表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/71

19.どうしてこんなに溺愛されているのだろう

トリニティは天使のような笑顔を向けて毎日毎日飽きもせずに迫って来る。

勿論、嬉しくもあるのだが、あまりにも熱烈なアピールに恥ずかしくなって、次第に顔が赤くなるのを感じていた。


「ーーーンッ!」

「!?」

「ケリー、今の聞いたッ!?」

「はいっ! バッチリです。お嬢様」

「「可愛い~」」


トリニティの侍女、ケリーは天然なのか作りものなのかは分からないが、時折理解不能な動きをする。

しかしトリニティはケリーに絶対の信頼を寄せているようだ。


「あらまぁ、羨ましいわ! わたくしも入れて頂戴な」


イザベラ・フローレス、新しい母親であり、とにかく心配になる程にトリニティを溺愛しているが、自分も同じように可愛がっている。

「コンラッドちゃん、今日も最高に可愛いわ」が、イザベラの最近の口癖である。


「おや? 何やら楽しそうじゃないか! 私も入れてくれ」


マーク・フローレスは家の中では子供達を溺愛する普通の……少し普通ではないかもしれない父である。

しかし一歩外に出れば、その凛々しさと仕事をバリバリとこなす姿に憧れてしまう。

威厳ある外の姿とは違い、屋敷の中ではトリニティとコンラッドが仲良く遊ぶ姿を見てデレデレのデレである。

そしてトリニティ・フローレス。

さすがイザベラとマークの娘というだけあり、溺愛力がとてつもなく高い。


侍女のケリーと共に、溺れてしまいそうな程の愛をくれるのだ。

そんなトリニティは『エルナンデス王国の天使』と呼ばれる程に愛らしいのだが、コンラッドを愛でるのに忙しいのか自分の価値をまるで分かっていない。

そしてフローレス家の三人は、自分を中心に団子のようにギュウギュウになって抱きしめ合っていた。

ケリーが嬉しそうに此方を見ている。

想像していた斜め上をいくフローレス家……。

そんな人達に囲まれながら思っていた。


(どうしてこんなに愛されているんだろう……)


幸せ過ぎる毎日は嬉しい反面、怖くなってしまう。

そんな不安を吹き飛ばすように、トリニティのブラコンっぷりは拍車をかけていく。

もう大分前からトリニティの溺愛を全面的に受け入れていた。

ずっと『お姉様』と呼んで欲しいと言われていたが恥ずかしくて呼べなかった。

つい先ほど、此方が折れるような形でやっと決着がついた。

自分の容姿は特段可愛い訳ではない。


トリニティの方こそ『可愛い』が似合うのではないだろうか。

本人は落ち着いた髪型やメイク、シンプルなドレスを好む為に全体的に中和されているが、トリニティに似合うドレスを着れば天使といっても過言ではない。

それにコンラッドは男であり『可愛い』とは令嬢達に使う言葉であって、男であるコンラッドには余り褒め言葉に感じなかった。

成長と共にコンラッドの体が大きくなり、声も低くなれば自然とその言葉は消えていくだろうが……。


「可愛い娘と息子に囲まれて幸せよね」

「ハハー! 本当だな。これでフローレス家も将来安泰だ」

「コンラッド、大丈夫よ? たとえコンラッドが大きくなってもわたくしがずっとずっと可愛がってあげるからね」

「トリニティお姉様……僕だって成長すれば男らしくなれます!」

「何言ってるの! コンラッドはずっと可愛いままなのよ?」


いくら成長したら男らしく変わると言っても、トリニティは何故か『可愛いまま』だと言い続けるのだ。

その理由はトリニティが大きくなった姿を知っているからであるが、そんな事も知らないコンラッドは心の中である決意をしていた。


(トリニティお姉様に、絶対にカッコいいって言ってもらうんだ……!)


小さな闘志に火がついた事も知らずに、トリニティはコンラッドのふわふわの毛を呑気に堪能していた。

そして、ここでもコンラッドを可愛がる事を我慢が出来なかった事によって、コンラッドの未来が変化することになるとは思わなかったトリニティなのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ