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08.絶対に不可能なのだ


そもそも身長が高くてイケメンで包容力があって、家族を大切にして、思いやりがあって、いつも明るくて笑顔が爽やかで、スポーツ万能で、頭が良くて、お金持ちで、海のように広い心で優しく見守ってくれる一途で男らしい素敵な高スペックな男性など、この世の中に存在する訳がないのだ。


全条件を満たすことなど、絶対に不可能。

ニヤリと笑いそうになるのを必死に堪えていた。

そして恐らく『今の』ダリルとは真逆なタイプだ。

ポカンと口を開けて此方を見ている。

きっと『この令嬢は私の手に負えない』とびびっている事だろう。


(大成功よ……!)


ただ理想を語っただけで、決してダリルを否定した訳ではない。

少し我儘に振るまい「気弱なお前にはわたくしの相手は無理だろう?無理だろう?」と見えない圧を掛ける。


(我ながら機転が利いた良い作戦だわ)


ダリルは俯きながらも何かを考え込んでいるように見えたが、作戦が成功した事に気分は高揚していた。


「それにダリル殿下は将来、素敵な御令嬢と恋に落ちますわ! 学園とかで! わたくしはそんな予感が致します。きっとそこで素晴らしい出会いがあると思うのです!」

「学園……?」

「お互い頑張って運命の相手を見つけましょうね!」


そう言って、有無を言わせぬ笑顔を作る。

必殺『お前は完全に眼中にないからサヨナラ……でもちゃんとお前の幸せも願ってるからな』という悪い印象を与えずに自分の意見を押し通す最高の作戦である。

ここは完全にトリニティペースだろう。

場を掴んだトリニティに怖いものなどない。

あとは適当に会話を繋いで、はいサヨナラだ。

幸い、ダリルが此方に深く興味を持っている様子はない。

ただ偶々、好きなものが一致してしまったというだけで……。

優雅に紅茶を飲みながら微笑んでいた。

もう完全に勝った気分で居た為、何も考えずに場を繋ぐ為に口を開く。


「ダリル殿下の好きなタイプは、どんな方なのですか?」


そう問い掛けると、ほんのりと頬を染めるダリルはモジモジと恥じらう姿は愛らしく、トリニティ並みに天使である。

天敵でなければ近くで愛でたいほどだ。

若い頃は俺様なドエス系男子に引っ張ってってもらうことが好きだったが、社会人になってからは癒し重視で可愛い系美少年が大好物であった。

本当はダリルを可愛がりたくて仕方ない。


「……私は一緒に居て楽しい方が、いいです」


一緒にいて楽しい方と聞いて、ふとヒロインの顔を思い出す。

ケリーデータによればダリルのタイプは清楚で大人しいと言っていた。

いかにもヒロインがそのままダリルのタイプっぽいが、楽しい方が好きなのだろうか。

そんなことはどうでもいいかと受け流しつつ、ダリルの現状を探る。


「他の婚約者候補の方には会いまして?」

「はい、トリニティ様が最後です」

「そうなのですね! 誰か気になる方はいらっしゃいましたか?」


まるで親戚の子の恋愛を野次馬するおばちゃんの気分である。


「あまりピンと来る方はいなくて」

「あらまぁ……」


心の中でドデカい舌打ちをかます。

『ダリルに気に入られたいなら、もっと本気にならんかいっ!』と喝を入れたい気分だ。

トリニティがダリルの婚約者だった時には、様々な手を使って他の婚約者候補を蹴落としたのだが、今回だけは他の令嬢達に気合いを入れて欲しいものである。

そして他の御令嬢が強く出れないのはマーベルの視線の所為だと思わずにはいられない。


「ダリル殿下にぴったりの素晴らしい方と一緒になれるといいですわね」

「あ……はい」


シュンとするダリルの姿。

嫌な予感がするが、違うと言い聞かせよう。

そんな時、何故かダリルの後ろにいるマーベルからこれでもかという射るような眼差しが突き刺さりスッと視線を離す。


(なんで……? 何もしてないよね……!?)


しかしこんなものは鬼上司のプレッシャーに比べると、どうってことはない。

 

「ダリル殿下、そろそろ……」

「ぁ……」


マーベルがダリルに耳打ちしながら帰るように促している。


(はぁ……やっと終わった)


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