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とある少数民族の口伝

 この世の全てのものは、火、水、風、土のいずれかの要素を含み、これらの組み合わせによって姿を変える。

 そして、四つそれぞれには、それらを司る精霊がいるという。

 火の精霊サラマンダーは、大蜥蜴の姿をしている。

 意思の疎通は不可能であり、一度暴れ始めれば全てを焼き尽くし滅ぼしてしまう。しかし、うまく付き合うことができれば繁栄をもたらすこともまた事実。炎なくして人が生きるのは困難だ。

 水の精霊ウンディーネは嫉妬深い女の姿をしている。

 その口づけは呼吸を奪い、死をもたらす。からっぽの体で生きているが、愛を知ることでその身に魂を宿す。しかし、ひとたび愛した者に裏切られれば必ずや報復に出なければならない。生き物に命を与えるが、水を与えられない者には死あるのみ。

 風の精霊シルフは自由な少女の姿をしている。

 その身を捉えることは絶対にできず、追いかけた先には何もない。どこへ向かっているのかは、彼女自身も知りはしないだろう。鳥を乗せ、種子を運ぶ風は、そっと人々を助けている。

 土の精霊ノームは、腰の曲がった老人の姿をしている。

 気難しく少しのことで臍を曲げるため、上手に付き合うのは困難だ。多くの恵みを皆に与えるが、それは多くを彼に握られているということに他ならない。だが、案ずることはない。彼は全てを受け入れる、よき隣人でもある。全てのものは土へと還るのだから。

 彼らは人の目には見えないが、どこにでもいるありふれた存在である。

 守護霊のように人に寄り添い、その者の運命を導く精霊もいる。むしろなんの精霊もついていない者の方が珍しい。

 ごくごく稀に、この四種類の精霊全ての加護を受ける者がいる。そういう者は、望むと望まざるとに関わらず、大きな流れの渦中に身を投じることとなる。人は、目に見えずともそこに集まる力を感じ取り、理由は分からずとも心を乱されるからだ。

 一番悲惨なのは、その者が錬金術師になった時だ。精霊の加護により、その者は、四つの要素の組み合わせを自由にでき、望むものをなんでも作れてしまう。

 人知を超えた力は災いを呼ぶ。行き過ぎた加護は、呪いと同義である。


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