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バカはしんでも治らない(編集中)  作者: すし河原たまご
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悲しい再会

これは王都で女王、4人の英雄、アカサ、ドルト先生が話し合いをしている最中の事。


(ここは・・・どこだ?僕は一体・・・?身体が勝手に動く・・・あっちへ行けって・・・)


男は白の大陸と黒の大陸を結ぶ[グリース]と呼ばれる巨大な橋の目の前に立っていた。

すると、グリースを警護していた白髪の騎士が男に声を荒げながら近づいてくる。


「おい、貴様クロビトだな!何故、白の大陸にいる!どうやって侵入した!」


(クロビト?白の大陸?・・・わからない・・・この人は何を言ってるんだ?)


男は困惑し頭を抱えるが、騎士は構わず男に喋り続ける。


「おい、聞いてるのか!質問に答えろ!・・・仕方ない、取り敢えずこっち来い。詰所で詳しく聞こう」


その騎士は男の腕を掴み、橋の前にある詰所へ連れて行こうとする。


「あ、あの・・・うっ!」


男は突然頭痛を起こし騎士の手を振りほどいて、その場に頭を抱えながらうずくまる。


「っ!がっ、はぁ、ぐっ・・・!はぁ、はぁ、」


(な、何だ!頭の中に・・・これは、子供・・・僕の、子供の頃の、記憶?・・・ぐっ、がっ!)


頭の中に主観で映し出されたその映像には真っ暗な天井、ついたり消えたりする明かり。

そして、黒髪の太った男が自分の腕を掴み無理やりベットに縛りつけ、男が何かをする度に泣き叫ぶ自分の声が聞こえてきた。


「ぐっ!・・・いたい・・・痛い!・・・痛い!!あああぁぁーーーーっ!!」


頭を抱え、うずくまっていた男は急に大声で叫び出した。

それと同時に男の身体から黒いオーラが溢れ出し、近くにいた騎士を襲う。


「な、何だこいつのオーラ!?どんどん身体から溢れ出てきて!?っぐわぁーー!!」


男の身体から溢れ出た黒いオーラは騎士を飲み込むように包み込んだ。

騎士はその場で倒れ、それを詰所から見ていた他の騎士はすぐさま王都へ連絡を入れた。



♢♢♢



[王都ランス]


「シークは生きてるんですか!?」


「可能性がある、と言う事じゃ」


シークが生きてるかもしれない。

アカサは嬉しさと驚きのあまり、大きな声を出してしまう。

しかし、この時のアカサは『クロビトになって生きてるかもしれない』、この言葉の意味をまだわかっていなかった。


「・・・結局、そのシークって子が狙われたのは、何でなのよ」


ヴェリアはハクに問い詰める。


「さっきも話に出たと思うんじゃが、白ノ魂と黒ノ魂を両方持つ人間を創る。しかし、そんな事をしたらすぐに死んでしまう」


「でも、シークって子は・・・」


「ふむ、シークは昨日まで普通にシロビトとして生活していた。黒ノ魂を持ってるのに・・・ここからはわしの推測じゃが、おそらくシークの身体はそれが普通だと思っているのじゃろう」


???


みんなの頭の上にはてなマークが浮かび上がる。

ハクは次のように説明してくれた。


神は人間を創造する時、初めに魂を創ったといわれてる。

それほどシロビト、クロビトにとって魂は重要な物だ。

白ノ魂を持って生まれたら黒ノ魂が持つ黒いオーラは毒になる。

逆も然り。

しかし、シークは生まれる前から黒いオーラに触れ、母のお腹の中にいた時にはすでに2つの魂を持ってる状態で身体が成長していった。

そして、成長したシークの身体は白ノ魂、黒ノ魂を両方持つのが普通だと思い生まれてきてしまった。


「つまり、シークの持つ白ノ魂は黒いオーラを毒とは思ってないんじゃ」


「待ってくださいハク。クロビトの持つ黒いオーラを毒と思っていないなら、クロビトはシークを殺せないはずです」


女王リアはハクの推測に疑問を抱く。


─ 確かにそうだ。俺は目の前でシークの体に纏ってる白いオーラがしっかりと削られていくのを見た。毒と思ってないんだったら、シークに傷をつけられないはずだ。


「それは、恐らくシークの体の中にある黒ノ魂が小さいからじゃろう」


ハクに拾われてからシークに一つの変化があった。

それは髪の色。

ハクに拾われてから一切クロビトの黒いオーラに触れてこなかったからか、体の中にある黒ノ魂の成長が止まり、シークの髪は成長していく度に白くなっていった。


「いくら、黒ノ魂を持っておって毒に耐性を持っておても、純粋なクロビトが持つ黒いオーラ、つまり猛毒の耐性は持っておらん」


─ 今思い返せば、あの謎のクロビトは英雄候補と言われてたドルト先生すら歯が立たなかった相手だ。それなのに、シークは俺がくる前から戦っていたはずなのにまだ生きていた。数秒先が視れる神力(シキ)を使ってたのもあるかもしれないけど、小さいけど黒ノ魂を持っていたシークは普通のシロビトよりクロビトの攻撃を受けずらかったのかもしれないな。


「もちろん今言ったのはあくまで推測じゃ・・・しかし、これが合ってるんだとしたら、シークの持つ白ノ魂はこの世界で唯一クロビトが身体に入れても平気な魂かもしれん・・・謎のクロビトの目的が二つの魂を持つ事なら狙われる理由としては十分じゃろう」


もし、今言ったことが本当なら狙われていてもおかしくない。

でも、どこでその事を知ったのか。

話を聞くたびに次々と疑問が浮かぶ。


「でも、そのクロビトはどこでシークって子が特別な魂を持ってる事を知ったのかしら?」


ヴェリアの疑問にハクは何か思い出したのか、眉間にシワを寄せ、不穏な事を言い始める。


「・・・当時はそんな深く考えずにいたんじゃが、黒の大陸に行って帰ってきた時、気になってもう一度あの建物に行った・・・そしたら、無くなってたんじゃ、わしが殺したはずのクロビトの体が・・・」


「それって、生きてたって事!?」


「分からん・・・しかし、シークの事を知ってるのは奴以外思い浮かばん」


シロビトに悪逆非道な実験をしていたクロビトが生きているかもしれない。

さらに、黒ノ魂と白ノ魂を両方持ったクロビトが生まれてしまったかもしれない。

この話し合いで2つの不穏な存在が浮かび上がり、アカサは下を向き絶望する。


─ これからどうなるんだ・・・またシロビトが酷い実験をされるかもしれない・・・2つの魂を持つクロビト、そんな奴どうやって捕まえれば・・・!


「大丈夫だアカサ、前を見ろ」


ドルト先生は、そんなアカサに気付き顔を上げさせる。


アカサは忘れていた・・・今、目の前にいる4人が何者なのかを。

国が滅びそうな時、世界が滅びそうな時、いつだってそれを救ってきた者達がいた事を。


「まぁ、誰であろうとわしの大事な子供を傷つけた・・・天罰を下すまでじゃ・・・!」


「まぁそんな奴、この最強美少女のヴェリア様が軽く捻ってあげるわ!」


「・・・私はただ、王都を護るだけだ」


「妾がいる限り、誰も死なせんよ」


─ これが、俺達シロビトを昔から救ってきた英雄と呼ばれる人達・・・!


英雄達の発する言葉の安心感と凄さを身体で感じたアカサは、自分の中にあった英雄像が少し変わる。


アカサは子供の頃、母親が父親に対し、よく英雄と言う言葉を口していたのを見ていたが、アカサ自身、英雄自体に興味を持つ事はなかった。

唯一、名前と姿を知っていたのは、シロビトなら知らない人はいないと言われているほどのハク。

そのハクすらも、頭の片隅にあるかないかくらい、子供の頃のアカサは英雄に興味がなかった。

なので、アカサの中では英雄=嫌いな父親だった。

自分と母親を見捨て、英雄になる事を選んだ父親。

しかし今日、実際に他の英雄に会い、英雄=嫌いな父親というのが変わった。


アカサが英雄達の凄さを実感していると、ドタっ!ドタッ!とこの部屋に慌ただしい足音が向かってくるのが聞こえてくる。

ドンドンっと強くノック音がし、勢いよく扉が開く。


「はぁ、はぁ、し、失礼します!話し合いの最中にすいません!急いで報告したいことが!」


「何事ですか!」


息を切らしながら、城に仕える騎士が部屋に入ってきた。


「グリースにある詰所から緊急要請です!髪の長いクロビトが1人で暴れているそうで、すでに30人ほどやられたと報告がありました!」


「わざわざ黒の大陸からクロビトが攻めてきたのですか!?それもたった1人で!」


「いえ、それがクロビトは逆に白の大陸から黒の大陸に渡ろうとしていたみたいで・・・」


─ 髪の長いクロビト!!しかも、そいつは初めから白の大陸にいた!


アカサの頭にシークの姿が浮かぶ。

そして、アカサ同様、シークの事が頭に浮かんだ英雄が直ぐに席を立った。


「わしが行こう・・・アカサ君、君も行くかね?」


「はい!」


アカサはハクと共に城を出てウツロの森を抜けた先、大陸同士を結ぶ橋グリースへ向かった。


2人が部屋から出て行った直後、アークは女王リアへ話しかける。


「リア王女、それより皇帝へ手紙は出されたのですか?」


「ええ、昨日の内に書いて出しましたよ。もう届いていてもおかしくないかと」




[グリース]


「ぎゃぁーー!」


橋の警護をしている騎士達が大人数で襲いかかるが、誰1人として男に近づくことが出来ない。


「なんで・・・なんで、痛いことするの。来ないで・・・来ないでぇー!!」


男は声を荒げ、手に持ってる黒い片手剣の魂創器(ソウル)で次々と襲いかかってくる騎士達を薙ぎ倒していきながら橋を進んでいく。


そんな中、橋の手前にアカサは抱えたハクがスタッと空から降ってくる。


「着いたぞ、アカサ君」


「えっ?も、もう着いたの!?」


普通なら馬車で王都からウツロの森の入り口まで行くのに2時間くらいは掛かるはずだが、走って約1時間程で森を抜けた先の橋前に着いていた。

道中、ハクに抱えられながら物凄いスピードで移動していたからか、アカサの髪はボサボサになっている。

アカサはハクに下ろされると、ボサボサになった髪を手で適当に整えながら、地面に倒れている騎士達を通り過ぎ、2人は悲鳴が聞こえる橋の方へ走る。

橋の上は少し霧がかかっている。


「ぐあぁーー!」


─ 悲鳴が近い!もうすぐだ!


だんだん男の姿が見えてきた。


「シーク!!」


アカサはその名前を呼び、男に近づく。

男はアカサの声に反応し、振り向いた。


「・・・きみ、だれ?」


確かにそこには1年間一緒に過ごしたバカの姿があった・・・しかし、男はアカサの事を覚えてはいなかった。



♢♢♢



時は少し戻り、アカサが城に呼ばれる前。


[黒の大陸]


「失礼します!王都にいるリア・ランス女王から手紙が届いています」


「ああ、すまない。下がっていいぞ」


「はっ!」


黒の大陸の中央に位置する帝都ウォック。

早朝、クロビトの頂点に君臨する皇帝に王都から手紙が届く。


「久しぶりだな、白の大陸から手紙が届くなんて。なになに・・・」


皇帝は大きな椅子に座り、手紙を読み始める。


「はぁー・・・またクロビトが白の大陸で問題起こしたのか。勘弁してくれよ。俺が皇帝になってから悪いことばかり起こる。また、天神(てんじん)に睨まれちゃうよ」


皇帝は椅子から立ち、窓から外を眺める。


「話がしたい、か・・・これで2度めだもんな。クロビトが白の大陸で問題起こすの・・・こっちから謝りに行かないといけないよな。はぁー・・・」


再び、ため息をつく。


この数時間後、黒の大陸でクロビトがシロビトに殺される事件を皇帝は知ることになる。


続く































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