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44.長い長い一日5


 アルルーンという希少植物を守るために畑に巡らした塀は高い。建物三階分くらいの高さがある。人間どころか、獣人も訓練したものくらいしか登れないし、物音を立てないでいるのは難しい。てっぺんには尖った装飾が並ぶので、塀の上に立ち続けるのはより難しい。


 じいちゃんは「月刊 ザ★猫」を読んで、猫族の能力をにゃん太の跳躍力に結び付け、外でも錬金術を使えるように考案した。にゃん太は身体能力に優れているから、今後、外へどんどん出ていくだろうと考えたのだ。


 にゃん太ならば、新しいタイプの錬金術師になれる。ちょっと、わくわくすることではないか? 

「この年になってから、こんなに高揚することに出会えるなんてのう。わしは幸せ者じゃ」

 そうしてじいちゃんが教えてくれたことが、にゃん太を救うことになる。


 にゃん太は家族の中では最も戦闘能力が劣る。けれど、猫族であるから、運動能力は高い。そして、更に、にい也に教え込まれ、身のこなしができている。

 にい也が軽々とやってのけるものだから、あたふたする自分は猫族の標準かやや下くらいだと思っている。にゃん太は知らない。比較対象がにい也であるから、自己評価が低くなっていることを。


 にゃん太は、以前、カン七が絡まれていた猛獣人族から突かれたことがある。その際、にゃん太は拳に合わせて身を引くことで衝撃を小さくさせた。それもにい也から習ったことだ。


 にゃん太は好奇心を活かして様々に学び、錬金術師となった。身のこなしは父に、錬金術はじいちゃんに、植物や鉱物についてはアルルーンから学んだ。いずれも素晴らしい師だ。



「素材としてはこれが使えるな」

 治療薬と毒となるものは非常に似通っており、蛇族に摂取させようとしていた薬の処置が粗かったことが幸いした。


 まず、なんといっても、炉が必要だ。もちろん、ここにはそんなものはない。焚き火程度の温度ではない高温の力がいる。

 じいちゃんは陽光を利用することがいちばん効率が良いと言っていた。この状況では、陽光と言えば、明り取りの窓から壁にまっすぐに差し込んでいる。

 にゃん太はその壁を叩き割ることにした。割るための道具を探していると、柄にさまざまな宝石がついた槌がある。


「これ、【夢みる玻璃】じゃないか? ということはこっちのは、【夢みる橙玻璃】に、【夢みる緑玻璃】? ううん、これは【希望の虹の石】?」

 持ちにくいなあという感想は歓喜に取って代わられる。

 すべて、錬金術で用いられる鉱物でもあったのだ。


「玻璃なんて武器にくっつけて、壊れやすいんじゃないかなあ」

【夢みる玻璃】シリーズは武器に加えると、攻撃した相手を眠らせる効果があるのだ。見た目にも美しい。実用に適していないのなら本末転倒だが、素晴らしい効果をもたらす装飾品として飾っておく用途として作られることもある。


「金持ち連中は戦闘しないからな。見栄を満足させる代物さ」

 そう言ったのは鍛冶屋のうさ吉である。

 しかし、そんな用途で作られた武器が、巡り巡ってにゃん太に恩恵をもたらしてくれる。なにがどう作用するか、世の中分からないものだ。そして、それが世の妙味というものであろう。



 【夢みる玻璃】

  透明な玻璃。錬成時の素材の溶媒。取り扱いの難しい素材にも対応可能。

  じっと見つめていると、夢を見ているような気持ちになる。すぴすぴ。



 【夢みる橙玻璃】

  橙色の玻璃。錬成時の素材の混合剤。溶媒と共に用いることが多い。取り扱いの難しい素材にも対応可能。

  じっと見つめていると、夢を見ているような気持ちになる。すぴすぴ。



 【夢みる緑玻璃】

  緑がかった玻璃。錬成時の素材の分離剤。溶媒と共に用いることが多い。取り扱いの難しい素材にも対応可能。

  じっと見つめていると、夢を見ているような気持ちになる。すぴすぴ。



 【希望の虹の石】

  金属的な虹色の光沢を持つ。浄化剤の材料となる。



 にゃん太は乱雑に転がっている物品の中から小型のナイフを見つけ出し、槌の柄から宝石をほじくり出した。宝石は避けて置き、槌は本来の用途に用いることにした。

 両前足でしっかと掴んだ槌を、陽光があたっている壁に打ち付ける。

「———びくともしない」

 にゃん太は自分の非力さ、破壊する能力の低さを呪った。武器の扱いも不得意だ。


「にゃん太、なにをしているの?」

「しているの?」

 さすがに、なんだなんだと狐七と蛇族が近寄って来る。


「ちょっと、この日が当たる壁の石がほしいんだ」

 ひびすら入っていない壁を悔し気に見る。

「やってみようか?」

 言って、蛇族が尾をずるりと引き寄せる。


蛇朗へびろう、やめなって。怪我をするよ」

「お、名前、蛇朗になったんだな」

 狐七が止めるのに、にゃん太は違うことに気を取られた。

「そうなんだ。俺、蛇朗!」

 心なしか、言葉遣いがしっかりしているような気がする蛇族の蛇朗は嬉し気に鎌首をもたげる。


「じゃあさ、蛇朗が、この槌を壁にぶつけてみてよ。この部分な」

「蛇朗、槌を扱えるの?」

「やってみる」

 にゃん太の提案に狐七が小首をかしげ、蛇朗が尾の先を槌の柄に巻き付ける。尾の先は細く、器用に動いた。


 にゃん太は槌が尾からすっぽ抜けることを懸念して、狐七とともにやや離れた場所に移動した。

 勢いよく槌が振られ、壁にぶつかる。にゃん太が指定した場所でにぶい音がする。蛇朗はもう一度槌を振り上げた。


「待って!」

 にゃん太は慌てて壁に向かう。壁の残骸が小石となって落ちている。


「うん、これで十分だよ」

「え、一度でできたの?」

 にゃん太が言うのに、狐七が目を見張る。

「すごい、すごいぞ!」

「本当にすごいな!」

 狐七とにゃん太が褒める。蛇朗は得意げに鎌首をもたげた。


 名付けてくれ、話をするうち、蛇朗は狐七のことが好きになっていた。いろんなことを知っていることから、尊敬の念を抱きつつあった。狐七は同年代やすこし年下の獣人たちの面倒を見る頼りになるリーダーだった。精神が退行している蛇朗の心をもつかんでいたのだ。

 そんな狐七と、その狐七が尊敬して信頼できると言うにゃん太のふたりに褒められ、蛇朗はとても誇らしい気持ちになった。


「他に、なにか手伝うことはある?」

「そうだなあ。ああ、鉄製の兜があったらいいな。大きいのと小さいの」

 狐七が尋ねるのに、にゃん太がこの後の手順をもとに考え付く。


「かぶとって?」

「頭にかぶるやつだよ。ええと、」

 蛇朗が狐七の傍にやって来て、ふたりで壁際の物品をひっかきまわす。その間、にゃん太は転がっていたナイフを拾い上げる。

 蛇朗が残していた薬の粉末から顔を出す大きい葉や根を刻む。そのつもりであったのだが、ろくな手入れがされておらず、切れない。


「これ、こういうのだよ」

「分かった!」

 がらがらと派手な音をたてながら兜を探すふたりの声を背景に、にゃん太は岩を濡らして砥石代わりにしてナイフを研ぐ。


 狐七と蛇朗は鉄製の兜をいくつも見つけてきた。

「こんなにあったよ」

「どういう意図で集めていたんだろうな」

 とにかく、ここが不要物を放り込む部屋というのだけは確かだ。お陰で、にゃん太は大助かりである。

「蛇朗がいるから、いろんなものがあっても逃げられないと思っているんだろうな」


 蛇朗に今度は槌で古ぼけた棚を壊すよう頼んだ。

「狐七はこっちを手伝ってくれ」

「これ、蛇朗の薬?」

 蛇朗の嫌がっていた感情が伝わったかのように、狐七が嫌そうな顔をする。

「なるべく細かくするんだよ」

 木製の器に入った粉末とそれよりも大きな欠片を棒きれで摺る。狐七が器を支える。


「棚、壊したよ」

 蛇朗の言葉に、にゃん太は具合を見て、もう少し小さく砕くように指示を出す。その間に、狐七と手分けして、布を探す。

「これでいいか」

「でも、このマント、破れているよ?」

「うん、いいんだ。半分に切ってしまうし」

 言って、大きく裂けたマントをナイフでふたつに切り取る。二枚のうちの一枚を、ナイフの先でたくさん孔を開け、ふるい代わりにする。


「じゃあ、狐七はこっちの端を持って。蛇朗は逆の端な」

 言われた通り、向かい合ってマントの端を持ったふたりはなにが始まるのだとわくわくと弾んだ表情をする。

 にゃん太の指示に従って、片端を狐七が両前足で、もう片端を蛇朗が尾の先で持ち、引っ張り合う。その下に裂いたマントの半分を敷く。


「よし、それを素早く小刻みに動かすんだ」

「こう?」

「わわ、蛇朗、力が強い! 引っ張りすぎだよ!」

 きゃっきゃとはしゃぎながらふるう。落ちてきた粉の様子を見て、にゃん太はマントに空けた穴をわずかに大きくする。少しずつ、下に敷いたマントに粉末が落ちて来る。

 包丁もすり鉢もすりこ木も篩もなくても、なんとかなるものだ。


 同じような要領で、今度は陽の光をたっぷり浴びた壁を壊して得た小石をナイフの柄で細かく砕き、更に棒で摺る。

「これはこんなものでいいか」

「いいの?」

「ふりふりしないの?」

 遊んでいるんじゃないんだけれどなあ、と思いながら、蛇朗に槌の柄についていた宝石を、本体の槌で砕くように頼んだ。狐七には蛇朗が砕いた木片を、更に棒で細かくするように依頼する。


「ふたりとも、怪我しないように気を付けろよ」

「「はあい」」

 期せずしてぴったり重なった返事に、狐七と蛇朗は顔を見あわせて吹き出す。

 捕まえられ、閉じ込められ、生餌とされようとしていたというのに、のんびりした雰囲気だった。


 だからか、処置をしながら、じいちゃんの言葉を思い出していた。じいちゃんに錬金術を教わる工房ではいつも穏やかな空気が流れていた。取り扱いに注意が必要なものがたくさんあったが、それでもじいちゃんが声を荒げることなど滅多になかった。

「陽光を浴び続けた石は太陽の輝きを閉じ込め、解毒剤の材料となるんじゃよ」


「そして、天日干しの役割をする」

 じいちゃんの言葉に続けるようにつぶやく。


 それは、【ぎらつく太陽の石】と同じ効果を持つのだという。もちろん、ただの石が【ぎらつく太陽の石】と同じ効果を得るには多くの年月を必要とする。

「そのための方策を見出したのじゃ」

「錬金術だね」

「そうじゃよ」

 じいちゃんは天才だった。【ぎらつく太陽の石】と同じ効力を得ることができるように作り変える錬金術の錬成方法を編み出したのだ。


 にゃん太はなぜじいちゃんがそんなことを発明したのかは知らない。考えも及ばない。じいちゃんは猫族のことを知り、にゃん太ならば必要となるだろうと思ったのだ。そしてそれが今、にゃん太の窮地を救おうとしていた。時を超えて、じいちゃんはにゃん太の師であり続けた。


 にゃん太は気持ちを落ち着かせ、神経を集中して複雑な錬成陣を思い出す。細かく砕いた壁の粉末に、小刀の先で描く。最後の文様を描き終えると、ふわりと光が放たれる。


「わあ!」

「なにこれ、なにこれ!」

 狐七が歓声を上げ、蛇朗が覗き込む。狐七が慌てて、邪魔してはいけないと制する。蛇朗は大人しく鎌首を後退させるも、視線はにゃん太の前足元に釘付けだ。


「できた」

 にゃん太は目頭が熱くなって、ぐっと力を入れる。じいちゃんの言っていたことを実践に移すことができた。でも、まだまだ、これからだ。

「さあ、次だ!」

「「うん!」」


【ぎらつく太陽の石】は解毒剤の材料となるほか、天日干しの効果があり、さらには熱の力を持つ。

 そこで、大きな兜の中に蛇朗と狐七が砕いた木片と【ぎらつく太陽の石】を入れ、火をつける。小さな兜の中に蛇朗が砕いた【夢みる玻璃】と【夢みる緑玻璃】を入れる。大きな兜の中に小さな兜を入れ、火にかける。

 兜の耳の部分の穴に細い鎖を通し、それを鉤で引っ掛け、その鉤を鎖で吊るした。天井にあるシャンデリアから吊るす。蛇朗が鎌首を伸ばしたら簡単に届いた。

 これを長さを調節して、少し内側の小さい兜の鎖が短くなるように調節する。二重にして長さ調節をできるようにする。


 にゃん太は慎重に錬金術を行使する。

「わあ、溶けた!」

「どれ?」

 狐七と蛇朗は興味津々である。ふたりにもう少し手伝ってもらうことにした。


 狐七に棒きれで中身をかき混ぜるように言い、蛇朗に粉末にした薬が入っている容器を持ってくるように伝える。

「じゃあ、中の薬を小さな兜の中に入れて。少しずつな。熱いから気を付けて」

「うん」

 蛇朗は尾で器用に器を掴んで、ゆっくり小さな兜の上で傾けた。狐七は呼応するように棒を操ってかき混ぜる。

「ふたりとも、息があっているな。その調子だ」


 全て入れ終えた後、ふたりを下がらせて、棒きれで錬成陣を描く。いつもとは違う光り方にひやりとしながらも、なんとか分離は成功した。

「次は【夢みる玻璃】と【夢みる橙玻璃】、【希望の虹の石】だ」


 同じ要領で今度は混合する。大きな兜に木片と【ぎらつく太陽の石】を付け足して温度が下がらないように気を配っていたが、途中、【ぎらつく太陽の石】がなくなってしまったが、なんとか間に合った。

 いつも器材も素材も潤沢に整った工房で錬金術を行っていたから、こんなふうに気をもむのは初めての経験だ。


「そう言えば、俺、工房の外で錬金術を使ったのは初めてだなあ」

「そうなの? 俺は錬金術の手伝いをしたの、初めて!」

「俺も!」

 にゃん太がぼやくのに、狐七も蛇朗も目を輝かせて訴えかけてくる。


 にゃん太は知らない。このとき、ふたりの心にしっかりと「格好良い猫の錬金術師さん」像が植え付けられていたことを。期せずして、こんな局面で思い描いていたことが実現したのだ。


 さて、出来上がった向精神薬を前にして、蛇朗の高揚していた気持ちは急降下した。すい、と後退した鎌首が、こころなしか、きゅっと鋭角になっている。こんなときだが、にゃん太は少しおかしみを感じた。


「薬かあ」

 今まで監禁され飲まされ続けてきたことから、薬はいやだという認識が強く根付いている。にゃん太はそう見て取って、口を開いた。

「嫌なのはわかる。俺の知り合いの猛獣人族も歯の治療をしたがらなかったからな」

「へえ、猛獣人族も嫌がるんだ」

「痛いの?」

 にゃん太の話に狐七が興味を持ち、蛇朗も反応を見せた。


「そうだぞ。でも、歯はとても大切だ。だから、治療が必要なんだって話して渋々治療を受けたんだ。ヒョウ次おじちゃんと言って———」

 にゃん太は簡単にそのときのことを話した。


 狐七と蛇朗とは身を寄せ合って震えていた。

「お、俺、ちゃんと歯磨きをするよ」

「俺も!」


「うん。あと、唾液は大切だからな。食事の後すぐに磨くんじゃなくて、二、三十分くらい、間をおいてな。ちゃんと薬をつけて磨くんだぞ。磨いた後にすぐに物を食べない方が良い」

 立て続けに出てくる注意事項に狐七は必死になって覚えようとする。蛇朗などは、途中から記憶するのを放棄して、目をくるりと回す。


「そんな風に、薬は嫌かもしれないけれど、必要なものなんだ。蛇朗が嫌がるのも仕方がないよ。だって、強い猛獣人族だって嫌がるんだものな」

「ヒョウ次おじちゃんもがんばったのか」

 ううん、と蛇朗が鎌首を下げる。


「これは、蛇朗を治してくれる薬だよ」

 狐七の言葉に、気を取り直すようにうんと頷くように鎌首を上下させ、にゃん太に視線をやる。

「薬を飲んだら、<しゅわしゅわレモン>を作ってくれる?」

「うん? ああ、いいぞ。ただ、ここでは作れないから、工房へ行ってからなら。そうだ、そのときは狐七や、そうだな、パン七ともいっしょに飲もう」

「狐七とパン七も? カン七やハム助もいっしょ?」

「ああ、いっしょだぞ。ケン太もいる」

「ケン太! 犬族で畑仕事をしているんだよね」

「そうだよ」

 狐七からいろいろ聞いたらしい。


 蛇朗は狐七と顔を見あわせて、うふふと笑った。身体の大きさの違いはある。けれど、ふたりは同じ歳頃の子供なのだと思わせるなにかがあった。


 そう、蛇朗は狐七から様々に聞いていた。パン七や他の獣人の子供たちとどんな風に過ごしていたのかを。猫の錬金術師の工房の獣人たちがどれほど優しく温かい心根の持ち主であるかを。だから、彼らは信頼するに値するのだということを。


 愛玩獣人愛好家たちは蛇族を薬によって飼いならそうとしていた。しかし、薬はその処方が難しい。だんだん耐性ができていって、効きにくくなるので、強い成分を用いることになる。そして、それが精神を破壊して行く。そういった薬物摂取した際には、長期的な治療が必要となる。

 蛇朗がまだ若いということ、飲ませようとした者たちが耐性などの薬への理解がないことが幸いした。


 麻薬や幻覚剤は常習性があり、摂取したくもないのに摂取してしまう。蛇朗もまた、いやいやながら飲んでいた。そして同時に、嫌だから全部は飲まないで、こっそり隠していた。巨体に対して摂取量は少なくて済んだ。


 蛇朗は今、一時的に回復し、明浄な意識を取り戻した。すっきりした頭で動くことができる解放感を得た今では、思考が濁ることを嫌がった。

 そうして、蛇朗はみなで作った薬を服用した。


 薬作成が終われば、閉じ込められている分、時間はある。にゃん太と狐七は代わる代わる色んな話をした。にゃん太は錬金術師の話を、アルルーンのことは伏せて話した。ふたりがじいちゃんのことをすごいと褒め、にゃふふんという誇らしい気持ちになった。子供の時分には冒険者に憧れるものだが、猛獣人族の話には、ふたりとも目を輝かせた。


「虎族とライオン族の長に豹族の前長って……。にゃん太って、いったい? 錬金術師ってそういうものなの?」

「トラ平、また虎太郎に怒られている!」

「なあ、懲りないよなあ。でも、ベテラン冒険者でいろんな獣人に頼りにされているんだぞ」

 狐七の呆気にとられたつぶやきは、蛇朗の言葉にかき消され、にゃん太の耳には届かない。そんなふうにして、蛇朗に服薬させ、おしゃべりをし、話し疲れてうとうとした。




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