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10.ケリーside

ケリーがフローレス家の侍女となった経緯……それはフローレス家の当主であるマークと、その妻であるイザベラが雨の日に道端に倒れていたケリーを保護して、屋敷に連れて帰ってくれたからだった。

しかしケリーは自分の名前以外、全く記憶がなかった。

どこから来たのか、自分が何をしていたのか、何も覚えていなかったのだ。

不憫に思ったマークとイザベラはケリーを侍女として屋敷に置いてくれた。

フローレス家は愛に溢れていた。

二人は政略結婚にも関わらず、互いを尊重し合い大切に思っていた。


フローレス家がとても居心地が良く感じて、恩を返す為にも二人のために尽くしたいと思うようになった。

そんな中、マークとイザベラに子が産まれた。

それが『トリニティ』だった。

トリニティは天使のように可愛らしい容姿と声でフローレス家に光を与えた。


(トリニティ様は、マーク様とイザベラ様と共にケリーが御守り致します……!)


そんな思いでトリニティ付き侍女として働いていた。

彼女は純粋で素直で素晴らしい子供だった。

しかし、トリニティがダリルとの顔合わせをすると聞いて、胸が騒ついていた。

もし………トリニティがダリルと顔合わせをして、ダリルを好きになってしまったらと思うと、何か嫌なことが起きるような気がしたのだ。


(気の所為、きっと大丈夫……)


けれど不安は日に日に強まっていく。

トリニティに言ってみるものの「今まで育てて下さったお父様とお母様に恩返しがしたいの」と笑うだけで、聞く耳を持ってくれない。

トリニティは優しくて純粋過ぎるのだ。

マークとイザベラもそんなトリニティの言葉を聞いて喜んでいるようだった。


(ケリーがどうにかしなければ……!)


しかし何もできないまま、顔合わせ当日になってしまった。

まだチャンスがあるかもしれない。

ダリルの婚約者になって欲しくないと強く思うのだ。

意を決してトリニティの部屋を訪ねた時だった。

鏡の前にいるトリニティが此方を向いた。

どうにかして説得できないかと考えていたが、まさかの心変わりに驚くのと同時に嬉しくて堪らなかった。


「……今日のお嬢様はいつもと違いますね」

「そ、そんな事ないわ! それよりも聞いてケリー! わたくし、ケリーの言葉で気付いたの……ダリル殿下に嫁ぐ事だけが全てじゃないって」

「お嬢様……ケリーの言う事に耳を傾けて下さるのですか!?」

「えぇ、勿論」

「ケリーは感激です!」

「わたくしはケリーについて行くわ!」

「お嬢様……ッ!」


(お嬢様、急に心変わりをされてどうされたのでしょう……でも、とても安心します)


今日のトリニティはまるで別人のようであったが、ダリルとの関係に消極的な姿を見て、ホッと息を吐き出した。

顔合わせの際、物凄く嫌なものを感じた。

そして、その男を鋭く睨み付けた。

トリニティに嫌な視線を向ける『マーベル』を必死に後ろから牽制する。


(お嬢様に何かしたら、ケリーが許しませんからッ)


幸い、トリニティもマーベルを警戒しているようだった。

無事に顔合わせも終わり、トリニティはご機嫌だった。

ケリーは何もなかったことに胸を撫で下ろしたのだった。

一つだけ気になる事があるとすれば……。


「だってぇ……お嬢様ってば理想の相手が現れたら結婚するって言っていたじゃないですか?」

「……えぇ、だってそんな完璧な男が現れるわけないもの」

「でもケリーは、危ない予感がしたのです」


ダリルと結婚してはいけないと、そう強く思うのだ。

けれどトリニティは笑い飛ばすだけだった。

そしてマーベルが危ない存在だと認識しているトリニティに安堵していた。


(ケリーが絶対にお嬢様を守ってみせる!)


トリニティの笑顔を見ながらケリーはそう決意したのだった。



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