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バカはしんでも治らない(編集中)  作者: すし河原たまご
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女王と4人の英雄

─ 朝だ・・・あんまり寝た気がしない。布団から出たくない。もう何もやる気が起きない・・・いつもの大きな声が聞こえない。


アカサが学校の寮で生活し始めて、初めて静かな朝を迎えた。

鳥の鳴く声がはっきり聞こえてくる。

すると、廊下から誰かがこちらへ走ってくる足音が聞こえる。

足音はアカサの部屋の前で止まり、ドン!ドン!と扉を強く叩く。


「アカサ!!起きてる!?・・・アカサ!!」


それはレナの声だった。

女子生徒が男子生徒の寮に来るのは珍しいことだった。

レナは必死に扉を叩き、アカサの名前を呼び続ける。


アカサは起きてはいたが、ベットから出る素振りはない。

今日の授業もズル休みをするつもりだった。

しかし、レナは何度も呼び続ける。

そして、ついに扉を開け勝手に入ってくる。


「アカサ!やっぱり起きてるじゃない!何で返事しないの!」


「うるせぇ!勝手に入ってくるんじゃねえよ、ババァ!」


「誰がババァよ!!」


思春期の子供と母親のようなやり取りをしつつ、レナはアカサの掛け布団を無理やり取って起こそうとする。


「何すんだよ!今日はほっといてくれよ!」


「いいから起きなさい!大変なのよ、シークのお墓が!!」


「!?」


アカサはそれを聞くと、急いで着替え部屋を飛び出しシークのお墓がある墓地に走る。

墓地に着いてシークのお墓の前に急ぐと、墓石の前の地面には穴が空いていた。

穴の底にはシークの遺体が入ってるはずの棺桶の蓋が開いていて、中は空っぽだった。


「こ、これは!?」


「朝、墓地を管理している人が気づいて、学校に連絡してくれたんだって」


「・・・レナはなんでこの事?」


「私は朝ごはん食べてたら、ドルト先生が教えてくれたの。それでアカサも呼んでこいって」


─ ドルト先生・・・近くにいるのか?


アカサは辺りを見回し、先生を探す。

すると、アカサ同様レナに呼ばれたゴウとサラが遠くから走ってくるのが見える。

2人とも慌ててきたのか、寝癖がついている。

そのまま4人でお墓の前にいると、ドルト先生がこちらへ近づいてくる。


「先生!これは一体!?」


「お前達来てたか・・・実は私にも分からないんだ。朝、急に学校に連絡がきて、急いで確認しに行ったらすでに・・・」


夜の間に何が起きたんだろうか。

穴の周りには掘った土が盛られていた。


「シーク・・・シークの体はどこに!?」


「それも分からないが、私は今から城に来いと呼び出しがあった。急で悪いがアカサも一緒に来てもらう」


「えっ!な、何で?」


「昨日ウツロの森に現れたクロビトについて、実際に戦ったアカサに直接聞きたいことがあるそうだ・・・では、早速行くぞ」


「えっ、あ、はい!」


「他の3人は、部屋に戻ってゆっくりしてていいぞ。今日の授業は無いだろうから」


ドルト先生はそう言い残すと、アカサを連れて城に急いで向かった。


王都は北、東、南、西に大きな正門が設置してあり、中央にある城へ向かうように大きく広々した道が続いている。

そして、広々した道は城を中心に十字の形をしており、その道を堺に4つの区間に分かれている。


北東には住宅街があり、南東にはアカサ達が通ってる冒険者や騎士を育てる学校や商業を学べる学校だったりと様々な学舎がある。

南西には冒険者が依頼を受けたりするギルドと呼ばれる大きな建物や武器、防具、服などが売っている店、そして、それらを作る工房が沢山あり、北西には宿屋や飲食店、食材などを売っている屋台がある。


アカサ達はシークのお墓がある、王都の北門を出てすぐ近くの大霊園にいた。

住宅と屋台が並ぶ道を南に進み、城へ急ぐ。

城は王都の中心、広々とした広場の中央に建っていて、城壁で囲まれている。

城門の前に着くと門番が立っていて、ドルト先生は城へ呼び出された事を説明し、2人は城門をくぐる。


城門をくぐると正面に大きな城、左右に城より小さい建物が一つずつあり、2人は正面の城へ入る。

アカサは初めて入る城内の広さ、豪華さに釘付けになりつつ先生の後を歩いていると、いつのまにか目的の部屋の前に着いていた。

コン、コンと先生がノックし扉を開ける。


「失礼します」


挨拶をしながら、部屋に入ると中央に丸い机が置いてあった。

周りには椅子が4つ置いてあり、席は埋まっている。そこには昨日会った英雄ハク、自分の父親、そして2人の女性が座っていた。


─ この面子・・・!


その圧倒的な威圧感にアカサの額から汗が垂れる。


─ 親父とハク様は直接会った事があるから当たり前だが、他の2人も学校の教科書で見た事がある・・・ここにいるのは現英雄の4人だ・・・!


緊張しているアカサに1人の英雄が声を掛ける。


「おお、来たか。アカサ君」


「ハク様!」


[英雄ハク 76歳 男性 二つ名 天神(てんじん)]


見た目は短髪で顎には短めの髭が生えていて、いつも和服と下駄を履いている。

若い頃に英雄の称号を授かり、シロビトなら知らない人はいないほどの英雄。


ハクは席を立ちアカサに近寄り、他愛のない会話を始める。

すると、後ろから幼女が椅子の上に立ち、圧強めな大きい声で会話に入ってくる。


「ちょっとなによ!!さっから聞いてれば、『ハク様、ハク様』って、まず私に挨拶するのが当然でしょ!!」


「えっ、えっと・・・」


突然大声で会話に入ってくる幼女にアカサは困惑していると、ハクがやれやれした顔で幼女に話しかける。


「まったく・・・椅子は人が座るものじゃぞ、ヴェリア」


「いいのよ、私は。だって最強だもの!!」


[英雄ヴェリア 27歳 女性 二つ名 魔法達人(スペルマスター)]


見た目は胸あたりまである縦ロールが特徴的で、ローブを着ている小柄な女性。

一般の冒険者、他の英雄もそうだが、多くて2つの魔法(スペル)を使えるのが普通なのだが、彼女は1人で20種類以上の魔法(スペル)を使えた。

現在、唯一魔法(スペル)のみで戦う冒険者だ。


腕を組み、胸を張って堂々と椅子の上に立つ。


「それよりも、あんたアークの息子なんだってね。確かに、あいつに似て目つき悪いわね。ぷぷぷっ」


椅子から降りるとアカサの顔を覗き込み、バカにした笑いをするヴェリア。

それを、座りながら睨みつける男にヴェリアは気付き、少し怖気付く。


「・・・」


「ひっ、な、何よ!本当のことでしょ!ふん!」


ヴェリアは再び席に座り、そっぽ向く。


「そういえば、アークが英雄になって初めて顔を合わせた時も、目つきが悪いこといじってびびってたのう」


「う、うるさい!あいつ生意気なのよ!私よりも後に英雄になったのに!・・・ひっ」


「やれやれ・・・ほれオレンジジュースでも飲んで落ち着くんじゃ」


「わーい、オレンジジュースだ!私これ、好き」


再度、アークの顔を見て文句を言ったが、またビビって顔を背ける。

それを見かねたハクは飲み物を渡し、なだめた。


─ 親父・・・


アカサは父親の方を見るが、父親はこっちを見ようとはしない。


[英雄アーク 48歳 男性 二つ名 阿守羅(アシュラ)]


見た目は、目つきが悪くツンツンした短髪で、大きい体躯を頑丈そうな鎧で覆っている。

元は城の騎士団に所属しており、3年前に起きた王都が大量の虚獣に襲撃された事件で王都を滅びの危機から救う活躍をしてから、45歳という年齢で英雄と呼ばれるようになった。

今は本人の意思と騎士団長が不在ということで、騎士団をまとめている。


─ 親父!


アークがこちらを見ようとしないので、アカサは父親に対して明確な殺意を放つ。

それに気付き、ようやくアカサの方に顔を向ける。

他の英雄もすぐに気付く。


「アカサ君・・・」


「えっ、なになに!喧嘩?」


ハクは心配そうにアカサの方を見るが、座ってジュースを飲んでる幼女は足をバタバタさせ楽しそうにしている。

すると、アカサの背中に柔らかいものが当たる。


「落ち着け、童・・・ここはそんなものを放っていい場所では無いぞ」


─ いつの間に!?さっきまで誰も後ろに居なかったのに・・・!


アカサは驚く。

それもそのはず、さっきまで席に座ってたはずの女性がいつの間にか自分の背後に立って居たのだから。


「・・・流石ですね、メイ様」


「久しぶりじゃの、ドルト」


[英雄メイ 100歳以上 女性 二つ名 命殿(メイデン)]


見た目は、100歳超えてるとは思えない美貌で、髪は肩まで伸びており、白衣のようなものを着ている。

4人の中で英雄歴は1番長く、回復魔法(ヒールスペル)においては右に出るものはいない。

学校にいるリン先生の師匠でもある。

戦闘というよりは、回復魔法を評価されて英雄と呼ばれるようになった。


最初は驚いてたアカサだったが、背中に当たる物に気付くと顔を赤くしすぐに離れる。

それを見ていたヴェリアは顔をニタァーとさせ、アカサに近寄る。


「あー、顔赤くなってる!スケベなんだ〜」


「ち、違いますよ!これは・・・!」


「ふふん・・・照れちゃって。ほら、この超絶美少女のヴェリア様もハグしてあげるわよ!」


ヴェリアはアカサの背後に周り、勢いよく抱き付く。


「・・・」


「・・・お尻!」


しかし、身長差でヴェリアの顔はアカサのお尻に埋まった。


「分かってたわよ・・・どうせ私なんて、ただの幼女よ・・・」


「あ、あの・・・」


ヴェリアは下を向きながらトボトボ歩き、再び席に座る。

アカサも何か声をかけようとするが、何も言葉が出てこなかった。


「ほっほっほっ、ヴェリアはそのままでも十分素敵じゃよ」


「メイ様、それ煽ってますか?」


「何を言う、心からの言葉じゃ・・・何だ、ドルトも昔みたいに妾にハグして欲しいのか?」


「えっ・・・」


その発言に、思わずアカサは少し引いたような声を出す。


「ご、誤解だアカサ!この人は治療する時に何故かは分からないが、毎回抱擁してくるのだ!メイ様、生徒の前で誤解を招くような発言は控えていただきたい!」


「ほっほっほっほっ」


ドルト先生がものすごく慌てる中、メイは高らかに笑う。

そんな中、部屋の扉が開き誰かが入ってくる。

すると、座っていた英雄は立って跪き、立っていた英雄はその場で跪いた。

すぐにドルト先生とアカサも跪く。


「何やら、楽しそうでしたね」


圧倒的な高貴さ、歩くたびに揺れる地面に着きそうなくらいの長く綺麗な髪。

シロビトとしての本能が、自然と身体を動かし膝を地面につけていた。


部屋に入って来たのは、22歳という若さで、王都・・・いや、白の大陸、シロビトの頂点に君臨する女王。

[リア・ランス]の姿だった。


役者が揃い、これから壮大な話し合いが行われる予感がするアカサ。

この話し合いでアカサは、シークの悲しい過去を知ることになる。


続く



































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