日常
その後、父親に会う為にレイと城の詰所に行ったが居なく、その場にいた騎士に話しを聞くと王都の近くに現れた虚獣を討伐しに行ったみたいだった。
他にも仕事があるみたいで、今日は会えそうにないので仕方なくその場を去ろうとすると、1人の騎士がアカサにこんな事を言う。
「その白い制服。もしかして、"ディアロ様"の学校に通ってるのかい?」
「そうですけど・・・」
「通りで」
「?」
「いや、なに。昨日、学校から緊急連絡を受けた時、アーク様が焦ったようにウツロの森へ出撃してったからさ。そりゃあ、自分の子供がいたら焦るよなって」
「・・・そう、ですか」
アカサはその騎士の言葉を半信半疑で受け止めると、詰所を出て、学校の寮へ戻る。
─ はぁー、疲れた。今日は色んなことがあり過ぎた。
英雄にもなると流石に忙しくはなるよな。レイさんの話によると、今後も予定が詰まってるって言うし・・・
心も体も疲れてぐったりしてるアカサは何とか部屋の前までたどり着く。
扉を開けると、部屋にはレナ、ゴウ、サラが静かに
座っていた。
驚く暇もなく3人はすぐに立ち上がり、何があったのかを聞いて来た。
リアに許可をもらったアカサは、3人に今日あった事をありのまま話した。
シークの過去、橋の上で起きた事、そしてシークは生きていたけど、もしかしたらもう2度と会えない事。
「シークにそんな過去があったなんて・・・」
「俺たちの前では、そんな素振り一度も見せてなかったな・・・」
「シーク先輩・・・」
3人は頭を抱え、うなだれる。
─ そりゃ頭抱えるよな。普段のシークからは全く想像もつかないくらい辛い過去だ・・・。
「でも良かったじゃない、クロビトになったとはいえシークが生きてて。最後の方はアカサの事を少しは思い出してくれたみたいだったし、私達の事もきっと思い出すよ」
レナが嬉しそうに言う。
─ シロビトだった頃の記憶は黒ノ魂と共有してたのか、落ち着いてからは少しずつだけど思い出してたみたいだった。白ノ魂・・・シーとやらのおかげだな。
「でも、シークとはもう会えないかもしれないのか。それは悲しいな。俺が打った武器、使って欲しかったな」
「私も、シーク先輩とまたご飯食べたい・・・」
─ 俺は最後に会えたから割とスッキリしてるけど・・・そうだよな、この3人は朝からずっとシークを気にしてた。会いたいよな・・・。
すると、レナが暗い空気を消すようにパンっと手を叩く。
「私、そろそろ部屋に戻ろうかな。暗くなって来たし」
外を見ると太陽が落ちて真っ暗になっている。
4時間くらい、ずっと喋っていて気づかなかった。
それでも、今日起こった出来事を話すには足りないくらい大変な1日だった。
みんなが部屋を出ていき、1人になったアカサはベットに倒れ込む。
─ 明日から、また普通の生活が始まる。俺はこれから何を目標に頑張ればいいんだ。今までは、シークに追いつこうと頑張ってきた。でも、やっと追いついてこれから追い越そうとした矢先、シークは遠くへ行ってしまった。シークはもう隣にはいない・・・。
考えていると、ふとハクの姿が浮かぶ。
─ ハク様かっこよかったな。実際に英雄に会って印象は変わった。シークが憧れるのも分かる。
『君も英雄を目指すんだ』
─ 英雄を目指すのも・・・ いや、ないな・・・取り敢えず親父と面と向かって話すのが先だ・・・ふぁ〜、眠い。今日は、このまま・・・ねる・・・か・・・ぐぅー、ぐぅー。
父親以外の英雄と出会い、心境が少し変化したアカサは、英雄を目指す・・・一瞬、そう思ったが父親の顔が浮かび直ぐに英雄を曇らせた。
『英雄になる』
もし、アカサがそう本気で思い口にする時が訪れるとしたら、英雄を嫌いになった原因の父親としっかり話をして仲直りし許した時・・・それか──。
♢♢♢
「・・・ん、ふわぁー・・・」
─ 朝か・・・。
昨日、19時くらいに寝たからなのか6時に目が覚めたアカサ。
それでも、11時間寝てる。
アカサはカーテンを開け、陽の光を浴びる。
次に部屋にあるシャワーで体を洗い、着替えを済ませる。
ぐぅー
─ お腹すいたな。そういえば昨日、あのまま寝ちゃったから何も食べてなかった・・・あと少しで7時になるな、食堂に行くか。
食堂へ向かうと、すでに開いておりレナとゴウがメニューを見ていた。
「うぃー、おはよう」
「・・・」
2人はアカサの顔を二度見する。
「えっ!どうしたの、こんな早く起きてるなんて」
「いや、俺も早く起きることはあるだろ」
─ そんなに珍しいか?まぁ、確かにいつも遅いけど二度見するほどなのか・・・。
首を傾げながらアカサは今日もそばを注文する。
席に座るとレナが1枚の紙を机に置く。
「これ今日の朝に出た記事なんだけど、今日、皇帝が来るかもしれないんだって。しかも、皇帝が白の大陸に来るの初めてらしいよ」
「ふーん」
アカサは興味なさそうに蕎麦を啜る。
「ふーん、じゃないわよ。このタイミングで皇帝が白の大陸に来るなんて、どう考えたってシークの事でしょ」
「まぁ、そうか。何だろうな、謝りにでも来るのか?いっそ、成約の話だったらシークとも会えるようになるのにな」
「がっはっはっ!そうだな!」
お互い大陸には足を踏み入れない。
この成約が無くなれば黒の大陸に行き、シークに会えるようになるかもしれない。
アカサがそんな冗談を言うと、ゴウは嬉しそうに笑う。
そんな中、レナは皇帝の姿を想像する。
「皇帝ってどんな人かな。やっぱこう威厳があって、顔も強そうな感じなのかな」
「顔が強そうって・・・まぁでも、強いんだろうな実際、クロビトの頂点なんだし」
「噂では、ハク様と同等の力があるらしいな!」
─ ハク様と同等の力か・・・そういえば、居合とかリョーマの事とか聞くの忘れてたな。次、いつ会えるかな。
アカサはそばを持ち上げ冷まし、勢いよく啜る。
「子供の頃から、そば好きだよね」
「ああ、まぁな」
「そばって元々、王都になかったらしいね。昔、王都に来た女性が料理屋で出したのが初めてなんだって」
「へぇー、詳しいな」
「ま、まぁ、たまたまね。そばの作り方を調べてた時に書いてあったんだ」
アカサは純粋に気になったのでぐいぐい質問をする。
「何で、そばの作り方調べたんだ?」
「え、えっと・・・将来のため、というか」
「将来のため?レナは料理人になりたいのか?」
「う、うるさい!!この悪人顔!」
レナは机の上に置いてあった一味をそばの上に大量にかける。
「な、何すんだ!」
「静かにそばだけ啜ってろバカ!」
─ またバカって言われた。昨日もシークに言われたし、俺って自分で思ってるよりバカなのか?
レナは立ち上がり、食べ終わったお皿を片付けに行く。
ゴウはアカサの肩にポンッと手を置き、哀れみの目を向ける。
「ドンマイ・・・」
「えっ、何が?もしかして俺が悪い?」
アカサは困惑しながらも一味が大量にかかったそばを汗をかきながら啜り始める。
すると、ゴウが一冊の本を机に置く。
「そういえば、昨日借りたまま返すの忘れてたわ!がっはっはっ!」
机に置かれたのは、いわゆるセクシーな本だった。
表紙には水着姿の女性が描かれている。
「ぶふーっ!・・・ごほっ、ごほっ。こ、こんな所でそんなもん出すなよ!それに、その本は俺じゃなくてシークっ・・・」
アカサは思い出す。
さっきまで一緒に食べていた1人の女性はお皿を返しに行っただけだと・・・。
背後に立つ女性の目は怒り、というよりは呆れた目をしていた。
レナは一味の入ったビンを持ち、一言、
「変態・・・」
と言って、再び大量に赤い粉をかけ、食堂を出る。
ゴウはまたアカサの肩に手を置き、
「ドンマイ・・・」
と、今度は笑いを我慢しながら言った。
「ゴウのせいだからな!」
「がっはっはっはっ!シークがいない分、俺がバカやらないとな!」
豪快に笑いながら、ゴウも食堂を出て行った。
─ ったく・・・でも、なんかこういうの久々な感じがするな。まだ、あれから2日しか経ってないのに。
アカサは再び箸を持ち真っ赤に染まったそばを汗をかきながら啜る。
そんな顔が窓にうつり、昔を思い出す。
─ そういえば子供の頃、母さんがそば作ってくれたな。そん時も、一味を入れすぎて汗をかきながら食べてた気がする。何で作ってくれたんだっけ?故郷の味とか、そんな事言ってた気がするけど・・・まぁ、いいか。今は、これをどうにか食べないとな・・・。
食堂で日常を感じれるやり取りをしたアカサ達。
今日は念の為、実戦を中止して学校内での授業となった。
そして、時刻はお昼を迎えようとしていた。
王都の南門には黒の大陸を統べる[皇帝ストラーフ]を乗せた馬車が到着していた。
続く




