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第28話 案内人ガデウス

 --6日目。


 前回と同じように冒険者ギルドで拠点を移動した報告を済ませると、案内人協会を訪れる。

 今回の目的は前回とは違う。


「前回は『あの子』について聞いたのよね」

「その通りです」


 勇者と共に遺跡を探索して聖剣を見つけた可能性の高い『あの子』。

 案内人協会でわざとらしく協会に所属していない個人の案内人を紹介してほしいと聞かせることで挑発した。目立つことで『あの子』との繋がりを持とうと考えたことからの行動だったが、成果は得られなかった。

 さらに目立ったことで寄生しようとすり寄って来る者まで現れた。


「それでも聖剣は確実に存在しています」

「もう回帰を疑っていないから心配しなくていいわ」


 エレナもカインの話を信用することにした。


「さすがに突然レベルが上がれば信用もするわ」


 カインの事を完全には信用していなかったエレナ。カインには知られないように【鑑定】を何度か使用していた。そして回帰してきた直後で様子の変化したカインを不審に思って調べたところレベルが上がっていることに気付いた。

 回帰前のゴーレムとの戦闘や遺跡の探索が影響したのか、カインも知らないうちにレベルアップしていた。


「それで次はどうするの?」

「挑発するのは止めて味方に引き込んで情報を引き出します」


 協会の扉を開ける。

 ここまでは同じ行動を心掛けていたため前回も見た光景が広がっていた。


 ――いた。


 目的の人物の姿を見つけると内心を悟られないよう無表情を装いながら受付へと近付く。


「初めて見る顔だね。どんな用だい?」

「遺跡にある財宝に興味があってラポルカまで来ました。よければ優秀な案内人を紹介してもらえませんか」

「へぇ」


 ミランダの感心したような目がカインへ向けられる。

 困っているような姿を装いながらも視線は協会内にいる特定の人物へと向けられていた。正面にいるミランダからしか分からない視線であるため、遠くにいる相手は気付いていない。


「下調べはしてきているようだね」


 ミランダの評価でもガデウスが強者だとされていた。

 もっとも案内人として強い方なだけであって、使徒と賢者候補には敵わないだろう。

 実際の力がどれだけであろうと二人には関係ない。


「いいよ。あいつを紹介してあげるから遺跡へ行っておいで」



 ☆ ☆ ☆



「オレを指名みたいだな」


 エントランスの端にあるソファで座って待っているとミランダから話を聞いたガデウスが近付いてくる。

 前回は「案内されて当然」といった感情が態度に滲み出ていたが、今回はこちらから先に指名したことで落ち着いていた。

 カインとしては実力のあるガデウスとは対等に付き合いたかった。


「賢者候補と護衛だって」


 冒険者カードを提示して身分はミランダに教えていた。


「ええ、そうよ」


 ガデウスとは主にエレナが対応することになっている。

 護衛であることになっているカインが前に出るよりも主であるエレナが対応するべきであるからだ。ただ、この場合だと起こった事を体験したわけではないエレナの負担は計り知れないものとなる。


「貴方が優秀な案内人だという噂を聞いたわ」

「へぇ、それは誰から?」

「悪いけどこっちも情報源を教えるわけにはいかないの」


 情報源はガデウス自身である。

 そんなことを言ったところで信じてもらえるはずがないため、存在しない情報源があるように言うしかなかった。


 案内人はラポルカ以外では需要がない。そのため案内人の名前は有名になることが少ない。

 情報源を公開しなかったことをガデウスが不審に思う。


「ま、いいだろ」


 それでも「仕事だから」と割り切ることにした。


「じゃあ報酬の確認だ」


 案内人を雇う場合の報酬は、到達目的の場所と探索期間で基本金額が決まる。さらに目的地の危険度に合わせて付加される危険手当が話し合いによって決められ、案内メニューを充実させる特別な事を行うことで別途料金が発生する。

 まずは二人の目的から確認することとなった。


「私たちの目的は遺跡にある聖剣よ」

「……その法螺話を本気で信じているのか?」

「嘘なの?」

「いや、なんていうか……」


 ガデウスの歯切れが悪くなる。

 エレナは『聖剣が実在している』という未来を知っているからこそ疑う気持ちは少しはあったものの信じていた。

 勇者もラポルカまで赴くだけの根拠があったから向かった。

 何の根拠もなく聖剣に関する噂が生まれるはずなかった。


「何か手掛かりか噂の根拠になるものでもあるのね」

「ある」


 それは遺跡にあった。


「わかった。そこまで案内することにしよう」


 その場所は遺跡の中でも奥の方になった。

 そこまでの探索プランを頭の中で考え、最適な料金を導き出した。ただし、その金額は一人の案内人に対する報酬としては破格と言っていい金額だ。


「もちろん騙しているわけじゃない。魔物とは遭遇しないようにするけど、そこまで行くならかなり危険だし、3日は掛かる距離なんだ」

「3日……」


 日数だけが気になった。

 それでも、すぐに意識を切り替える。


「いいわ。その料金で何の問題もないわ」

「よし!」


 拳を握りしめるガデウス。

 彼としても命を賭けることになるかもしれないが、命を賭けられるだけの金額であるため反対する気はない。


「今回の案内を引き受けることにするぜ」

「そう。おろしくお願いするわ」

「オレのことはガデウスでいいぜ」

「私のこともエレナでいいわ」


 二人の間で握手が交わされる。

 いつから遺跡への案内ができるのか聞くと、明日まで待ってほしいと言われた。急な話であったため案内人としての準備ができていない。

 街へ来てすぐ遺跡へ入る冒険者の方が少ない。

 すぐ入りたいと訴えても案内人協会が動くことはなかった。


「こっちは何を準備しておけばいいかしら?」

「最低限の必要な物はオレが用意しておく。だけど、そっちにも好みがあるだろうから普通に野営をする時に必要な物を準備しておいてくれればいい」


 時間が掛かっても安全を優先させる案内人。

 遺跡の中ではゴーレムが出現することをカインは知っているし、ゴーレムの実力も数時間前に実感させられたばかりだ。

 同じ失敗はしない。それでも避けられるなら戦闘は避けたい。


「了解したわ。こっちはこっちで準備を済ませておくことにするわね」


 ガデウスも案内人としてはプロだ。

 怠るような真似はせず必要な物を必要なだけ用意してくれる。物を必要なだけ用意してくれる。

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