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転生悪役令嬢は闇の秘密結社を作る  作者: Crosis


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貴女も、娘さんも救う

最早私にその甘い言葉を断るという判断は無かった。


どうせこの人が止めてくれなければ私はさっき死んでいたのである。


断る理由など無い。


一パーセントでもこの地獄の毎日から抜け出せる可能性があるのならばもう何でも良い。


だって、それがもう無理な事くらい私が、私の身体が、私の脳が理解しているのだから。


最後くらいそんな夢を見ても良いではないか。


「お願いします」


そう思うと自然と言葉は口から紡ぎ出されていた。


私の人生って一体何だったのだろうか?


せめて娘だけは、そう思って今まで生きて来たのだけれど結局それすらも叶わぬ夢であった。


これから娘には厳しい現実が待ち受けている事であろう。


そう思うと、気が付けば私は泣き尽くして枯れ果てたと思っていた涙が一滴だけ溢れて来た。


「ですが、娘だけは……っ、娘だけはよろしくお願いしますっ!」

「当たり前です。むしろ娘さんだけでもダメです。娘さんの生みの親はこの世界で貴女だけなのですから」


これはただ哀れな私に口先だけの優しい言葉なのかもしれないし、恐らくそうであろう。


でも、それでもその言葉を聞けて私は少なからず安心したのであった。




そして馬車に乗せられ連れて行かれた場所は豪勢な御屋敷であった。


娘は見るもの全てに興味が湧くのか先程から目をキラキラとさせてはあっちへ行ってはこっちに行ってはと落ち着きが無い。


せっかくご好意により娘も一緒に連れて来て下さったというのにこれではいつ娘が追い出されても不思議では無ので気が気では無いのだが叱るに叱れないでいる。


それもそのはずで、かくいう私も上流階級と言える屋敷に足を踏み入れるなど始めての経験の為それどころでは無い。


私達が暮らしていた家ほどの大きな門に手入れされた広い庭、白く輝く石の床に高そうな壺に絵画、そのどれもが初めて見る光景で、それはまるで幼い頃に聞かされた御伽話の世界に迷い込んでしまったような感覚になる。


そう思うと今の見すぼらしい自分の姿や服装が急に恥ずかしくなり、今更女性らしい感情が出てくる事に少しおかしくなる。


そして娘とはここでお別れである。


屋敷の中へ入るのは私だけで娘はメイドと一緒に庭で遊ぶとの事。


もしかしたらもう娘とは会えないかもしれないとは思うものの、もし今娘と相対してしまえば間違いなく私の今の感情が娘に伝わってしまう為振り返る事なく前を歩くメイドへ着いて行く。


そして案内された部屋へ入ると黒い仮面を被った女性とメイドがいた。


その女性は私に問う。


一生奴隷になる覚悟はあるか、と。


その問いに私は即答し、奴隷契約を結ぶ。


するとどうだ。


あの見すぼらしい身体もボサボサの髪も、骸骨みたいな顔もそれら全てが以前の姿へと変わっていき、それはまるで貧乏でも幸せだったあの頃に戻ったような感覚になると同時に鮮明にあの幸せだった日々をおもいだす。




「目は覚めましたか?」

「………は、はい。本当に夢ではなかったのですね……」

「言ったでしょう?ローズ様が貴女も、娘さんも救うと」


狼の耳を持つ女性メイドのその言葉を聞きハッとする。


「む、娘はっ!?娘は今どこに居るのですかっ!?」

「落ち着きなさい。貴女の、アナスタシオの娘であるアイリスは今我がブラックローズが経営するチョコレート専門店でお手伝いとして簡単な雑用を手伝ってもらっています。あぁ、勿論だからといって只働きはさせておりませんのでご安心を。一時間働く毎に大銅貨五枚を差し上げておりますので」

「え、チョコレート専門店で働いて……一時間に大銅貨五枚………大銅貨五枚っ!?」


始めは娘があの有名なチョコレート専門店で働いている事にビックリしたのだが、それよりもその給金に驚きを隠せない。


大銅貨五枚など成人農夫が一日中で稼ぐ平均的な額より少し少ない程度の大金では無いか。


しかもそれを娘は一時間毎に頂いている。


そう思うと嫌な汗が滝のように流れ始めてくる。


「そ、そそそそっ、そんなに頂いて宜しいのでしょうかっ!?お恥ずかしながら私の稼ぎが少ない為に娘は学校へ行けず文字も書けないですし計算も出来ないのですが………っ!」

「文字や計算はこれから覚えてもらうとして、むしろ給金に関してローズ様は『少な過ぎかしら?』と仰っていましたし、我々は初任給として月々金貨で二十五枚、正確にはそこから社会保険料なる物で金貨二枚引かれて二十三枚を固定給としてもらっております。そしてその金額をアナスタシオもこれから頂くのですからそれから比べたら少ないですし一日三時間までと決めておりますので長時間働いてまだまだ幼い娘さんの負担になるような事もございません」


一体どこから突っ込めば良いのか分からなくなってしまう程聞きたい事がローズ様の先輩奴隷であるウルさんの言葉の中には余りにも沢山あり過ぎる。


月々金貨二枚もピンハネされるとしてもまだ手元に金貨二十三枚も頂けるなど、ウルさんを信じていない訳では無いのだが本当かどうか疑いそうになる。


そもそもピンハネする金額を教える時点であり得ない……そう、あり得ない。


であれば社会保険料というのは一体何なのか気になって来る。


「それと、とあるルールを破るとローズ様はかなり怒りますので、今から言うルールは絶対に覚えておいて下さい」

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