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12. 最短ルートに向けて順調に歩み始めていた筈だっ

「ウチのトリニティちゃんが一番じゃないなんて嫌よッ!」

「トリニティに釣り合うとびきりの良い男を探してやるから待っていなさいっ!」


マークとイザベラは気合十分で部屋から出て行った。

持つべきものはお金持ちで親バカな両親である。

数日後、何十枚もの肖像画を持ってきた。

両親にお礼を告げてから婚約者候補になりそうな人達を厳選していく。

生理的に受け付けない方は避けさせていただき、出来るだけ顔合わせする事になった。

勿論、向こう側にもトリニティの肖像画が送られており、顔合わせを断られることは無かった。

さすがトリニティのエンジェルフェイスは無敵である。


(はぁ……やっぱりこの顔に生まれ変われて最高だわ。トリニティまじで天使)


そして今日は鏡を見ながら、ケリーと共に顔合わせに行く為のドレスを入念に選んでいた。

何を着ても全てが可愛くなってしまうトリニティに感動するばかりだ。

トリニティの魅力を最大限活かせるように準備をしていた。


(年上がいいかしら……? あんまりこちらに興味持ってなくて好きにさせてくれる素敵な旦那様をみつけるのよ!)


勿論、未来の婚約者を見繕う為でもあり、少しでも気に入ってもらう為にケリーと共に作戦会議を繰り返していた。

あれから彼女との仲は良好で、ゲームの中とはまた違った関係性を築いている。

そんな時、マークとイザベラに呼び出されて、歌い出したい気持ちを抑えながら部屋に向かっていた。

そろそろ一人目の顔合わせ予定の人が到着した頃だろうか。

最短ルートに向けて順調に歩み始めたトリニティの未来は希望に満ち溢れていた……筈だった。


「おはよう御座います! お父様、お母様! もう一人目の方がいらっしゃったのですか!? わたくしは準備万端なので、直ぐにお通しして下さいませッ」


しかし此方のテンションとは真逆で、珍しくマークとイザベラの雰囲気は暗く表情は固くなり強張っているようだ。

空気は明らかに緊張していた。二人の言葉を待っていると……。


「お、ぉ、おはようトリ、トリニテ、ニティ……」

「トリニティちゃん、きょ、今日も可愛いわねぇ! フフッ、ウフフ」


いつもは違ってトリニティを褒める言葉にキレがない。

それに砂糖のように甘い二人の空気が今は塩辛く感じてしまう。


「どうされたのですか、マークお父様?」

「ふ、ふむ……」

「イザベラお母様……?」

「……うふ、ふ」


何故か不自然な程に返答を渋る二人に首を傾げた。

(怪しい……)

そう思って目を細めながら様子を伺っていた。


「トリニティ、あのー……あれだ」

「??」

「か、顔合わせの件だがな……」


マークが気不味そうに視線を逸らした。


「全て、は……っ、はっ」

「は……?」

「……白紙に、なってしまってな」

「えぇっ!? どうしてですか!?」


『白紙』その言葉に愕然としていた。

もう日取りを決めて、後は会うだけだというのに一体何が起こったのだろうか。


「わたくしが……気に入らなかったのですか?」

「何言っているのトリニティちゃん! うちのトリニティちゃんは天からの贈り物なのよ!? 気に入らないなんていう奴がいたらわたくしがピーーを踏み潰してやるわ!」

「私もだ! トリニティの為だったらそんな野蛮な奴らはピーーーーしてやるからなッ」


イザベラとマークの親バカ発言は一先ず置いておこう。

それにトリニティの可愛さはトリニティになった自分が一番良く知っている。

しかし今は、それどころではない。

目を細めて二人が何を考えているのかを探っていた。

このままではトリニティの幸せへの未来に向けての第一歩が進まなくなってしまう。


「…………では、何故ですか?」

「「……」」

「お父様、お母様……! 理由を教えてください!!」

 「そっ、そうだ! ケリー、トリニティが大好きな可愛いケーキがあるだろう? 一緒に食べようか」

「そっ、そうね! トリニティちゃん、わたくしと本を買いに行かない? 貴女がずっと欲しがっていた恋愛小説があったでしょう?」


以前ならばトリニティが喜んで食いつきそうな内容ではあるが、中身は子供ではないので物で釣られることはない。

じっとりとした視線で二人を見つめていると、いつもと違うトリニティの反応に焦りを見せるマークとイザベラ。


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