3話 森で鍛錬
「お兄様!どちらへ行かれるんですか?」
昨日の小部屋の後は何事もなく終わった。
今日はいつもの鍛錬と古代魔法を試そうとこっそり出かけようとしたところで妹のユフィが破顔でトテトテとこちらに歩いてきて声をかけてきた。
「ちょっと散歩に出掛けるだけだよ」
「嘘です!お兄様はいつもユフィに内緒で、どこかへ出掛けるのです!ユフィも連れて行ってください!」
ユフィは父上のもう1人の側室の娘、僕とは異母兄妹だ。肌が白く、銀髪のセミロング、目がクリクリで将来有望なのが今からわかる。
しかしユフィは、なかなか6歳にして鋭いところがあるんだよね。将来僕との暗躍仲間にしたいくらいに有能だ。
「お兄様無視しないでください!ユフィはもう少しお兄様と遊びたいです!」
「ハハッ、ごめん。ユフィが可愛くてボーッとしてたよ。でもユフィはこれから家庭教師とお勉強だろ?」
「むぅ、分かりました。でも、今度は連れて行ってくださいね!」
と言って顔を赤らめつつも、プンスカとしながら自室に帰って行った。
△△△
王都の郊外に位置するナヌーティアの森にやってきた。森の最奥にはエルフの里があるらしいが、最奥に近づくほど強い魔物が増えるので人はそもそも近づけない。
ちなみにエルフは長寿でかつ魔法に長けているせいか人間を見下している節があるらしい。しかし見下しているが人間とエルフの関わりが全く無いわけでもない。たまにエルフが王都にいるのを見た事があるし、過去に人間がエルフの里に行ったこともあるらしい。
まぁ僕には関係無いんですけどね......。
そんなことを考えながら魔力探知を広げる。基本的に人間もモンスターも魔力が僅かに漏れ出ている。漏れ出ている魔力の大きさでおおよその強さが分かるわけだけど、高位の魔術師ともなると限りなく抑えて隠密を行うこともある。
「あっちにゴブリンか......」
昨日小部屋で使えそうな古代魔術は覚えてきたので試しに使ってみるか......。魔法とは、魔導書を読んで理論を理解し、その属性の適性がある限りにおいて使用できる。
ちなみに攻撃魔法の基本属性は4大元素の火、水、土、風に加えて少しレアな氷、雷がある。僕の適性魔法は、火と氷と雷だ。一般人は適性1つ、魔術師になると2つ持ちが多い。さらに王都直轄の宮廷魔術師の上位になると3つ持ちがいるとされている。ちなみに僕は3属性適性があることを隠している。能ある鷹は爪を隠すって言うし、何より暗躍してるぽい感じがするからね!
右手をゴブリンの方に向け
「古・サンダーボール」バチッ
黒い雷が一直線にゴブリンに飛んでいく。
「キシャァァァ」バチバチバチバチ
ゴブリンが真っ黒焦げになって死に絶えた......。いや、強すぎでしょ!?今までゴブリン相手にサンダーボール3発は必要だったのに。これが古代魔法......雷が黒いことってあるんだね。
ちなみに火属性は森燃やしたら、エルフが怒りそうだからやめた。




