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バカはしんでも治らない(編集中)  作者: すし河原たまご
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呪いの言葉

シークは死んだ後、すぐに埋葬された。

この世界では死んだ人を棺桶に入れ埋葬する。

そうすることによって、神からもらった力が土へ還り、木や水といった自然が豊かになると言われている。


大雨が降る中、墓の前には先生達と生徒達が来て次々に手を合わていく。

その中には、もちろんサラの姿もあった。



♢♢♢



-数時間前-


ドルト先生が、シークの遺体を抱えて森の入り口まで戻る。

先生が戻ってきたことに気付き、馬車の中で雨宿りしてたレナ、ゴウ、その他の生徒も先生の元へすぐ駆け寄った。


『先生!・・・っ!』


先生に抱えられてる傷だらけで動きそうにないシークを見て、みんなの顔が一気に青ざめる。

死んでる・・・みんなはシークのその姿を見て直ぐに察した。

膝から崩れ落ち涙をこぼす生徒もいれば、現実を受け入れられず放心状態の生徒もいた。

そんな中、レナとゴウは先生の後ろでびしょ濡れになっているアカサの元へ駆け寄った。


『アカサ!何があったの!?』


『・・・』


レナの質問にアカサは下を向き、何も喋ろうとしない。


『アカサ!しっかりしろ!!』


ゴウはそんなアカサの顔を両手で掴み、顔を上げる。


『!!・・・アカサ』


アカサの顔は目が赤く腫れ、大量の涙を流した跡が頬から分かる。


『・・・俺のせいなんだ・・・シークは俺を庇ったから死んだんだ』


アカサの声は泣き叫んだのか、枯れていた。


『たかがE級の虚獣を倒しただけで調子に乗ってた・・・あの時、戦わずに2人で逃げてたなら大した傷を負わずに、ドルト先生と合流して応援が来るまで耐えれたかもしれない・・・』


レナもゴウも本当は今すぐに泣き出したいんだろう。

しかし、アカサの辛そうな顔を見て2人は溢れそうな涙をぐっと堪え、ふらふらのアカサを支えながら馬車まで運んだ。


王都へ戻ると、サラが正門の雨に濡れないところで立っていた。

馬車に乗ってるアカサ達に気付くと小さく手を振る。そして、ゴウが馬車から降りると小走りで駆け寄ってくる。


『お疲れ様です。先輩達』


『あ、ああサラ。何だ、雨の中ずっと待ってたのか?』


『はい。今日は早めに授業が終わったので・・・』


時刻は夕方前、まだ陽は落ちていない。

普段なら、まだ授業中のはずだった。


『そ、そうか』


『何故か、先生達が急に慌ただしくしだして・・・それよりも、シーク先輩は・・・?』


ゴウが降りた馬車にシークがいないことに気づくと、周りをキョロキョロする。


『えっ、と・・・シークは・・・』


ゴウが言葉に詰まりながら口を動かしていると、シークの遺体を抱え、馬車から降りてくるドルト先生に気づく。

サラは走って近寄り、シークに声をかける。


『シーク先輩・・・』


話しかけるが、もちろん返事は返ってこない。

ドルト先生は、サラの悲しそうな表情を見て、なるべく見せないようにとその場をすぐに離れる。


『すまない、急いでるんだ。通らせてもらうよ』


『・・・』


その場で棒立ちになったサラの元へ、3人は近寄る。


『・・・疲れて、眠ってるだけだよね。明日になったら・・・また、元気になってるよね・・・』


その声は段々と震えていく。

そして、サラはレナとゴウよりも少し後ろに立つアカサの前に行き、ズボンを掴む。


『アカサ先輩・・・そう、だよね・・・?』


『・・・ごめん』


その一言で、サラはシークがもう死んでることを確信したのか、膝をついて子供のように泣き叫ぶ。 


『うわぁーーーーん!ああぁーーーん!』


ザー!ザー!


その悲痛の泣き声は大雨の音でかき消され周りに聞こえることはなかったが、近くにいる3人の心にだけはしっかりと響いた。



♢♢♢



サラも落ち着き全員がお墓に手を合わし終え、ほとんどの人が帰った後、アカサ達は何となく帰らず屋根のある所で佇んでいた。

すると、カツン、カツンと履き物を鳴らしながら、1人の老人が近づいてくる。

その姿を見てアカサ達は驚く。

それもその筈だった。

シロビトなら知ってて当たり前の人が目の前に来たのだから。


「・・・アカサ君じゃな」


「はい・・・ハク様」


和服を着て、歩くたびにカツン、カツンと音を鳴らす下駄を履いている。

そんな見た目の老人は王都に1人しかいなかった。

[英雄ハク]、歴代の中でも最強と言われてる英雄の1人だ。

そして、シークの育ての親でもあった。


「かっかっかっ!そんな、様なんてつけなくて大丈夫じゃよ」


「いやいや、そんな恐れ多いです!」


─ 無理だろ!他になんて呼べばいいんだ!?こちとら緊張で手汗が止まらないわ!


「かっかっかっ!あの男の子供とは思えんほどの謙虚さじゃの」


─ あの男?親父のことか?


「まぁ、あの方に似たのかのぅ・・・」


「?」


英雄ハクは小声でボソッとそう言うと、アカサの顔を見てニコッと笑う。


「・・・隣いいかの?」


「どうぞ、どうぞ」


ハクはアカサの隣に立ち、話を始めようとする。

レナ達は空気を読んでその場から離れようとするが、それをハクは止める。


「君たちにも関係のある話じゃ、一緒に聞いてもらってもいいかのう」


「は、はい!」


レナ達が戻り、ハクは喋り出す。


「1週間に1回手紙が来るんじゃ、シークから・・・わしはそれが毎回楽しみでなぁ。そこにはアカサ君、レナ君、ゴウ君、サラ君のことが毎回書かれててのう」


そう言うと、ハクはシークから届いた手紙を懐から出し、1人1人に1枚渡した。

4人はその手紙を開き見ると、そこには自分たちの事が書かれていた。


アカサの手紙にはこう書かれていた。


『前に手紙に書いたけどアカサが凄いんだ!日に日に強くなっていって!アカサのおかげで毎日が楽しいし、アカサのおかげで僕も強くならなくちゃって頑張れる!学校に入ってよかった!』


「あの、バカ・・・」


次にレナ。


『レナはしっかりしていて、困ってたら何かと助けてくれるんだ。でも時々、自信をなくした表情をする時がある。だから、僕はレナの前ではいつもより笑うようにしてる。じいちゃんみたいに!僕なりの恩返しなんだ!』


「ぐすっ・・・余計なお世話よ・・・」


次はゴウ。


『じいちゃん。今日、英雄の他にも叶えたい夢ができた。この前友達になったゴウは家を継ぎ、鍛治氏になって決して壊れない武器を作るのが夢なんだって。それを聞いた時、ゴウが打ったその武器を持ってみんなと冒険したい、そう思った!今から凄く楽しみなんだ!』


「シークっ・・・!」


最後にサラ。


『この前、1年生が同学年の子に囲まれていた。英雄はそんなの見過ごせない。助けて、その後一緒にご飯を食べたんだ。その子はサラって言うんだけど、じいちゃん以外に家族と呼べる人がいなかったから、サラと出会って妹ができたみたいで嬉しかった!』


「ぐすっ・・・シーク・・先輩・・・」


みんなは色々思い出し、再び目に涙を浮かべる。

そしてハクは、ゆっくりと空を見上げる


「わしは嬉しかった。シークが楽しそうにしていて・・・だから今日は、そんな君たちを一目見ておきたかったんじゃ。そしてお礼もしたかった・・・ありがとう」


誰もが知ってる英雄に頭を下げられ、4人はあたふたする。


「や、やめてくださいよ!ほら、頭あげてください!」


「そ、そうですよ!どうしようゴウ!」


「お、俺たちも頭を下げるんだ!」


「あわわ・・・あわわ・・・」


その焦ってる様子を見て、ハクは下げてた頭を上げて笑う。


「かっかっかっかっ!・・・さて、わしはそろそろ行くかのう・・・おっと、そうだ。アカサ君には渡そうと思ってた手紙がもう1枚あったんじゃ。ほれ」


ハクはアカサに手紙を渡す。

それは既に読んだのか、開封はされてるがまだ綺麗な状態の手紙だった。


「今日、シークから届いた手紙じゃ。わしが持ってるより、アカサ君が持っておった方がいい気がしてな」


「は、はぁ、ありがとうございます」


「それじゃーの、"また明日"」


ハクは手紙を渡し、またカツン、カツンと音を鳴らし帰っていった。


その後、アカサ達は学校の寮に戻り、各々自分たちの部屋へ帰った。

アカサはガチャ、と部屋の扉をゆっくり開ける。


─ 静かだ・・・。


シークはいつも最後の授業が終わると、すぐに寮の部屋に帰ってアカサを出迎える。

疑問に思ったアカサは理由を聞いたことがあった。



♢♢♢



『そういえば、何で毎回早く寮に戻るんだ?』


『・・・やってみたかったんだ、ずっと。誰かを出迎えるの』


アカサ達は食事を済まして、部屋で就寝の準備をしていた。


『ほら、前にもいったけど、僕小さい頃にじいちゃんに拾われて今まで生きてきたから、家族って呼べるのじいちゃんくらいなんだ。・・・でも、じいちゃん英雄だからみんな助けを求めてるんだよね。それで、あまり家には帰ってこなかったんだ』


2人は準備が終わり、ベットの上に寝転がる。


『だから、嬉しかったんだ。誰かが同じ空間に帰ってくるのが』


『ふーん・・・それって普通、帰ってきた時に誰かがいる方が嬉しいんじゃないの?』


『おお!確かに、それもいいな!今度は、アカサが早めに部屋に帰っておいてくれないか?』


『やだよ、めんどくさい』


『ケチだなーアカサは』



♢♢♢



─ 結局、逆のパターンはやらなかったな。いつでもできると思ってたから・・・。


アカサはベランダに出て夜風を浴びる。

雨はすっかり上がっていて、雲ひとつない綺麗な空が広がっていた。


─ そういえば、シークのことあんま知らないな。ハク様に拾われて、英雄が好きで・・・本当にこれくらいしか知らない・・・もっと、話したかったな・・・。


少し風が冷たくなってきた。

アカサは手をズボンのポケットに入れると、何か入ってることに気づく。


─ あっ!そういえば、ハク様から手紙貰ってたな・・・何が書いてあるんだろう?呼んでもいいんだよな、貰ったんだから。


アカサはもう開封されてるからかシールの粘着が悪くなって簡単にあけられる封筒をあけ、中の折り曲がった紙をひらく。


『じいちゃんへ 今日最後の模擬戦があったんだ』


─ これは、昨日の模擬戦の後に書いた手紙か?


『初めてアカサに負けそうになった。途中で先生が止めてくれて助かった。もう一歩も動けなかったから』


─ 最後の一撃、ちゃんと効いてたんだな・・・。


『悔しかった・・・でも嬉しいこともあった。アカサが英雄の構えをしたんだ!しかも、リョーマの!初めてじいちゃんが僕に聞かせてくれた英雄だ!』


─ そういえば、初めて会った時、そんなこと言ってたな。英雄リョーマか・・・今度、ハク様に会った時に聞いてみようかな。リョーマの事。


『やっぱり、アカサは英雄の器だと思う。本人に言うと怒るから言わないけど・・・だから、これからもアカサには英雄の話をいっぱいして英雄のことを好きになってもらう!そして、いつかみんなと一緒に冒険をして、英雄と呼ばれるように頑張りたいんだ。後、今度皆んなと実際に会ってほしい。手紙じゃなく、ちゃんと紹介したいんだ。 シーク 』


─ これ読んだから、会いにきてくれたのかなハク様は。


アカサは手紙と閉じ、ポケットにしまう。


─ それにしても、英雄の器か・・・シークには悪いが俺にはそんな器なんてない・・・それにもう、英雄なんて言葉こりごりだ。


アカサは空を見上げる。


─ ほとんどの人からしたら英雄(それ)は憧れや、安心する言葉だろう。でも、俺からしたら英雄(それ)母さんとシーク(大切な人)がよく言っていた言葉。そして、その言葉をよく言っていた人達はもう居ない・・・だから、俺からしたら『英雄』なんてもんは・・・呪いの言葉だ。


アカサはベランダの扉を閉め、塞ぎ込むようにベットに入った。


続く

































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