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9.木工職人とその弟

 

 豊かな国ユールの地方都市ティーアでは人や獣人族がいっしょに暮している。獣人族は人と動物の両方の特性を持つ。二足歩行し、器用に前足を操ることができ、言葉も交わす。


 大通りには馬車や荷車が通り、商品が並ぶ店や工房が連なり、とてもにぎやかだ。そこから一本入った筋をさらに進んで角を曲がった先に錬金術師の工房がある。

 先だって、獣人新聞でも取り上げられ、一躍脚光を浴びた猫の錬金術師の工房だ。


 大通りから少し離れているから、敷地は広く、裏手に畑を持つ。錬金術の素材にもなる不思議な植物がたくさん植えられている。中でも折り紙付きなのがアルルーンだ。なんと、自在に動く不思議植物だ。魔力も持ち、あまり知られていないようだが、土に育つ生命、つまり植物のことにも詳しい。工房の持ち主の猫族のにゃん太にもあれこれとアドバイスする。


 にゃん太は茶トラ白だ。ぴんと先がとがった三角耳、鼻筋と腹や足が白い茶トラ柄だ。肉球や鼻の色がピンクなので「可愛い」と言われることはあっても格好良いと言われることはないのがやや不満である。


 不思議な植物が育つ畑では犬族のケン太が手入れにいそしんでいる。

 露地沿いの錬金術工房の正面玄関を入れば、看板娘の姉たま絵が客を迎える。その奥の部屋が錬金術の作業場である。いくつもの炉、錬金釜といった定番錬金術アイテムの他、台やはけ、ヘラなどといったさまざまな器具、壁一面の棚には素材が所狭しと置かれている。

 最近、新しく従業員となったハムスター族のハム助がせっせと細かい作業をしている。


 ハム助を助け、行く当てがないというので工房で仕事をしてもらおうとしたのは、新聞で取り上げられたことも少し影響している。

 それまでにゃん太は自分とその周辺のことしか見えていなかった。自分と家族と友だち、そこへじいちゃんとアルルーンが加わった。そして、錬金術や工房、畑といった事柄は自然とその範疇はんちゅうに入ってきた。

 逆に言えば、それらをうまく回していくのに精いっぱいだったのだ。


 最近まではひとりでやっていたが、ケン太やアルルーン、たま絵といった気心知れた者たちに手伝ってもらうことで精神的に安定したことと多くの懸念材料が落ち着き先を見つけた。

 そうして工房の運営が軌道に乗り、心の中に余裕が生まれた。そこへ、新聞が獣人たちの観点からのにゃん太の立ち位置に焦点を当てて見せた。

 自分にはなにができるだろうという考えが浮かんできた。


 にゃん太は非常に恵まれている。他の苦労している獣人たちとなにが違うのだろうか。自分が精いっぱいやってきたことは実はすごいことで、期待されているのだという。にゃん太が他の者たちに助けられてきたのなら、今度はにゃん太がなにか別の者たちにできることはないだろうか。


 その考え方はじいちゃんに教わった錬金術の在り方に関係していた。錬金術は世界の真理を追究するものであり、それによって得たもので生活したり素材や器具を買ったりし、そして、人の役に立つためのものでもある。じいちゃんはそう言ったし、自分の行動でもってにゃん太に教えてくれた。




 以前、知り合った熊族の熊五郎から連絡が入った。木工職人を紹介してくれるというのだ。

 熊五郎は細工工房がある通りの一角を指定してきた。


 じいちゃんから錬金術工房を引き継いだ際、獣人族とは取引しないと言われ、新たな木工職人を探していたにゃん太はいそいそと出かけた。クッキーをたずさえたたま絵を伴っていた。美女と手土産の効果てきめんで、ハチミツの仕入れについても話を詰めることができた。これでまた<しゅわしゅわレモン>を作って、みんなで飲むつもりだ。


「にゃん太、あんた、結構やるわね」

「ま、まあ、姉ちゃんを矢面に立たせるつもりはないよ」

 ただでさえ、その美貌のせいで辛い目に遭ったのだ。しかし、対するたま絵はやる気に満ちていた。

「あら、客対応をしているのよ? このくらい、なんてことないわよ。それより、この調子でじゃんじゃん行きましょう!」

 こっそりそんな風にやり取りしていたら、木工細工工房から熊五郎が出てきた。


「羊族の羊彦さんだ。まだ若いけれど、腕の良い職人だ」

 そう紹介したのはにゃん太やたま絵の1.5倍ほども身長がある痩身の獣人だ。亜麻色のくりくりの髪が額、目元にまでかかっていて、その隙間から見える瞳は穏やかだ。白い逆三角形の顔、鼻が前に長く出ている。落ち着いたお兄さん風でなかなかのイケメンである。


 なんでも、ティーア市獣人新聞を読んでにゃん太の工房に関心を持っていたのだという。だから、熊五郎がこの工房の親方に猫の錬金術師が木工職人を探しているという話を持ち込んだ際、自分が窓口になって仕事を引き受けると手を挙げてくれたのだという。

「そちらの工房の仕事もあるでしょうから、納期はその都度相談するということで」


 工房の親方も羊族で、こちらにも抜かりなく用意しておいた手土産を、たま絵がにこやかに渡すと眦を下げて「うちも最大限に協力しますよ」と請け負ってくれた。

 好意に甘えて工房の中を見せてもらい、どんなことが可能かという話をする。数人の職人と徒弟がもくもくと作業している。大きな台の傍には鉄製の頑丈そうな器具もある。聞けば、鍛冶職人のうさ吉とも取引があるという。にゃん太の工房の仕事も請け負っていると言えば、「ああ、なら話が早い。うさ吉さんとも連携して仕事に取り掛かることも可能ですよ」と話は進んだ。

 これは非常にありがたいことだ。専門分野の違う職人たち複数で事に当たることもある。その際、相性が悪いこともあり得る。すでに取引きがあるというのは非常に心強いことである。


「ハムスター族が回す車で糸紡ぎができないかしら」

 たま絵が訊ねると、羊彦がのんびりと頷いた。

「可能ですよ。ただ、糸もいろいろありますから」

 取り扱いの難しい糸は専門の機械が必要になるという。

「まずは汎用品でいいと思うわ」

 断言せずに可能性を示すたま絵に、にゃん太はハム助が回す車で糸紡ぎをし、その先になにかを想定しているのではないかと考えた。ハム助は確かに車を回すのが得意だと言っていたが、今はそれをしなくても仕事はある。

「それならすぐに作れますよ。この工房にあるものを使えますから」

 たま絵は機織り機のことには触れなかった。紡いだ糸をどこかに卸すつもりなのかもしれない。

 そんな風に話していると、羊彦に客だと他の職人が声を掛けてきた。


「ああ、またか。ちょっと待っていて下さい。たぶん、すぐに済むと思うので」

 羊彦が工房の入り口へと向かうと、そこには彼の身長の二分の一よりもやや低いくらいの細長い身体をした獣人が立っていた。

「フェレット族だ」

「可愛いわねえ」

 たま絵がため息まじりに言う。


 にゃん太たち猫族も可愛いとよく言われるが、フェレット族も同じくだ。猫族よりもひと回り小さく、細長い身体つき、正面から見れば丸い顔、耳が愛らしい。そして、横顔は鼻先が前へ出ていてシャープな印象で、とたんに美しいという印象に変わる。正面から見るのと横から見るのとでは印象が異なる種族なのだ。


「お待たせしました。いや、実は弟がフェレット族でして。これがもてましてね。ただ、冒険者稼業をしているからなかなか捕まらないというので、工房に確実にいる僕にことづけを頼まれることがよくあるんです」

 獣人は異なる種族で婚姻を結び、子をなすことがある。その際、どちらかの種族の子供が誕生する。

 だが、羊彦の弟のフェレット族は血がつながらないという。


「フェレひとと言うのですが、このふた親というのが、どうしようもない者たちでして。見かねて、近所に住んでいた僕が代わりに育てたんです」

「えっ」

 にゃん太は息を呑んだ。たま絵はそんなこともあろうと、泰然としている。しかし、にゃん太としては、家族とは仲が良いものだった。少なくとも、にゃん太の周囲ではそういうものだ。

 ふと、ティーア市獣人新聞の記事が思い出される。あれは遠い場所での出来事ではないのだ。ちょっと腕を伸ばせば触れる身近なこととして急接近してきた。


 羊彦はにゃん太を安心させるように穏やかに微笑む。

「今は立派に冒険者として独り立ちしていますよ」

 冒険者稼業であちこち行く傍ら、採取してきたのを持ち帰ってくれるのだという。

 冒険者でそれなりに活動しているということは、今は子供ではない。羊彦はたま絵よりもいくつか年かさなくらいだから、異種族の子供を育てた際には彼もまだ若かっただろう。


「ご苦労も多かったでしょうね」

 たま絵の言葉に、羊彦は頷いた。

「それはもう。特に小さいときは大変で。僕も他の種族の生態や暮らし方とか興味を持ったことがなかったものでして。フェレット族のことをなにも知らなかったから」

 そう言いつつ、羊彦は目を細めた。もとから細いので、糸のようになる。


「可愛い外見のわりに、気が強いところがあるんです。好奇心旺盛でなんにでも興味を持ってね」

 羊彦自身はフェレ人を保護した当時、食事も腹が膨れれば良いくらいのものだった。それが、フェレ人は金額の高い安いではなく、好き嫌いが激しく、嫌いなものはまったく食べようとしなかったという。


「うわあ、せっかく用意してくれたのに」

 つい、にゃん太は声を上げた。

「うん、昔は僕も気が短かったから、こいつ、って思ったよ」

「こいつ」のところで過去を思い出したのか、声が低くなり、にゃん太はびくりと身を震わせた。今の穏やかな様子とはかけ離れた過去が垣間見えた気がした。


「他のフェレット族の既婚女性に、なにだったら食べるかとか聞いて回ってさ。ずいぶん、助けてもらったよ。そのおかげで、そこの家の子と友だちになれたし」

 いろいろ、頑張ってきた様子だ。回想するうち、羊彦の言葉が砕けたものになっていた。


「大分てこずらされたけれど、とにかく、やることなすこと可愛いんだよ。僕の後をずっとついて回ったり、じっと見上げて来たりしてさ」

 ああ、これ、話し始めると止まらなくなるやつだ。にゃん太はそう思った。


 それを察したのか、羊彦は照れくさそうに笑う。穏やかな雰囲気のイケメンの照れ笑いって心がほっこりするんだな、と変な発見をした。

「だから、ちょっと、たま絵さんの気持ちが分かるんだよ。いや、にゃん太君がしっかり自分の力で仕事をしているのは知っているんだよ? でもね、小さい頃にあれこれ世話を焼いた弟が、って思うとさ」


 そう言われてしまえば、ふと思い出す。にゃん太も昔、たま絵にはいろいろ世話になった。両親が仕事でいないときに熱が出て、たま絵自身もまだそう大きくはないのに、にゃん太を抱えて病院へ駆けこんだのだ。看護師さんに「よく抱えて来られたわねえ」と感心されていた。

 姉という歳上の立場から頭ごなしに言われることはたびたびあるけれど、こういうことがあるから、頭が上がらない。

 となりでたま絵はつんと顎を上げて「当然よ」とばかりの様子だ。


「だから、にゃん太君がお世話になったお姉さんのためにハンドオイルを作ったって聞いて、感動してね。いや、うちの弟が僕にしてくれたのではないし、僕は好きでやっていたから、感謝してほしいというのでもないのだけれど」

 もごもごと言いにくそうにする。

 照れくさそうにされるものだから、にゃん太も面はゆくなる。自分の姉への気持ちを他の者が汲み取り感じ入ったのだという。なんだかこそばゆい。だからか、にゃん太は会ったこともないフェレ人に親近感を抱いた。


「ま、まあ、とにかく、ティーア市獣人新聞を読んで、にゃん太君のことは知っていたし、すごい錬金術師だと思っているよ。いっしょに仕事ができて光栄だ」

 その後は、羊彦もフェレ人も暑がりだとか、羊彦はのんびりした性格だが、フェレ人は非常に俊敏だという。

「フェレ人はねえ、狭いところに入り込むのが好きなんだ」

「あ、それ、俺も」

 そんな風にして、羊彦はあれこれと弟のことを話した。


「にゃは~、俺、フェレット族について詳しくなったよ」

「ごめんね、弟のことを話し出すと長くなっちゃって」

 羊彦は申し訳なさそうな顔つきになる。フェレ人からもよく文句を言われるのだという。


 後日、たま絵が正式に発注した糸紡ぎ機を納品に羊彦が工房へやって来た。その際、荷物持ちの手伝いとして弟のフェレ人を伴っていた。

 フェレ人の毛並みは白にところどころ黄色っぽい色あいがまじっている。真正面から見るとむにっとした口回り、丸い耳、つぶらな瞳をしている。ツヤツヤに磨いた黒すぐりの実をぽつんぽつんと埋め込んでいるようだ。

「わあ、本当に可愛い!」

 そして、横顔は凛々しく、もてるのも納得がいく。


「兄さん、また、俺のことを他で話したの?」

 やめてよね、と文句をつける雰囲気だ。

「いや、にゃん太君も弟の立場だっていうからさ。それに、そんなに話してはいないよ」

 よくやるやり取りのようで、羊彦はこの件に関しては弱い立場にある様子だ。


「羊彦さんは弟さん思いなんだなって良く分かったよ」

 にゃん太は羊彦を擁護する気持ちでそう言ったが、当の本人からそうではないと言われる。

「どちらかというと、僕が助けてもらっている方かな」

 羊彦はそんな風に言う。


 昔、やんちゃしていた羊彦がフェレ人の面倒をみるようになって、すっかり真面目になってせっせと働いたのだという。あのままだったら、どうしようもない獣人になっていただろう。

「だから、僕が今まっとうに生活できるのはフェレ人のおかげでもあるかな」

 こんなに穏やかでおっとりしているのに、昔は「荒れていた」のだ。

 でも、落ち着いて仕事を探そうとしたとき、冒険者になれる力はなかった。羊族だから、魔獣と戦う力はないのだという。


 なんとか潜り込むことができた工房では、自分よりも若い徒弟に混じって働くのはさぞかし決まりの悪いことだっただろう。それでもあきらめずに継続し、今や親方も認める職人になったのだ。

「コツコツ、もくもくとやるのは性に合うんだよ。工房で働くのはほとんど羊族だし」


 獣人たちは親を失えば、とたんに立ち行かなくなる。だから、どんなにひどい親でも、独り立ちするまでは親に服従しているしかない。

 羊彦も親が離婚、再婚していろいろあった。それでも、自分はもう大きい。フェレ人は小さいのに、耐えている。自分はなにをやっているのだ。そして、身にしみてわかる。自分以外の存在を養う難しさを。


 にゃん太は自分の境遇を顧みる。両親や姉だけでなく、理解ある友だちもおり、じいちゃんやアルルーンという師がいる。

 きっと、羊彦にはフェレ人こそが原動力となったのだ。そして、フェレ人にとっても羊彦は家族であり、導く者であるのだ。


「俺の方こそ感謝しているよ。兄さんがいなければ、今ごろどこかでの垂れ死んでいただろうからさ」

 フェレ人はさらりと感謝の言葉を口にする。若い時分特有の照れや反発とは無縁の様子だ。冒険者特有の、その時その機会を逃せば、次に巡り合うのはいつになるか分からないと言う感性からくるからかもしれない。


「仲が良い兄弟ですね」

 ハム助は種族が違う、家族ではない獣人が幼い獣人を育てたという話を聞いて、つぶらな目を潤ませている。


「行き過ぎた愛情表現ってのには慣れているから、安心してくれ」

 にゃん太の父親がたま絵とにゃん太を可愛がるエピソードをケン太が面白おかしく話す。なんとフェレ人は父を知っているという。

「にい也さんは猫族でもトップクラスの強い冒険者ですから」

「父ちゃん、そんなにすごいのかあ」

 小さいころ、うっかり目の前でゆらゆらする父の尾に噛みついたことがあったが、怒られることはなかった。人族の錬金術師の工房に通うにゃん太を心配したものの、最終的には錬金術師になることを応援してくれたやさしい父だ。

「まあ、にゃん太の前ではでれっでれだからな。分からないだろうな」

 ケン太はとっくの昔に知っていたらしい。


 そんな話をする最中にも、羊彦は回し車の糸紡ぎ機を組み立てし終わった。ハム助は立派な回し車に目が釘付けだ。早く使ってみたいと、うずうずしている。

 試用してみて、微調整をするという羊彦に、きちんと納得のいくものを納品しようという気概を感じて、良い職人を紹介してもらえたと内心で熊五郎に感謝した。


 からからから、と軽快な音をたててハム助が夢中で車を回す。きったん、きったん、というおずおずとした音からきぃきぃとリズミカルな音に変わり、勢いよく糸が紡がれる。なお、綿も持ってきたという念の入れようだ。


「動きに違和感はありますか?」

「いいえ、いいえっ! とても良いです」

 羊彦に、ハム助が浮き浮きと答える。

「うん、スムーズに糸も紡げているし、良いね、この機械」

「ハム助さん、切りの良いところで休憩しないと、疲れちゃうよ」

 にゃん太とケン太が糸巻き機を覗き込む傍らで、たま絵が羊彦にていねいに礼を言い、代金の後金を支払う。


 食べるのが好きだという羊彦にハーブクッキーやハーブティを渡し、見送った。別れ際にフェレ人に獣人の錬金術工房の活躍を楽しみにしていると言われた。

「ありがとう。フェレ人さんも、冒険者はいろいろ危険もあると思うから気を付けて。あ、そうだ。俺、回復薬や解毒薬のきつい臭いをなんとかしようと思っているんだ」

「え、それはありがたいですね! フェレット族も臭いに敏感で」

 羊彦の方が食いついた。言葉遣いも丁寧になるくらいの力の入り様だ。

「大丈夫だよ、兄さん。薬が必要なんだったら、臭いくらい我慢できる」

「そうは言ってもなあ」

 その後、羊彦は傷を負ったら我慢せずにすぐに薬を使うんだぞと諭し、はいはい、とフェレ人にいなされながら帰って行った。


 その後ろ姿を見送りつつ、にゃん太はとなりのたま絵に聞いた。

「それで、姉ちゃん、糸紡ぎをしてどうするんだ?」

「それなんだけれどね、にゃん太、新しい人を入れる気はない?」

 たま絵が言うのに、にゃん太は首をひねる。

「そうだなあ。でも、ハム助さんを住み込みで雇ったばかりだし、ケン太も姉ちゃんも居ついちゃっているし、ちょっと手狭になって来ているからなあ」

「そうなの? まあ、通いでも良いかもしれないけれど、機織り機はここに置く必要があるわね。大きくて場所を取るし、騒音もそれなりにあるから」

「機織り機? 糸紡ぎ機は発注してそれは頼まないのかと思っていたけれど、もう心当たりがあったのか」

 なるほど、それで機織り機は発注しなかったのだ。

「そうなのよ。機織り職人込みでね」

「どんな人?」

「あんたも知っているでしょう? 同じ猫族のみい子さんよ」

 どんがらぴっしゃん。青天の霹靂へきれきがにゃん太を直撃した。





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