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バカはしんでも治らない(編集中)  作者: すし河原たまご
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シークの心の中

─ もう2度と生きて会えないと思っていた。俺を庇って死んだそいつは、いつも笑顔で明るくて、バカで・・・俺の光だった。だから、『まだ生きてるかもしれない』、その可能性が出てきた時、あいつがまだ辛い過去に泣かされていて助けを求めていたら助けてあげたい。今度は俺があいつの光になる。その思いでその名前を呼んだ。


「シーク!!」


男は長い髪を揺らしながら振り向く。


「・・・きみ、だれ?」


「・・・えっ」


目の前には確かにシークの姿があった。

違うのは、髪が黒く、体には黒いオーラを纏い、漆黒の片手剣の魂創器(ソウル)を持っていた。


「はぁー・・・何バカなこと言ってんだよ。ほら、とりあえず魂創器(そんなもの)しまって寮に戻ろうぜ。話したいことが沢山あるんだ」


アカサはいつもと同じようにシークに話しかけ、手を掴もうと近づく。


「来るな!」


シークは魂創器(ソウル)を振り回し、アカサが近づいてくるのを阻む。


「うわぁ!ちょっ、このバカ危ないだろ!たくっ・・・なんか、昔の人がバカはしななきゃ治らないとか言ってたみたいだがそれは嘘みたいだな。ほら、帰るぞ」


アカサは冗談を言いながら、再びシークに近づく。


「だから、来るなって言ってるだろ!」


しかし、シークは変わらず魂創器(ソウル)を振り回す。

その必死な表情にアカサは段々と現実を受け入れていく。


「シーク・・・本当に俺のことが分からないのか?」


近づこうとする歩みは少しずつ遅くなっていく。


「だから、君なんか知らないって言ってるだろ!そもそもシークって何!?ぐっ、頭がっ・・・はぁ、はぁ、」


魂創器(ソウル)を振り回すのをやめ、頭を抱える。


─ 自分の名前すらも覚えてないのか!?それに何か様子もおかしい・・・何だろう?行動や言動が幼い?まるで癇癪を起こした子供みたいだ。


「気づいたか、アカサ君」


しばらく2人の様子を後ろで眺めてたハクはアカサが何か違和感を感じたのに気付き、声をかける。


「ハク様・・・これはいったい?」


「今のシークは4歳頃の子供と思っていいじゃろう。おそらく、13年前のあの日から黒いオーラに触れず、黒ノ魂の成長が止まっておった影響じゃろうか」


─ 今のシークは白ノ魂が無くなって身体の中にあるのは子供の頃に成長が止まった小さな黒ノ魂だけ・・・だから、クロビトになった今のシークは4歳の子供・・・?それじゃあ、俺やレナ、ゴウ、サラ、シロビトとして1年間一緒に過ごしてきたことはもう憶えてない・・・?・・・これじゃあ、いないのと同じだ・・・今、目の前にいるのは俺の知ってるシークじゃない・・・全くの別人・・・。


「ぐっ・・・あっ!・・・はぁ、はぁ」


─ ・・・ってそんな簡単に割り切れるか!覚えてないから何だ!目の前で見知った奴が苦しんでるから助ける!今はそれだけだ!・・・でも、どうすれば・・・近づいたら攻撃されるし・・・。


「わしが行こう」


ハクはアカサの肩をポンッと叩きシークに向かって歩み始めた。


「シーク、頭が痛いのか」


「はぁ、はぁ、うるさい!僕に近づくな・・・!」


ハクは歩みを止めず、触れる距離まで近づいた。

そしてオーラを纏わず、生身でシークの頭に優しく手を置く。


「さ、さわるなっ・・・!」


頭に置かれたシワシワの手。

この優しい手に覚えがあった。


(ぐっ・・・あれっ?・・・頭の痛みが和らいでいく。何だろう、この優しく安心する感じは・・・前にもどこかで・・・)


「もう大丈夫じゃ、困ってたら助ける。それが英雄じゃ」


(この、言葉・・・)



♢♢♢



それは暗闇にいた・・・いや、暗闇そのものだった。

周りは真っ暗で何も見えない。

それが動くと暗闇全体も動く。

しばらく歩いてみると、崖に大きな橋がかかっている場所が見えた。

橋の向こうには光が広がっていて、渡ろうとすると誰かの悲鳴が聞こえてくる。

だから、それは渡るのをやめた。

しかし、今度は向こうから近づいてきた。


『ぎゃー!・・・痛い』


全身がヒリヒリする。


『やったな・・・おりゃあ!』


それはやり返そうと近づく。

それから、何回も近づき攻撃し合う。

そしたらお互い少しずつ痛みに慣れて、それらは一緒にいることが多くなった。

大きな橋の上には光と闇が仲良さそうに隣り合うよう重なっている。


しかしある時、光を飲み込むように闇が急激に大きくなった。

光は苦しみながらも闇に飲み込まれないように必死に耐えていると、闇の成長は止まる。

そして、光は飲み込まれた分を元に戻すように大きくなっていき、お互いは再び同じくらいの大きさを保つ。

それから、そんな事が何回も起きた。

その度に光は苦しむ。

だから、闇は願った。


『もうこれ以上、あいつを傷つけたくない!誰か、大きくなるのを止めてくれ!』


そう願っていたら、いつのまにか闇の成長は止まり、

逆に光は橋の上にいることも出来なくなるくらいどんどん大きくなっていく。


『もう、隣にはいれないな・・・』


闇は寂しそうに橋を引き返し、元々自分がいた場所に戻る。

すると、光が橋を渡ってくる。

それは、闇と同じくらいの大きさをしていた。


『よっ!』


『ど、どうしたんだ!?そんな小さくなって!』


『寂しいかと思って遊びに来た!』


光は気遣い、橋を渡れるくらいに分裂させた自分を闇に送った。


『これだったらずっと一緒にいられるね!』


『ぐすっ・・・ああ!』


それから、橋を堺に大きな光がある場所と、闇と光が中良さそうに交わる場所が生まれた。


そして、闇は光に聞いた。

自分の成長を止めてくれたのは誰かと。


『英雄だよ!』


『英雄?』


『うん!誰かが困ってたら、助けてくれるんだって!』


闇はこれを聞いた時から英雄に憧れた。

そして、いつかお礼を言いたかった。

光と一緒にいれるようにしてくれてありがとう、と。



♢♢♢



「えい、ゆう・・・」


「落ち着いたか」


シークの手から魂創器(ソウル)は消え、纏っていたオーラも段々と消えていく。

ハクの手は焼けたように赤く腫れ上がっていた。


「あなたはあの時、僕の願いを叶えてくれた・・・」


「?。何のこと言ってるのか分からんが、わしはお前の親でお前は大事な子供じゃ、シーク」


(シーク・・・段々、思い出してきた。確かその言葉は、前にあいつが言ってた・・・)



♢♢♢



『シーク?』


『本体がそう呼ばれてるんだ!』


時々、光は本体に戻って闇に知らない事を教えてくれる。


『名前ってやつか・・・』


『うん!だからさ、僕たちも名前で呼ぼうよ。えっと・・・本体がシークだから、僕がシーで、君はクーね!』



♢♢♢



(そうだ、シークは本体の名前だ。・・・僕が現実(ここ)にいるってことは・・・シーはもういないんだな・・・)


クロビトとなって暴走してたシークはハクのおかげで落ち着きを取り戻した。

そして、今まであったことを思い出して一気に成長したのか、行動や言動が年相応になってくる。


「ハク様!」


「アカサ君、近づいても大丈夫じゃよ」


─ ハク様、手が赤くなってる。シークもボロボロだ。


アカサが座り込んでいるシークを心配そうに見ていると、シークの口が動く。


「・・・目つきが悪い男・・・いつもシーをバカって言ってたやつか」


─ シー?何言ってんだ?おしっこでもしたいんか?それに何か前に比べて口調が強いような。これも、クロビトになった影響か?


「トイレなら詰所にあるぞ」


アカサは指を指す。


「・・・誰もトイレに行きたいとは言ってない。バカなのか」


─ はっ!今、こいつ・・・バカって言った!やっぱ口が悪くなってやがる!


「っていうか、バカにバカって言われたくないわ!」


「うるさい、バカ」


─ また言ったぞ、こいつ!どんどん口が悪くなっていってる!親の顔が見てみたいわ!・・・まぁ、隣にいるんだけど。


ピィーッ!


すると、森の方から笛のような音が聞こえてくる。

おそらく、まだ詰所に残っていた騎士が集団でこちらに来ようとしているのだろう。

ハクはシークを立たせて黒の大陸へ行くように促す。


「よいかシーク。このまま真っ直ぐ行き、森を抜けて道なりに進んでいけば帝都に着くはずじゃ」


「行かせていいんですか!?」


「クロビトになってしまった以上、もう白の大陸では生きてはいけまい」


ハクはシークの手を強く握る。


「お前ならあっちでも冒険者として生きていけるだろう。わしの子供じゃからな」


「じいちゃん・・・僕。英雄になるよ。それが、僕のできる精一杯の恩返しだと思ってるから」


─ 英雄か・・・結局シークはシロビトになろうがクロビトになろうが目指すものは同じなんだな。


「・・・色々思い出してきたよ。アカサ、君は最後にシーから『英雄の心を持ってる』って言われてたな」


「だから、シーってだっ・・・」


─ 待てよ・・・『最後に』って、それに『英雄の心を持ってる』、それはシロビトの時のシークが最後に言ってた言葉だ。だとしたら、シーは・・・


「ああ、言われた。だから何だ」


「君も英雄を目指せ。それがシーの望みだ」


「・・・嫌だって、言ったら」


「・・・それでも君は自然と英雄になりそうだ。そんな気がするよ」


微笑みながらそう言った。


─ クロビトになってもお前は俺に英雄になれって言うのか。見た目や、口調が変わってもシークはシークだな。


ピィーッ!!


笛の音が近くなってくる。


「それじゃあ、もう行くね。じいちゃん、アカサ、またね!」


シークはそう言いながら黒の大陸へ走って行った。

アカサ達にいつもしていた笑顔を浮かべながら。


続く




































































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