早瀬 湊2
※いじめ・出生による差別発言がございます。この物語フィクションです。実際とは大きく異なるところが多々あります。ご了承ください。
苦手な方はご注意ください。
奏→湊に書き直しました。
それからの学校生活は悲惨の一言だった。父さんと母さんが浮気して生まれた。という間違った認識はそのうちの日に学校中を駆け回った。それからいわゆるいじめと言うものが始まった。
俺や匠が何かにつけ仲間外れにされた。物を隠されたり汚されたりした。兄さんや姉さんたちも同じような目にあっているようだった。授業参観などの保護者が来るような学校行事でも、憐みの視線や蔑んだようなどこか小馬鹿にしたような視線を送られた。
幸い、先生たちは常識人だったようで、いじめを見つけるたびに注意したり叱ったりして何かとかばってくれた。けれど、そのたびに逆恨みか、いじめがひどくなっていった。
学年が上がって弟や妹たちが入学してくると、みんないじめの対象になった。
それからは馬鹿にされないためにとにかく勉強を頑張って、少し家から離れてしまったが、私立の中学校に特待生として通うことが出来た。匠も一緒だ。
そこでもいじめられないようにとにかく勉強をした。そのおかげか、俺は腕利きの医者と呼ばれるようになり、匠は凄腕の弁護士になった。他の兄弟姉妹のほとんどは難関大学を出て今では分野は違うが第一線で働いている。
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あの後何件か居酒屋をはしごして、最終的に家に帰ってきたのはもう夜明けだった。夜明け前独特のひんやりとした空気と東雲色と紺色のグラデーションが、ぐちゃぐちゃだった感情を少し抑えてくれているように感じた。
「ただいま・・・・。」
当然帰ってくる返事はない。暗くシンとして冷たい空間を見ていると、一気に現実に引き戻された。
湊は玄関の扉の前で、ずるずると座り込んでしまった。ついさっきまで匠と飲んでいたのがどこか遠い世界のように感じられた。
頭の中を駆け巡るのはあの母子のことばかりだ。
親がどちらもいない湊にとって、親と呼べる血縁がすぐそばにいる夏紀はとても羨ましい存在だった。恵まれているとも思う。
もちろん家にいる父さんと母さん達にはたくさん愛してもらった。とても感謝している。けれど世間一般で言う血の繋がった親と一緒にいたいという思いも捨てきれないのだ。
虐められていた頃、父さんに聞いたことがある。俺は必要ない子なのかと。生まれてくるべきではなかったのではないか・・・・・と。
父さんは最初驚いたように目を見開いていたけれど、優しく笑って院長室にある仕事机の引き出しの中から、少し古びた茶封筒を取り出した。
「これは、湊がここを出る時にわたそうと思っていたんだけどね。」
受け取った茶封筒の中に数枚の1万円札と手紙が入っていた。
「読んでごらん。」
父さんに促されて手紙を読んだ。
『私の大切な子、早瀬湊へ』きれいな字でそう始まっていた手紙には、いろいろなことが書いてあった。
俺の母親は10代で俺を産んだらしい。父親が分からないけれど、俺を育てる決心をしたこと。けれど家には俺を養えるだけの金銭的、時間的余裕がなかったこと。このまま育てるよりは施設に入ったほうが俺のためになるのではと思い手放したことや、中に入っているお金はいざという時に使ってということが書かれていた。
文章から、母親は少なくとも俺を愛してくれてはいたんだと思う。でも、その手紙には、母親の名前が書かれていなかった。それに少しがっかりしたのを覚えている。
※いじめ・出生による差別発言がございます。この物語フィクションです。実際とは大きく異なるところが多々あります。ご了承ください。
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