不審人物の正体
3週目いきます!
「・・・・・実はあの男、いえ、あの方、警視庁の松本潤警視正でして・・・・・。」
「警視正ですって!?」
坂口は驚きのあまり、後ろのパトカーに美奈がいるにもかかわらず叫んでしまった。
ここで坂口を攻めれる者はおそらくいないだろう。目の前の警察官も男の役職を聞いて、信じられず何度も聞き返してしまったほど驚いたのだから。
そもそも、警察が不審者として通報されたという事実だけでも驚きを通り越して呆れる案件ではあるのだが、その上通報されたのが警視正という坂口達からしたら雲の上の存在のような男だったのだ。
これで驚くなという方が無理な話だろう。
「わ、分かったわ。このことは私から彼女に話すからあなたたちは撤収の準備をして。」
「承知いたしました! 松本警視正はいかがいたしましょう。」
「事件性がないのであれば開放しても大丈夫だと思うわ。」
「はい。それでは撤収作業に取り掛かります。」
離れていく後輩を見送りながら坂口はそっと美奈の様子をうかがった。
一瞬窓越しに目があった気がしたが、すぐにそらされた。
坂口は小さく息をついた。
目が合った時、窓越しでも分かるぐらい美奈の顔色は悪かった。おそらく自分が叫んでしまった声が聞こえてしまったのだろう。
警察失格だな、と心の中で呟きながら坂口は通報された男の身元を知らせるために、パトカーに乗り込んだのだった。
「あ、あの。・・・・何かありましたか?」
坂口がパトカーに戻ると、おずおずといったように美奈は尋ねた。
坂口は改めて美奈の顔を見たが、やはり顔色はよくなかった。
「いえ、あなたが通報した男の素性がわかっただけです。その事でお話が。」
「は、はい!」
美奈は緊張のあまり身を固くした。その様子に坂口は安心させるように微笑んだ。
「大丈夫ですよ。詐欺グループや凶悪犯ではありませんでした。しかし、その・・・・・。」
坂口はそこで後輩同様口籠ってしまった。
美奈はもしかしてとんでもない人を通報してしまったのではと顔をますます青ざめさせた。
「あ、ええと心配しないでください! 美奈さんが通報された男は警察の警視正という役職についている方でして。調べてみた所、彼に犯罪を犯すようなそぶりも準備もしていなかったので危険性なしという判断となりました。」
「そ、そうですか。ありがとうございます。」
坂口から説明された美奈は、違った意味で固まってしまった。そして、駆けつけてくれた警察の人達に、とてつもなく申し訳なくなってしまった。警視正がどのくらいの階級なのかよく知らないが、よりにもよって警察に同じ警察の事情聴取させてしまったのだ。
「あの、・・・・・・大変申し訳ありませんでした。勘違いをしてしまった・・・・・。」
「あ、気にしないでください。いきなり訪ねたこちらにも非がありますから。」
警察を見送った美奈は、勘違いで通報してしまった湊の兄を名乗る男に深く頭を下げた。しかし、帰ってきたのは意外にも謝罪の言葉だった。
てっきり攻めるような言葉が返ってくると思っていた美奈は驚いてしまった。
その後、次の日曜日ここでと言って、男は駅の近くの喫茶店の紹介カードを渡して去っていった。
家に戻ると、夏紀が心配そうに美奈を見ていた。
美奈はとっさにもらった喫茶店の紹介カードを後ろに隠し、安心させるように笑った。
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