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親子の絆  作者: リサ
5/21

母の過去4

 これで美奈の過去編は終了です!



********************



早坂和也の容姿・・・・茶色がかった目

              少し癖のある茶髪

 それからは私は無事に学校に復帰した。そして無事に卒業し、女子高に進学した。


 女子高を選んだ理由は、あの事件以来どうしても異性に対しての恐怖心が抜けなかったからだ。大学は、共学を選んだ。このままじゃいけないと思い始めたからだ。

 大学では経済学を学んだ。そしてそこで、夫、早坂和也(はやさかかずや)と出会った。



 最初はからかわれているのだと思った。けれど彼は、常に私のテリトリーに1歩も入ってはこなかった。そんな彼に私もだんだんほだされていった。

 それから私たちは付き合うようになった。だけど私は彼自身を受け入れることが出来なかった。


 大学を卒業する前、和也にプロポーズをされた。私はその時、思い切ってあの事を話した。知らない男達に体を弄られたこと。そのせいで妊娠して子供を産んだこと。その子供を乳児院に捨てたこと。そのことで今でも男性は怖いこと。すべてを・・・・・。


 和也はそれでも待つと言ってくれた。私がいいのだと・・・・。


 そして私たちは結婚した。結婚式の日、和也は、



「美奈の心の整理がつくまで、俺は待ち続けるよ。一生。」



そう言って笑った。そうして私は早坂美奈になった。

 それから2人で喫茶店を経営した。それでもなかなか和也を受け入れられなかった。和也は、そんな私を見捨てずにずっと待っていてくれた。結婚式に宣言した言葉通りに。



 私が早坂美奈になってから10年。私はやっと和也を受け入れることが出来た。そしてその翌年に夏紀を授かった。


 けれど、夏紀がお腹の中にいる時和也が白血病を患っていることが分かった。しかも末期だった。


 和也の両親は、4年前に他界している。他に親戚もいなかった。親族による骨髄移植は不可能だった。私は血液型が合わなかったため、臓器提供はできなかった。

 病院の方でドナーを探してみるがあまり期待しないようにともいわれた。



 私は絶望した。もう子供は産まずに、和也の死とともに私も自殺しよう。そう思えるほどに・・・・。

 けれど、そんな私を和也が止めた。



「俺はできるだけ長く生き伸びる。だから、お前も生きてくれ。せっかく俺たちの愛の結晶がここにいるんだ。」



 そう言って私のおなかに触れた。私は和也の胸に縋りついて泣いた。


 和也が今にも消えてしまいそうで・・・・。まだ生まれてすらいない我が子を殺そうとした自分に絶望して・・・・・。私は泣き続けた。




 それからドナーが見つからないまま、出産の日が来た。


 和也は最初からずっと出産に立ち会って、生まれたばかりの夏紀を1番最初に抱いた。自分の方が病気で、体を起こしていることすらつらくなっているというのに。ずっと私の手を握って励ましてくれた。


 夏紀という名前も和也が考えた。夏のように明るくまっすぐに育ってほしいという意味だそうだ。

 そしてそれが、父親として娘に贈る最初で最後の贈り物だった。


 それから1か月後、和也は旅立った。



「俺はいつでも2人を見守ってる。そばにいるから。愛しているよ美奈、夏紀、湊君。」



 和也の最後の言葉だ。その言葉を胸に、夏紀の育児と喫茶店の経営をやってこられた。

 もうあんなに愛せる人は後にも先にもきっと現れない。



 それでも心残りなのは、湊に和也を合わせてあげられなかったことだ。乳児院や児童院では、子供のため、子供が誰の家族になったか、どこに住んでいるかは公開されない。特に親族には・・・・・。


 だから、今どこで何をしているかはわからない。私にできるのは湊が幸せであることを祈ることだけ。

 だからというわけではないが、私は湊にあてて手紙を毎月1日に書いている。どこに出すでもなくただずっと・・・・・。湊を『ゆりかごに』置き去りにしたあの日から・・・・。


 私が早坂になった時から和也も湊に手紙を書くようになった手紙を書くことは、和也が死んだ今でも変わらない私の月課となっている。



 生まれたばかりの我が子を1人にしてしまった私は、決していい母親ではない。けれど、湊を育てられなかったぶん。愛情をかけてあげられなかった分も、夏紀を育て上げなくては! そう思っていた。それなのに・・・・・・・・・。



「・・・・・・・お母さん・・・・。私・・・妊娠した・・・・。」



 私は・・・・・娘の変化に、気づいてあげることが出来なかった!!!


 最後までお読みいただきありがとうございます!

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