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恋愛小品集

桜ひとひら

作者: 香月よう子
掲載日:2023/03/20

 改札口から吐き出される人並みに押され、今日もまた会社へと急ぐ。

 春物のトレンチではまだ少しだけ肌寒い朝。

 思わず首元のシフォンのストールを整えた。


 今日は午前十時から大事な商品開発企画会議。その前にもう一度プレゼン資料に目を通して……。

 会社までの道のりでもう既に戦闘モードに入りながらもふと、涙が零れそうになる。



挿絵(By みてみん)



 そのときだった。

 一陣のつむじ風が宙を駆け抜けた。


 街路樹の桜の大木から花びらが風に吹かれ、一面の花吹雪。

 その光景に、目を奪われる。

 そして、舞い上がる花びらに吹かれながら、何故だろう。

 走馬灯のように悠生ゆうきの想い出が駆け巡った。


 三年前の早春からつきあい始めた悠生。

 初めてのデートでは、二人で桜を見上げていた。

 桜は見頃で、ただひたすら美しかった。


 "また来ような"


 人懐こい笑みで私に向かって最後にそう言ってくれたのは、いつのことだったか。


 暫し佇み、つむじ風に身を任せる。

 散りめた花びらが地面の上で舞い踊る。

 どんなに美しい桜もいつかは散る。

 こんな風が吹くなんて。

 あの頃は知らなかった。

 いつも隣には悠生がいて、それはずっと続く日々だと信じていた。


 けれど。

 もう悠生あなたはいない……。


 嗚呼、でもきっといつか。

 この舞い上がる花びらと共に、新しい春を見つける。

 うつむけば涙が零れるから、上を向く。


 きゅっと唇を噛みしめ、惑いながらもまた歩き出す。



本作は、武頼庵さま主催「第3回初恋企画」参加作品でした。


挿絵は、みこと。様に描いていただきました。


武頼庵さま、みこと。様、お読みいただいた方、どうもありがとうございました。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[良い点] まずタイトルが良いです。 本文で胸がきゅんとなるのです。 そして挿絵!
2023/04/20 20:50 退会済み
管理
[良い点] 綺麗で謎めいて素敵です! 悠生さんはどうして今主人公の隣にいないのか、お話の続きを勝手に妄想してしまいました。 [一言] 読ませていただきありがとうございました。
[良い点] 綺麗で切ない‥‥‥! とても良かったです。 哀しい気持ちを抱えながら、それでも前を向いて歩いていくラストが素敵でした。 こっちまで前向きになれる気になれました。
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