表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/60

28.窃盗犯6

 

 たま絵は確実に父に会うために、夕方を狙って実家に向かった。


「ああ、良かった。いたのね、父さん」

「お帰り、たま絵。良い匂いだな」

 さっそく抱き締めようとするにい也に、お盆を突きだす。そこには布巾をかぶせた料理が載っている。にゃん太とは違って、たま絵は父の扱いを心得ている。にい也は久々に会った可愛い娘に抱き着くことができない。


「今日の夕飯のおすそ分けよ。うちはこれからだから、手短に済ませて帰るわね」

 いっしょに夕食を摂らないと宣言されたにい也は分かりやすく消沈した。


「まあまあ、立ち話もなんだから、にい也さんもたま絵も座りなさいよ。今、お茶を淹れるわね」

 父と娘の会話を聞きつけ、なお乃が奥から顔を出す。たま絵は母と挨拶をかわす。こちらはあっさりと終わるので対策は不要である。


「なお乃、菓子があっただろう。あれを出してやってくれ」

「ええ、あれね」

 母が持参してきたおすそ分けを持って台所に行った後、たま絵はにい也と居間で向かい合わせて座る。そして、訪ねてきた用向きを話した。


「あの放火犯の追跡調査か」

「ええ。火事のもらい火でわたしの友だちのカン七の店も焼失したわ。それにね、せっかく獣人たちのために<吸臭石>を作ったのに、悪用されたってにゃん太が落ち込んでいるのよ」

 にい也の怜悧な表情がわずかに歪む。たま絵はどう話せば父が動くか分かっていた。


「にゃん太の真心を踏みにじるとは。許しがたい」

「<パンジャ>も小柄なことがハンデとなる獣人を助けようという気持ちで発明したしね」

 怒りが高まりつつある気配を読み取って、たま絵は差し水をする。

「にゃん太は本当にやさしい子だ」

 そして、その気持ちをしっかり形にすることができる錬金術の腕の持ち主になりつつある。父がそれを喜んでいるのと同じく、たま絵も思っている。そして、自分ももう一度目標を持とうとしている。


「それでね、<吸臭石>が使われたら気になって仕方がないようなの。父さん、なにか知らない?」

 なにについて、とは具体的に聞かなかった。火事のことに限定せず、関連することを、父ならば掴んでいるのではないかと思ったのだ。父は滅多に嘘を口にしないが、事実を伏せておくことはままある。


「警邏が獣人冒険者に依頼を出したのは知っているがな」

 もちろん、臭いが途切れて調査が足踏みしていることも耳に入っている。

「一度、警邏から話を聞いてみるか」

「お手柔らかにね」

 そんなことを言いつつ、たま絵はなにか分かったら教えてくれとねだる。本当にしっかりした子だとにい也は内心苦笑する。


 そのたま絵はなお乃が淹れた茶をひと口飲んで告げた。

「父さん、母さん、わたしね、もう一度薬師を目指してみることにしたの」

 にい也は思わず身じろぎした。ふだん、なにごとにも動じず超然としている。多くの冒険者が、それこそ猛獣人族の猛者だとて尻尾を巻いて逃げ出す魔獣を前にしても平然としていられる。だが、こと、家族のことになるとにい也は変容する。


「まあ! 素晴らしいわ! がんばってね、たま絵」

「ありがとう、母さん」

 すんなり受け止めるなお乃に、たま絵はこれが母のすごさだと思う。柔軟でしなやかにつよい。一般とはかけ離れたにい也もそんな風に受け入れたのだろう。


「たま絵、うん、良かった。良かったよ」

 にい也はきゅっと目を細めて二度三度うなずく。

「俺も応援する」

「ありがとう、父さん」


 ほどなくしてたま絵は実家を出た。日が落ちたからといって、にい也が工房の近くまで送ってくれた。

「父さん、にゃん太が店に買い物にかこつけなくてもふつうに訪ねてくれば良いのにって言っていたわよ」

 父の財布事情を心配していたと言えば、苦笑する。にゃん太は良くも悪くもふつうなのだ。トップ冒険者の財力を知らない。


 さらに言えば、じいちゃんが遺してくれた工房も器材も素材も畑も、そしてアルルーンも大切にしている。にゃん太の宝物だ。しかし、それらは世間一般でも実際に宝であり、値段がつけられないほどの代物なのである。正直者が得をする、という世にも珍しい事柄を具現化している。


「にゃん太が錬金術師になったときは、素材貧乏になったらいろいろ差し入れようと思っていたんだけれどなあ」

 のんびりしていて貪欲とは程遠いにゃん太は、けれど注目に値する発明を立て続けに行うまでに至っている。


「たま絵もだぞ。俺は応援すると言った。協力は惜しまない」

 生きる伝説とまで言われる猫族冒険者のにい也は有言実行である。

「ありがとう。薬師の免許取得試験でドラゴンの素材が必要になったらお願いするわね」

「おお、任せておけ」

 もちろん、そんなものが必要になることはないが、父に言えば、あっさり揃えてくれそうである。


 工房の前で父と別れたたま絵は思う。

 父さんはなにかを隠している。

 直感でそう感じた。けれど、それが火事に関することかどうかは不明だ。




 警邏がやって来て、窃盗犯が<吸臭石>が使用した可能性があると聞いてから幾日か経った。

 みい子が店から作業場の方へやって来たのはそろそろ店じまいをしようという時分だ。


 みい子はひとりではなかった。伴って来た者の背丈は低い。

 いつぞや会ったパンダ族の子供である。前かがみになって両前足で腹を抑え、痛い痛いと言うが、誰がどう見ても、演技である。ちなみに、大根だ。だから、にゃん太にも分かった。


 連れてきたみい子が困り切った表情をしているから、ひとまず引き受けることにした。

「みい子さん、もう店を閉めちゃって」

「分かりました」

 パンダ族の子供の視線は店に戻っていくみい子の後ろ姿に流れる。その隙に、たま絵はにゃん太に畑に行ってくると小声で伝える。もちろん、アルルーンに畑から出てこないように伝えて来るということだ。にゃん太はかすかにうなずいた。


「今日はおひとりなんですね」

「う、うん」

 友だちと別れた後、急に腹が痛くなり、以前、怪我した際に薬をぬってもらったことを思い出してやってきたのだと言う。


「友だちとはあの狐族の?」

「うん」

 にゃん太は内心、舌を巻く。問われても、名乗らない。友だちの名前も出さない。なかなかのものではないか。演技力はなくても、誰か智恵の回る者からしっかり言い含められている。


「腹痛の薬は、っと」

 にゃん太が棚に向かうと、さりげなくハム助が子供に付き添う。

「ね、ねえ、ここにアルルーンってのがあるんだよね」

 にゃん太が薬の素材を探す棚を、パンダ族の子供はよく見ようと伸びあがる。


「え?」

 にゃん太は振り向く。まさか、子供の目的がアルルーンだとは思いもよらなかった。

「だれからそれを聞いたんですか?」

 さすがのハム助も、声がやや尖る。カン七の周知は徹底されているのだ。


「え、あの、」

 周囲の剣幕に、パンダ族の子供はまごつく。この工房の面々はいつも優しく穏やかに接したから、予想外のことで、毛並みよろしく目を白黒させる。

「もうお腹はいたくありませんね?」

 と言うハム助に頷いた子供は、おずおずと話し出した。


「呪いの儀式」に使うのだという。アルルーンの素材を。

「アルルーンの素材をそんなことに使うなんて!」

 のほほんとして見えるにゃん太が珍しく語気を荒げるのに、パンダ族の子供が身を縮める。

「だれがそんなことを?」

 いつも穏やかなハム助も、表情を変えなかったが、声音がやや硬い。


「お、お父ちゃんが」

「お前の父ちゃんが言ったのか?」

「う、うん、でも、いつも酔っぱらっているから、間違えたのかも」

 獣人の子は困ったように言う。


 にゃん太たちは顔を見あわせる。ふだんから酒を飲んで、どこかで聞きかじった物事が入り混じって妙な風に記憶してしまっているのかもしれない。

 どうすべきか、と無言で視線をかわす。


 と、その時、ぐうぅぅ、と大きな音がした。

「あっ」

 パンダ族の子供は両前足で腹を抑えた。そうすることで、音が漏れないようにしようとでもいうように。先ほどの演技とは違って、慌てる風がいとけなく、いじらしい。


「あら、もうこんな時間なのね。ご飯にしましょう。貴方も食べて行くと良いわ」

 戻って来たたま絵はカン七とケン太も連れて来ていた。

「で、でも、」

 たま絵が仕込みは終わっているからと誘うのに、パンダ族の子供は上目遣いになる。


「お腹が減っていては帰るのも大変です」

「ハム助さんの言うとおりだ。食べて行きな」

 ハム助もケン太も、パンダ族の子供は食事をもらうことに遠慮しているのではなく、ひとりで食べるのが気まずいのだと察した。


「そうよお。この猫族のお姉さんの料理はとっても美味しいのよ。ほっぺたが落ちちゃう!」

 カン七の言葉に、えっと声を上げながら、パンダ族の子供は腹に宛てていた両前足で頬を支える。

「あらあ、まだ食べていないうちから落ちないわよ」

 そこで笑い声が上がり、パンダ族の子供も釣られて笑う。


「姉ちゃん、たくさん作って、あまったらこの子にもたせてあげよう」

 にゃん太もパンダ族の子供の気がかりを察知する。


 さて、パンダ族の子供は旺盛な食欲を見せた。そして、にゃん太たちは知らぬことではあったが、彼は満腹になったとたん、眠ってしまう特性を持っていた。しかも、揺すっても叩いても起きない。大きな物音もものともしない。

 そのときもそうなったし、演技ではない。


「どうしようか」

「親御さんが探しているんじゃないかしら」

「俺、警邏と市庁舎に迷子の届けが出ていないか確認して、伝言を言づけて来るよ。眠っちゃって起きないから預かっているって」

 にゃん太が困り果て、さすがのたま絵も困惑しきりで、ケン太が消極策を呈する。

「冒険者ギルドにも伝えておくのはどうかしら」

 カン七の提案を受けたケン太が駆けて行く。犬族の脚力ならば、三軒回ってもすぐに帰って来るだろう。

 カン七が自分の部屋に寝かせてくると言ってパンダ族の子供を抱き上げる。ひと晩監視するつもりであるのだろう。


「それにしても、アルルーンの名前を出すとは、いやはや」

「言うに事欠いて「呪いの儀式」に使う、だよ?!」

 ハム助が嘆息し、にゃん太が思い出してふたたび憤る。


「「呪い」ではないけれど、風を起こして誘引の香りを遠くに飛ばして昆虫を呼ぶという芸当はやってのけたわね」

「そう考えると、「特殊な儀式」で立派に役割を果たしそうではありますね」

 たま絵が薬効を上げるための素材を得た際のことを思い出し、みい子が穿ったことを言う。




 パンダ族はその容姿の愛らしさから、誘拐されることが多かったという。そのせいか、親と子供の結びつきは強い。

 そこへ目を付けた狐族の獣人は、パンダ族の子供が連れ去られたことにして、その工房へ乗り込んだ。目星をつけていたお宝がたんまりありそうな錬金術師の工房だ。ちゃんと偵察を送り込んでおき、内部のことを聞き出している。


 つじつまが合わない説明は、しかし、酔いどれパンダには枝葉末節はどうでも良かった。ただ、「子供がいなくなった」「その子供はこの工房にいる」ということのみが重要なのだ。


 狐族の獣人が面倒を見ている狐族の子供は自分のやり口を嫌っていつつも、ちゃんとパンダ族の子供に言い含めてくれたようだ。ふだんから、しぶしぶでもしっかり仕事をこなすものの、今回の件は頑強に抵抗した。なだめすかすのにひと苦労した。


 パンダ族の子供が帰って来ない。ということは、噂は本当だったのだ。この工房に特別なお宝が隠されている。それが判明したら、パンダ族の子供には眠ってしまうことで居すわるように指示をした。自分の指示を呑みこませることはできないので、弟分に手順を一から十まで教え込ませた。


 こんな手段を取ったのは、パンダ族親子の妙な特性があったからだ。

 まず一点。

 パンダ族の子供は満腹になれば深く眠ってしまう。その眠りに就けば、ある程度時間が経たないとなまなかなことでは目を覚まさない。


 そしてもう一点。

 パンダ族の子供が入り込むことで、目的の工房に留まる。その後、親の酔いどれパンダを十分に煽り、唆して「救出」に向かう。そうすることで、強固な守りも潜り抜けるのだ。


 パンダ族特有の親子の絆を利用した「救出」作戦はたいてい、成功する。

 なぜなら、それは悪意や物欲によるものではないからだ。純粋な愛情から子供を取り戻そうと言う気持ちは、強固な排除の魔法をも潜り抜ける。


 現に、店に入り込むことに成功した。施錠は狐族が針金で開錠した。

 そして、作業場に入り込んだ。

 しかし、そこから畑に回ることはできなかった。


 守護の魔法が阻んだのだ。パンダ族の親子の絆を上回る力を持っていた。

 さらには、守護者が武器を持って待ち構えていた。




 作業場のどこになにがあるかの詳細を狐族の子供から聞き出していた狐族の獣人は、壁際の棚伝いに畑に繋がっているだろう扉に向かった。扉の取っ手に触れることはできたものの、押しても引いても開かない。施錠しているのだろうかと針金を手にした。

 天井にある明り取りの窓や棚の隙間にある窓から、月明かりが差し込む室内はうす暗い。


「どうなんだよ、開いたのか?」

「しっ」

 こんなところで普通の音量で喋るパンダ族の獣人に、苛立ちを覚える。しかし、狐族の獣人以上に焦燥を隠せないパンダ族は、その場で足踏みをしそうなほどだ。そんなに子供のことを心配するというのに、普段は面倒を見ることなく、酒浸りである。自分の子供が狐族の子供といっしょにあちこちで食べ物を得ようと駆けまわっているのに、親としてなんとかしてやろうと思わないのか。


 狐族の獣人とて、狐族の子供が嫌がることをさせたくはなかった。しかし、下町の獣人がまっとうな仕事に就けることは稀だ。なんとしてでも、たくさんいる養い子たちを飢えることなく成獣させてやらねばならない。


 それで、あるところから頂戴することにしていた。ところが、先だって子供たちを送り込んで内部事情を探らせていた店が放火されたという。それも自分たちのやったことのように言われていると聞いて、慌てた。放火は重罪だ。今のところ、まだ警邏の捜索は進んでいないらしいが、ぼんくらどものやることだ。やってもいない罪をかぶせられかねない。


 そこで、狐族の獣人は一発大きな仕事をして、しばらくこの稼業から離れてほとぼりを覚まそうと考えた。

 なのに、聡い狐族の養い子がまず、嫌がった。次に、養い子の言うことならばよく聞き分けるパンダ族の子供が、狐族の子を真似て渋った。父親であるパンダ族の獣人は危機感が乏しいのか、あちこちで安酒をおごってもらっては酔っぱらっている。

 どいつもこいつも。


 自分ばかりが割を食っているとは思う。多少強引なことをしなければ生き延びられないのだ。綺麗ごとを言ってはいられない。なのに、みな、勝手なことばかり言うし、適当なことばかりする。


 それでも、養い子たちを死なせたくはなかった。生きていたら、なんとかなるかもしれない。もしかしたら、まっとうに稼ぐことができる仕事に就けるかもしれないのだ。聡い狐族の子など、きっとそうなるだろう。パンダ族の子供は父親のようにならないように、ぜひとも狐族の子を慕うままに、賢く生きて欲しいものだ。


 この工房で知り合った者たちに、パンダ族の子供を押し付けることで入り込むことに成功した。

 狐族の獣人は噂に聞く伝説と言われる植物をいくつかもらおうとした。パンダ族の獣人は、帰って来ない子供がさらわれたのだと思い込んでいる。それでもまだ暴れ出していないのは、救出のどさくさに紛れてお宝を頂戴して行くということを何度か繰り返しているからだ。


 相手に誘拐の意思はなく、単に保護していただけだと分かった後は謝罪してさっさと立ち去る。その際、ちょっとばかりいただいたもので、幼い同族たちを養っているのだ。


 そのお宝が植えられている畑に続く扉が開かない。鍵穴に針金を指し込もうとしても、押し戻されるのだ。

「なんだ? どういうことだ?」

「まだか? まだなのか? うちの子は?!」

 お前はなにもせずに急かすばかりだな、という言葉を辛うじて飲み込む。


 その獣人ふたりの無防備な背中を、ちょんちょんと突く者がいた。

「今やっているから、背中を触るなよ」

「俺じゃねえよ。っていうか、お前も俺の背中を突くのをやめろよ」

「はあ? お前の目の間にいる俺がどうやって背中を突けるんだよ」


 さすがに、おかしいと思った狐族の男はパンダ族に向き直る。そして、見た。大柄な獣人の向こうに、小柄な者たちがいくつもいるのを。

 ヘラやはけ、ふるい、すりこ木を持った黒っぽい蕪のような植物だ。動いている。


「な、な、なんだあ?」

「なにが?」

 驚き大きな声を出す狐族に、パンダ族の獣人は、自分には静かにしろと言うのにと思いつつ、こちらも振り向く。

「なんだ、こりゃあ!」


 明り取りの窓から差し込む光に照らされ、緑の葉を艶めかせたアルルーンたちが、作業台の上に勢ぞろいしていた。根っこ根っこに錬金術で用いる器具を持っている。

 そして、侵入者たちに一斉に飛び掛かった。


「こ、このっ!」

 ぶんと空気を切るにぶい音をたてて、パンダ族の獣人の太い前脚がふるわれる。アルルーンは器用にその前脚を踏み台にしてさらに上に跳びあがる。ふだんからにゃん太の猫族特有のしなやかな動作を見ているアルルーンたちはそれらを模倣した。そうして、根っこに持ったすり鉢をすっぽりとパンダ族の獣人にかぶせ、目隠しをする。

「なんだ、いきなり暗くなった!」


 馬鹿め、頭にかぶせられたのを取れ、と言う間もなく、狐族はその場で激しいタップダンスを踊らされていた。

「痛っ、痛っ、痛っ、痛っ、」

 冷静なつもりでいて、狐族の獣人も、唐突な上に夢でも見ているのかという出来事に遭遇して慌てふためいていたのだ。


 台から飛び出した植物のようなものたちは放物線を描いてふたりに殺到し、初激を与えた後は、足元で武器を繰り出すのだ。しかも、なかなかにすばしっこい。だから、蹴ったり払ったりしようにも、さっと避けられる。


 あっちに気を取られたら、こっちからわーっとばかりに殴り掛かられる。足元を。次第に、転倒しそうになるのを堪えるのに精いっぱいとなった。ましてや、まだすり鉢を顔に引っかけているパンダ族の獣人は、逆によく立っていられるものだと感心する。


 薄暗い中で、わらわら沸いてきた不思議植物が武器を持ってがっしゃんがっしゃん突っついてくる。

 ものすごく不気味である。


「痛い痛い」

「なんだなんだ」

 きゃーっと悲鳴を上げて、逃げ出す。来たのとは逆戻りした。アルルーンたちがそう誘導したのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ