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03. 直前に迫るラスボスの影


ダリルにスッパリと嫌われるのはどうだろうか。

変装して姿を隠す。それとも他の令息と婚約してしまう。

これはリスクが高い選択だろう。王族に嫌われるなんて以ての外だ。

フローレス家に迷惑を掛けて住むところが無くなるのは嫌だ。

そうなってくると興味を持たれない事が一番いいのではないだろうか。

ダリルが嫌いそうな令嬢を演じればトリニティへの興味を失うだろうか。


(それが一番確実な方法かもしれないわ……!)


そうすればダリルも誰か他の令嬢と婚約して、その子が悪役令嬢としてヒロインの前に立ち塞がるのかもしれないが、それはそれで頑張って頂こう。

将来ダリルの婚約者になる令嬢には申し訳ないが、こうなってしまった以上折角手に入れた新しい人生……当て馬になる気は更々ない。

物語からトリニティが退いた所で、勝手に話が進んでいくのか、巻き込まれていくのかシナリオが変わるのかはまだ分からない。

けれど悪役令嬢が悪役として立ち塞がらなければならないというルールはない。

鏡に映る天使のようなトリニティに心の中で問いかける。


(金持ちに嫁いで優雅に暮らす……それが一番幸せだと思いませんか?)


トリニティ、マジで天使である。

ぷーっと頬を膨らませる姿が何とも様になる。

この容姿を活かせば、どこの場所でも無双出来ること間違いなしである。


ーーートントンッ


そんな事を考えているとドアを叩く音がして返事をすると、一人の侍女が部屋の中へと入ってくる。

フローレス家で侍女をしているケリーである。彼女の仕草や言動は何故か全てがあざとい。

恐らくトリニティはケリーからあざとさと要領の良さを学んだのだろう。

バインバインと豊満な胸を揺らしているのだが、わざとなのか天然なのかは分からない。

あまりの迫力に、ごくりと生唾を飲み込んだ。

成長してもトリニティはツルツルでペタペタだというのに羨ましいではないか。


そんなケリーはトリニティが学園に行く頃には、もう側には居ないのだ。

なんと三十歳以上年上の恐ろしい富豪の男性に見染められて嫁いでいった。

確かにケリーは女性には嫌われそうだが、男受けは抜群に良さそうである。

富豪の元に嫁げたのも納得だ。

その時に「すげぇ侍女が居るもんだ」と思ったことをたった今、思い出した。

それに、ぶりっ子で巨乳の侍女はなかなかに珍しい。


「お嬢様はケリーにとっての宝物です」

「ケリーがお嬢様を幸せにしてあげますから」


思い出してみると、ケリーはぶりっ子なだけではなく、愛情深くトリニティに尽くしている。


(こんなに良い環境にいたトリニティは何故あんな事に……)


ダリルに近付く異性を引き剥がす為に手段は選ばなかった。

そんな事をしなければ、トリニティは普通に王妃になれていただろうに。

そうなってしまえばゲームが進まないので仕方ないのだが、トリニティだって、幸せな人生を歩めていたかもしれないのに勿体ない限りである。

そしてケリーが側を離れたことをキッカケにトリニティは暴走を始める。

果たしてケリーの存在が良い影響を与えたのか、悪い影響を与えたのかは分からないが、トリニティはあざと可愛い悪役令嬢になったのだ。


「さぁさぁトリニティ様、準備を致しましょう」

「え……?」

「今日はダリル殿下との初めての顔合わせですよね?」

「な、なっ、何ですって!?」


転生早々、身近に迫るラスボスの影。

これでは作戦を練ることも、情報を集める事も不可能である。

せめて一日でも余裕があれば状況は違っていただろう。


(今までの経験を生かして、この場を乗り切る方法を考えるのよ!)


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