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バカはしんでも治らない(編集中)  作者: すし河原たまご
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シークの過去

[女王リア・ランス 22歳]


すらっと伸びた手足 大きな瞳に長く綺麗な髪。

気品溢れる水色のドレスを着ている。

まるで絵画から飛び出して来たような容姿だ。

3年前の虚獣(きょじゅう)が王都を襲った事件で父のヴァーデル・ランスが亡くなり、19歳で白の大陸を治める女王の座に就いた。

名前の後に付いている[ランス]は、はじまりの英雄[ランス]の子孫であることを証明している。


カツン、カツンと音を鳴らしながら部屋の奥にある玉座に座る。

そして、英雄達は姿勢を直し椅子に座り、それに続いてドルト先生とアカサも姿勢を直す。


「それでは、早速本題に入りましょう。アーク」


「はっ・・・今回集まってもらったのは白の大陸に謎のクロビトが侵入したこと。そのクロビトがシロビトを殺害したこと。そして、そのシロビトの遺体が無くなったことについてです」


女王リアの号令の元、アークは立ち上がり今回起こった3つの問題を話した。


「それで、今回そのクロビトと接触した2名を連れて来ました」


女王リアはドルト先生とアカサの方へ顔を向ける。


「・・・では、その2名に問いかけます。そこにいたのは本当にクロビトで間違いありませんでしたか?」


アカサは伸ばしたはずの背筋をさらに伸ばす。


「間違いないかと、この目で黒い魂創器(ソウル)を出したのを見たので」


「ま、間違い無いです!」


この緊張感のある空気の中、相槌をするのでアカサは精一杯だった。

続けて、アークも女王リアの問いに答える。


「私も少し接触しましたが、間違いなくクロビトで問題ないかと」


「へぇ〜、接触したのにまだ捕まってないってことは逃したんだ。英雄な・の・に、ぷぷぷっ」


「・・・」


「ひっ・・・」


ヴェリアはまた突っかかり、アークに睨まれ怖気付き顔を背ける。

この2人のやり取りに慣れているのか、リアは続ける。


「アークの報告によれば、そのクロビトは転移の魔法(スペル)を使ったそうですし、仕方ないです」


「・・・!!転移の魔法(スペル)って事は、3年前のっ──」


「まぁまぁ、落ち着くんじゃヴァリア。その話はまた今度。今はこの事件について話すべきじゃ」


「むぅー、しょうがないわね・・・」


何か閃いたように言ったヴェリアをハクは落ち着かせ、ヴェリアは渋々納得しながらオレンジジュースを飲み始める。


「ともかく、そのクロビトは転移の魔法(スペル)を使えるだけのオーラを持っていると言う事・・・やはり厄介ですね」


女王リアはそのクロビトが英雄と同じくらいの力を持っている事を再確認すると、次の問題について話し始める。


「次に殺されたシロビトについてですが・・・」


話しながら、ハクの方へ目線を向ける。


「・・・シーク。小さい頃に拾って、それから大切に育ててきたわしの自慢の子供じゃ」


─ ハク様・・・くそ、何でシークが殺されなきゃならないんだ・・・!


アカサは謎のクロビトに対し改めて怒りを覚える。

そして、昨日の戦闘を思い出しているとクロビトの行動にある違和感を覚える。


─ そういえば、何でシークなんだ?殺そうと思えば俺やドルト先生を殺せるタイミングはいくらでもあったはずだ。それなのに、あいつはずっとシークを殺す事にこだわっていた気がする・・・。


「あ、あのクロビトと戦ってて、思い出したことがあるんですけど・・・」


「何でしょうか?」


「えっと、クロビトは何故かシークだけを狙ってた気がするんです。俺やドルト先生が瀕死の時にもトドメは刺さず、ずっとシークだけに殺意を向けてたような気がします・・・」


その違和感を打ち明けると、女王リアはハクの方を見る。

ハクは、クロビトがシークだけを狙った理由に心当たりがありそうな表情をしていた。


「何か、心当たりがあるんですね・・・ハク」


ハクは机の上にある水を一口飲み、静かに口を開ける。


「・・・実は今日アカサ君に来てもらったのは、その心当たりを聞いてもらいたかった、と言うのもあるんじゃ・・・シークの過去について」


─ シークの過去・・・!小さい頃にハク様に拾われた事は本人から聞いた事がある。つまり、今から聞くのはハク様に拾われる前のシーク・・・。


「・・・13年前、わしが冒険者ギルドからある依頼を受けてウツロの森に向かった時じゃった。その依頼内容は、『仕事で森へ向かった冒険者が行方不明になったので探して来て欲しい』と言う依頼じゃ」


これだけ聞いてると普通の依頼だ。

むしろ、英雄が行くほどの依頼ではない。

それでも、ハクに頼んだと言う事はまだ何かあるのだろう。


「問題は行方不明者が多数出たと言う事じゃ。つまり、誰かが意図して冒険者を攫ってると言う事・・・そして、それと同時に虚獣とは違う見た事のないモンスターも現れ始めたんじゃ。そのモンスターはのちに[コール]と名付けられた」


ハクは当時のことを思い出したのか、辛そうな表情をする。


「コールはまるで歩く屍のようじゃった・・・奴らは虚獣のように倒しても消えずにその場に残る。人のように・・・コールを斬った感触は未だに覚えておる」


─ 昔はクロビトと戦うのが普通だったらしいから人を殺すなんて当たり前だったのかもしれないけど、今はそんなことない。俺自身、昨日初めてクロビトを見たし、人を本気で斬ろうとした・・・そうだ、俺は人を殺そうとしたんだ・・・。


アカサは今になって手が震え始める。

それを抑え込むように手をぎゅっと握り、ハクの話を聞く。


「・・・わしはコールが歩いて来たであろう道を辿ると不気味な建物を見つけた。建物の中は薄暗く明かりがついたり、消えたりしておった。わしはようやく暗闇に慣れ床に目を向けると、そこには攫われたであろう冒険者の死体。そして、人体実験された跡がある子供や大人の死体がたくさん並んでいたんじゃ。わしは驚くと共に怒りを覚えた・・・すると、奥の方から小さな男の子が歩いて来たんじゃ」


「まさか・・・!?」


「ああ、その子がシークじゃ」



♢♢♢



『おじさん、何してるの?ここは危ないよ』


ボロボロの服を着てる少年シークはハクに近寄り、小さな声で自分のことよりハクのことを心配する。


『わしは大丈夫じゃ・・・それよりも、お主の髪・・・いや、ここにいるのはお主だけかのう』


『うん・・・みんないなくなっちゃった』


悲しい表情を浮かべながら答える。

そんな少年シークを助けようとハクが優しく抱き抱えると、


『何してるの、おじさん・・・』


キョトンとした顔でハクの顔を見る。


『もしかして・・・助けて・・・くれるの・・・』


少年シークは言葉に詰まりながらその言葉を言う。


こんな小さい子が簡単に助けを求められない。

そんな腐ったこの環境にハクはさらに怒りを覚える。

しかし、ハクはそれを必死に抑え、おそらく少年シークがかけて欲しかった言葉を言う。


『当たり前じゃ、困ってたら助ける。それが英雄じゃ』


だんだん少年シークの目に涙が浮かんでくる。


『本当に・・・もう、痛い思いしなくていいの・・・ぐすっ、ぐすっ・・・うわぁーーーん!』


おそらく、目の前で何人も人が死んでいくのを見て来たんだろう。

自分もいつか死ぬかもしれない、そう思いながら生きて来たシークにとって【助ける】と言う言葉は希望だったのかもしれない。

ハクの胸に飛び込み年相応に泣き始める少年シークをハクは抱き抱え、歩いて建物の入り口へ戻る。

すると入り口から誰かが入ってくる。


『あれ、ちみだれ?』


その男は黒髪できのこみたいな髪型をしており、標準の体型とは言い難い見た目をしていた。


『お主こそ、クロビトがここで何をしておる?』


『何って、ここ僕ちんの研究所ですよ』


男は大きなお腹を揺らしながら近づいてくる。

そして、ハクが抱えてる子供に気付く。


『あれ、ちみが抱えてるの。・・・!?。何してるのさちみは!!この子は唯一の実験成功者なのに!』


『実験・・・?』


ハクの顔が少し引きつる。

男は興奮してるのか、その実験についてぺらぺら話してしまう。


『そうさ!シロビトに僕ちんのオーラを注入し続け、白ノ魂と黒ノ魂を両方持つ人間を創る素晴らしい実験さ!』


それを聞いたヴェリアは机を強く叩きながら立ち上がり、声を荒げる。


「そんな事無理に決まってるじゃない!!私たちシロビトにとってクロビトの黒いオーラは言わば猛毒なのよ!そんなの耐えられるわけないわ!」


「その通りじゃ・・・しかし、シークは母のお腹にいる時から黒いオーラを浴びせ続けられ、産まれたときには身体の中に白ノ魂と黒ノ魂ができてたそうじゃ。実際、会った頃のシークは髪の色が白と黒に分かれておった」


「っ!・・・それでもっ!」


「そう、それでも奇跡じゃ・・・話を戻すぞ」


ハクは話を続ける。



♢♢♢



『外道が・・・』


『何だと!こんな素晴らしい実験をしてる僕ちんに

そんな事言うなんて、親の顔が見てみたいです!」


男は床にあるいくつもの死体が見えてないんだろうか。

それとも見えてて素晴らしい実験などと言っているんだろうか。

ハクは男の正気を疑う。


『お主は床にあるものが見えてないのか・・・』


『ん、ゆかー?・・・ああ、このゴミの事ですか。何言ってるんですか、良い実験には犠牲はつきものです!』


一体どれくらいの人が犠牲になったんだろうか。

この部屋以外の床にも同じような光景が広がっているんだろうか。


『それに、こいつらは失敗作ですけどまだ動くんです。僕ちんの言うことを聞く立派な兵士に。感謝して欲しいくらいです!』


森に発生してた謎のモンスター[コール]。

その正体は、このクロビトの実験によって生み出された悲しきモンスターだった。


『ていうか、そろそろ返してくださいよ。その子は僕ちんの最高傑作なんですから。返してくれないなら乱暴にいきますよ!』


『・・・』


ハクは抱き抱えていた少年シークを下ろし、左手に仕込み刀のような形をした魂創器(ソウル)を出す。

左手は出された魂創器(ソウル)の刀身部分を掴んでいる。


『おお!ちみ魂創器(ソウル)使いでしたか!でも、僕ちんの兵士だって強いんです!行けお前たち!あそこにいるおじいちゃんを懲らしめるのです!』


男の掛け声で周りにある死体が動き出し、一斉にハクへ襲いかかる。

ハクは動じる事なく、右手で魂創器(ソウル)の柄を逆手で握った。


『安らかに眠るんじゃ・・・』


チンッ・・・


その音が響き次の瞬間、襲いかかって来たはずの死体は粉々に斬り刻まれる。


『・・・あれ?』


その状況を飲み込めない男は固まってしまう。

そんな男にハクは静かに近づく。


『次は、お主だ・・・』


『・・・はっ!ぼ、僕ちんの兵士は・・・ど、どこですか!?』


男は辺りを見回すが、もちろんそんなものは見当たらない。


『ち、ちみは一体、何者ですか!?僕ちんの兵士を一瞬で・・・はっ!そ、その魂創器(ソウル)の形は!』


男は思い出した。

和服に下駄、そして鍔のない刀と呼ばれる珍しい魂創器(ソウル)を使う最強の英雄ハクの事を。


『は、はわわわっ、や、やめるんです!!この天才クゴズミー様を殺すなんて!!僕ちんは[ライト様]のように立派なモンスターだって創れちゃうんです!!』


ハクは鞘から刀を抜き、首元へ向かうように構える。


『だ、だから、僕ちんはこんな事で殺されて良い人間じゃ!?っ・・・!』


『五月蝿い』


ザシュ・・・


血しぶきが上がり、地面に男の首が転がる。

初めて人を殺めたハク・・・しかし、何の感情も湧かない。

罪悪感もない。

コールを斬った時の方が心はざわついていた。

ハクは魂創器(ソウル)をしまって、少年シークを再び優しく抱き抱え建物から出て行った。



♢♢♢



「その後、すぐに王都へ戻り、前王のヴァーデル王に話したのち、ワシがシークを育てることになったんじゃ」


─ シーク・・・お前にそんな過去が・・・それなのに俺たちの前ではいつも笑って・・・。


アカサはシークの壮絶な過去を聞き、自分はまだまだ弱い、そう思った。


「おいハクよ。その後、黒の大陸に行った話はしなくてよいのか?」


「やめてくれ、あれはわしの黒歴史じゃ」


メイが何やら気になる事を言い始める。

それにハクは嫌そうにするが、他の人は聞きたそうな顔をする。

それに気付き、メイは楽しそうに話す。


「ハクはヴァーデルと話した後、怒りがおさまらなかったのか、殺したクロビトの首を包んだ布を持ち、黒の大陸へ向かったんじゃ」


「や、やめろと言っておるじゃろうババァ!」


ハクは必死に止めようとするが、メイは構わず喋り続ける。


「そのまま一直線に帝都へ進み、城に入ろうと正面突破。数百人のクロビトが襲いかかってくるが、それを薙ぎ倒しながら皇帝のいる部屋までたどり着き、持っておった首を皇帝に投げつけ、1つの成約を結ぶように言ったんじゃ」


『しばらくクロビトは白の大陸に来る事を禁ずる・・・もちろん、わしらシロビトも黒の大陸には一歩も足を入れない』


元々、殺し合っていた仲ということもあり、お互いがお互いの大陸へ足を踏み入れる事は無かったが、入ろうと思えば誰でも何の許可もなく入れた。

実際、ハクもこの日、初めて黒の大陸へ足を踏み入れた。


ハクはグリースの警備をしていたクロビトに帝都までの道を訊き、シークのような事件が2度と起きないように、そしてシークの身体の中にある闇の魂がこれ以上黒いオーラに触れ、大きくならないようにする為にはこうするしかないとハクは思い、感情のまま動いた。

急に鬼の形相で現れ、そう言ったハクに皇帝は驚いた様子だったがすぐに冷静になり、ハクから白の大陸で行われてたクロビトの非道な実験を聞くと謝罪し、後日、改めて皇帝と前王のヴァーデルは二つの大陸を結ぶ橋グリースで会い、成約を交わした。


「と、言うわけじゃ」


メイは話し終えて、満足そうに机にある水を一口飲む。

ハクは手で顔を覆い、恥ずかしそうにしている。


「あの時は怒りでどうかしてたんじゃ。それこそ、一歩間違えればシロビトとクロビトの全面戦争が始まってもおかしくなかったからのう」


「全くじゃ」


かっかっかっかっ


ほっほっほっほっ


はっはっはっはっ


ハクとメイはそれを笑い話のように話し、部屋は様々な笑い声に包まれる。


2人を除いて・・・


「ってちがーう!!何、あんた達のその切り替え!怖すぎるのよ!さっきまでだいぶシリアスな話ししてたよね!何が『あっはっはっはっ』よ、怖いわ!後、アークは無言すぎるのよ!せめて笑うか、ツッコむかどっちかにしなさいよ!!」


ヴェリアは大声で一気にみんなにツッコミを入れる。


「はぁー、はぁー、はぁー・・・」


「おお、すまん、すまん・・・ごほんっ、では話を戻すが」


ハクは再び、始めのようなシリアスな顔に戻る。

ヴェリアのツッコミにより、当初のシークが謎のクロビトに狙われた理由について話し始める。


「今日来てもらったアカサ君、ドルト君によれば、その謎のクロビトはシークを刺した後、身体から白ノ魂を取り出し吸収したと言っておった。つまり、今シークの身体の中には黒ノ魂だけが残っておる状態なのじゃ」


「・・・!!ってことはもしかしてまだシークは!?」


「ふむ、シークはクロビトとなって生きておる可能性があるのじゃ」


シークはまだ生きてるかもしれない。

シークの過去をハクが話したことによって、その可能性が出てきた。

しかし、今だにシークが狙われたことの理由が明らかになっていない。

光と闇を残したまま、話し合いはまだ続く。


続く






















































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