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親子の絆  作者: リサ
11/21

鬱憤

11話と13話が入れ違いで投稿していたので、直しました。

 お母さんに叩かれた。そんなこと、今まで1回もなかった。お母さんがあたしに手を挙げる事なんて。

 それだけ怒ったってことだろうけど、なんで怒られたのかわけがわからなかった。

 

 

 夏紀は何も考えられなくなり、衝動的に部屋を飛び出していく当てもなくトボトボ病院内をぶらついた。

 当然だが、病院内にはいろいろな人がいた。苦しそうにせき込む人や松葉杖をついている人。忙しそうに駆け回る看護師さんに扉が開いた時にちらっと見える患者を診ている医者。そして、お腹の大きな妊婦と思われる女性。

 

 その妊婦の隣には、夫と思われる男がいた。

 2人はとても嬉しそうに大きく膨らんだお腹に手を当てて笑っていた。

 夏紀は思わず小さく膨らんだ自分のお腹に手を当てた。

 

 

 ここに赤ちゃんがいるのだ。決して望んだ存在じゃなかった。妊娠してから、思うように体がゆうことを聞かなくて、ずっと、イライラしていたし、嫌悪感すら持っていた。けれど、それと同時にあの夫婦がとても羨ましく眩しく映った。

 

 不意に、その妊婦さんと目が合った。その人は夏紀に向かってにっこり笑って手招きした。

 そこで夏紀はやっと自分がずっとその人たちを見ていたことに気づいた。

 そのことに恥ずかしくなって、思わずその場から走って逃げて子あった。

 

 

 途中で病院内で走ってはいけないと言われた気がしたが、それを無視して走って走って人気のない中庭にやってきた。

 夏紀は中庭にあった花壇に腰かけた。丁度隣にある気が影を作っていて風が涼しかった。

 花壇に腰かけた途端、一気に体が重くなった気がした。そのまま心地よい風に夏紀は目を閉じた。

 

 

「ここにいたのね。」

 

 

 うつらうつらしていると、女の人の声が聞こえた。目を開けると、さっき夏紀が見ていた妊婦が大きなおなかを抱えて目の前に立っていた。

 

 

「隣座るね。」

 

 

 そう言うとよいしょっと妊婦は夏紀の隣に腰を下ろした。

 

 

「わたしね、幸音っていうの。あなたは?」

「夏紀・・・・・です。」

「ごめんね。いきなりで驚いたでしょ。私たちを見ていたあなたがとても思いつめた表情をしていたから、気になって追いかけてきちゃったの。」

 

 

 ほっぺたを真っ赤に腫らしてもいたしね。と幸音は優しく笑った。

 そんなに思いつめた顔をしていたのかな。それに顔も・・・・。

 

 夏紀は少し驚いて叩かれた頬に手を当てた。

 

 

「私ね、こう見えてもカウンセリングの仕事をしているの。何か悩み事があったら聞くよ。」

 

 

 幸音は優しくいった。

 その何もかもをいやすような声音に、夏紀はぽつりぽつりと自分が妊娠したことやその相手に捨てられたこと、母親に叩かれた経緯などを話した。

 

 

「・・・・んで。なんであたしがこんな目に合わなきゃいけないの!? 好きで子供出来たんじゃないし! そもそもまだ子供なんて欲しくなかったし! 避妊って何!? しかも堕ろせないし手術は嫌だし!! 体いうこと聞かないし、お母さんには怒られる! もうどうしろって言うのよ!? こんなの望んでたわけじゃない!?!?」

 

 

 幸音に話しているうちに、だんだんと涙が出てきた。話せば話すほど、どんどん自分がみじめになっていくような気がした。

 最後の方はもう叫んでいた。

 

 その間、幸音は微笑んで夏紀の話を聞いていた。夏紀の話を一切さえぎらなかった。

 そのおかげか、夏紀は自分の中にたまっているものをどんどん吐き出すことが出来た。

 

 

 なんであたしだけ? こんなにつらいのに、こんなに苦しいのに、なんで誰も分かってくれないの? 気づいてくれないの? お母さんにも怒られるし・・・・もう嫌・・・。

 

 今まで溜まっていたものが次から次へと言葉になってこぼれ落ちていった。自分では自覚していなかったことまですべて吐き出すことが出来た。

 

 

「うん。それは辛いね。」

「!? あなたに何が!!」

「私ね、施設育ちなの。だから妊娠した時はとても不安だったの。親に捨てられた私が親と同じにならない保証なんてどこにもないから・・・・・。」

 

 

 そう言った幸音の横顔は、さっきまでの優しげなほほえみは消えてどこか愁いを帯びていた。そんな幸音に夏紀は何も言えなくなってしまった。

 そのまま2人は黙ったまま座っていた。

 どれくらいそうしていたのか、気づいたら1時間近くたっていた。


 ふと幸音は顔を上げた。その先には病院内で幸音と一緒にいた男の人が中庭の入り口付近に立っていた。

 

 

「お迎えが来ちゃったから私は行くね。それと・・・・」

 

 

 幸音はなつみの頭を優しく撫でた。

 

 

「どんなに望まなくても、1度お母さんとよく話してみるといいと思うよ?」

 

 

 幸音はそう言うと、それじゃあねと言って男の人のところへ行ってしまった。

 2人寄りそって院内に戻っていく後姿を夏紀はどこか羨ましく思った。


最後までお読みいただきありがとうごさいます!


感想お待ちしております。

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