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第32話 (レン)

 怪物が這った後は、洪水でも起きたように荒れ放題だ。

 ここがなにもない荒野だからこの程度で済んでいるけど、人里に降りてしまったら大惨事だ。

 なんとか、ミュウを止めないと。大丈夫。僕にはそれができるはずだ。

 ドゴッ、ドゴッ、と重たい音がする。そっちの方へ進んで行くと、一号と二号が取っ組み合って喧嘩しているところだった。その近くで、クリーチャーが混ざりたそうにチョロチョロしている。

「おいレン! なんだあれは!」

 一号は、突如現れた怪物に動揺しているようだった。

 怪物が、地面をひっつかんで岩盤を持ち上げ、一号に向かって投げつけた。一号は避けようと飛びすさったけど、砕けた破片までは避け切れずに人の頭くらいある岩が腹部に直撃した。

「ぐっ……」

「うー!」

 駆けよろうとするクリーチャーを、一号は怒鳴りつけた。

「来るな! 逃げろ!」

 無数の目が、ぎょろっとこっちを見据えている。

 暴風でも吹いているような轟音が響いて、頭が揺らされているような心地になる。それは、あの怪物の叫び声だ。

 屍肉の塊が意志を持って暴れている。

「なんなんだよ、あれ」

「あれはお前だよ」

 ヘラっと笑いながら、二号は言った。なるほど、二号は知っているらしい。

「どういう意味だ!」

 動揺して一号が怒鳴る。

「ミュウから聞いたのかい?」

「ああ。そうだよ。あんたがいらないって捨てたから、オレたちが拾うことにしたの」

 隠してたわけじゃないんだけど、話すのは少し、抵抗がある。

「一号、君の前にね、もう一人いたんだ。君を作ろうとして失敗して、手が付けられない怪物になってしまった。どうしようもなくて、火炎瓶を食べさせて内臓を壊して、殺した」

 怪物は手当たり次第に周囲のものを破壊しながら、学院の方へ向かっていく。

 あの時、このままじゃ海の街が全壊するからって、まだ名前もついていなかった子を殺した。一号や二号が生まれた後、便宜上零号と呼ぶようになった災厄の化身は、話題に出すのを避けたために、最初からいなかったようだった。

 仕方がなかった。あの時はそう思ったけど、今となっては後悔している。

 ミライはクリーチャーを見事助けて見せた。この子も、もしかしたら助けられたかもしれないのに、切り捨ててしまった。

「今なら、捨てずに済むかな」

 僕は、できることなら僕の母親とは違う選択肢を取りたい。

 誰かを切り捨てるようなことは、もうしたくない。

「うん。きっとできるよ」

 固く握りしめた僕の手に、小さい手のひらが重ねられた。ミライがこっちを見上げている。

「手伝うよ。大丈夫、やり方はわかってる」

「ありがとう」

 握った火の石に向けて念じる。周囲に炎が巻き起こって、みるみるうちに零号を飲み込んでいく。

 ミライは走って炎の中に飛び込んで行った。

「邪魔すんな!」

 強い衝撃を頬に感じて、体が弾き飛ばされる。二号に殴られたんだと遅れて気づいた。

「君はいいのか。ミュウが怪物になってしまっても」

「いいに決まってる。ミュウちゃんは、かわいい女の子のフリにはもう飽き飽きしてるんだってさ」

 二号は僕の手から火の石を奪い取ろうと掴みかかってきた。

 それをかわしながら、怪物の方を見る。火力が足りていない。全部を分解するほどの火力には程遠い。

「くそっ……」

「あんたさあ、今更偉そうに文句垂れるわけ? どうせ助けてくれないくせにさあ!」

 二号が恨みがましい目でこっちを見ている。

「今度こそ助けたいんだ! 嘘じゃない!」

 ミュウは炎に巻かれてもがきながら手足を振り回し、無差別に破壊を振りまいている。

 視界の隅で、ジンがクリーチャーを連れて避難しているのが見えた。気の回る子だ。そのまま逃げてくれるなら安心だ。

 叫び声が荒野に響く。身をよじらせて、怪物はもがき苦しんでいる。早く、なんとかしないと……。

「あの時と同じことをするんだな?」

 背後から、一号が聞いた。僕が頷くと、固く握った僕の手の上に一号が手を重ねた。

「二号。信じてくれ」

 途端に炎が勢いを増して、天を突かんばかりの勢いで燃え盛り始めた。

 これなら、いける……!。


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