入っている事には今のアカサが気付く事はなかった。


アカサはそのまま今日は誰とも会わず、部屋の中で静かに1日を過ごした。



♢♢♢



翌日、アカサが校庭に向かうと昨日まで94名いた生徒は12名にまで減っていた。

その中には、レナ、ゴウ、サラの姿もあった。

そして、理事長が姿を現す。


「おはようございます・・・皆さん覚悟を決めてきたようですね」


理事長は残った生徒、一人一人の目をしっかり見て笑顔で頷く。


「おそらく、昨日ずっと人を殺せるかどうか悩んでいたはず・・・しかし、そんな事を今考える必要はないです」


「えっ!?」


生徒全員、思わず声を出して驚いてしまう。


「・・・どうしたんですか皆さん?私は一度も『人を殺せる覚悟はありますか』とは言ってませんよ」


─ た、確かに言ってなかったような・・・いや、でもあの話の流れはどう考えてもそう捉えるだろ!


「まぁ、私自身そう誘導したんですが・・・ただ、皆さんはおそらく殺す覚悟を決めたわけでは無いはずです。別の覚悟を持ってここに来たはずです」


実際、生徒達に殺す覚悟はできていなかった。


「今はそれで十分です。その覚悟を持ってるか持ってないかで皆さんの成長は大きく変わります。ここに残った皆さんは将来、素晴らしい冒険者、騎士になれることを約束します」


ここにいる12名は他に強い覚悟があったから学校を辞めずに残った人達。


「それでは、今日から厳しく指導していきますので、覚悟しておくように」


こうして、起こるかもしれないクロビトとの争いに参加しても遅れを取らないように、アカサ達の特訓が始まるのだった。



♢♢♢



[???]


「どうやら、皇帝は成約を破棄したらしいですね」


1枚の紙を見ながら不気味な声でそう言う。

その不気味な声は反響する。

洞窟の中なのだろうか?


「そのようじゃな。しかし、お主の思惑通りシロビトとクロビトの仲を破る事は出来たが、記事を見る限り皇帝は争うつもりはないと言っておるようじゃが」


「そこに関しては問題はありません。ストラーフを動かす切り札があるので。今回の目的はクロビトとシロビトを争わすことではなく、あくまでストラーフとハク(あの2人)を戦わせる事ですので」


「そう言えば、そうじゃったのう」


「ストラーフにはしっかりと足止めの役割をしてもらいます」


「・・・ハク(あいつ)を買い被りすぎだと思うがな」


「そんな事ありませんよ。ストラーフ、ハク、あの2人の強さは今の時代にいる事がおかしいくらいなんですから」


「そうかい・・・そんな事より、皇帝を動かす切り札があるならさっさと使ってほしいんじゃがのう。早く暴れたいわい」


「早く暴れたいって、この間1人殺ったじゃないですか」


「あんなの暴れたうちに入らんわい。ほぼ、不意打ちみたいなものじゃ」


老人は不服そうに近くの岩に腰を掛ける。


「あなたには申し訳ありませんが、まだ大人しくしてもらいます。まだやり残しがありますから」


「お人形遊びか・・・ジジイのくせに子供みたいな趣味じゃのう」


不気味な声を弾ませながら言った男に老人は呆れる。


「ははっ、言いますね。見た目はあなたの方が老いてると言うのに。それに、まだ体調もあまりよくありませんし」


左胸辺りを押さえそう言うと、不気味な声の男を心配する男の声が洞窟内に響く。


「まだ、身体の調子が良くないんですか?・・・あの時、研究を邪魔されなかったら完璧な魂を作れたのに!あのおじいちゃん!許しません!」


男は大きなお腹を揺らしながら、足をバタバタさせ怒りをあらわにする。


「まぁまぁ、落ち着いて下さい。これに関しては、一気に"2つ"の白ノ魂を入れたからですね」


不気味な声の男は、次に肥満体型の男をなだめる。


「そうじゃ、落ち着け。ドタドタうるさくて敵わんわ、豚が」


老人は肥満大会の男をなだめるのかと思いきや、悪口を吐いた。

当然、激怒する。


「ぼ、僕ちんを豚って言ったな!いくらあなたと言えど、やっちゃいますよ!ただでさえ、あなたの顔を目障りだと言うのに!」


「別にわしは構わんぞ」


老人はスッと立ち上がる。


「まぁまぁ、仲良くしましょうよ」


そんな2人を不気味な声の男はなだめながら、話題を変える。


「それはそうと、あの子は無事に黒の大陸に渡れたんですよね」


「もちろんです!僕ちんの力で橋の近くにいたクロビト達を操ってる間に、無事に大陸へは渡れたみたいです!」


「それは、何よりです」


「ただ・・・上手く操る事は出来ませんでした。橋の近くまでは来させられたんですけど・・・」


肥満体型の男は申し訳なさそうに言う。


「そうですか・・・まぁ、無事に大陸へ渡れた事を喜びましょう。あの子は、いずれ私の駒になるかもしれませんから」 


不気味な声の男はそう言うと、パンッと手を叩き、声を弾ませる。


「さぁ!もう少しです!もう少しで、この生ぬるい平和な世界は終わり、久しぶりに楽しい楽しい殺伐とした世界が始まります!楽しみですね!アハっ、アハハハハハッ!」


続く。



























































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