諦めろ妹よ
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「はぁ……」
今日は朝から憂鬱である。
それもこれも朝の朝食の時お母様からの一言からである。
目覚めは何時もの朝であった。
今日はメイがわたくしを起こしてくれて、メイドにより身嗜みを整えてもらい朝食へ、そのまま学園へと行く流れであると油断していた。
そもそも家族の会話など胸糞悪い内容の為基本的に聞いていないわたくしが悪いと言われればそれまでなのだが、今日はそれに加えてこれからメインキャラクター達をどうやって避けようかと、横でお母様がわたくしに何か話しているにも関わらずまた貴族至上主義ですかと聞こうとせず別の事を考えていた。
お母様がわたくしに話しかけている内容が見合い話であるとも知らずに。
「でね、フランさん。このお方は──────でね、───────の方なのですが、──────をお勤めになっておりますの」
「良いと思いますわ」
「まぁっ!まぁまぁまぁっ!!フランさんもやはりこのお方が気になるのですわねっ!お母様は十五歳になっても浮いた話一つなく、見合いも全て断っているものでしたから嫁に行き遅れてしまわないか心配でしたのっ!では早速お母様は見合いをする旨向こう側に伝えておきますわねっ!あ、ちなみに先方も忙しいみたいですので見合いは今夜行いますわよっ!!少し早いかもしれませんがお二人ともお若いのですから多少のこういったイレギュラーなど何ともないわよねっ!むしろそのイレギュラーが恋が芽吹く切っ掛けになったり致しますのよっ!わたくしとお父様みたいにっ!あら、やだもうこんな時間っ!?ではお母様もう行きますわねっ!!」
「えっ!?ちょっ!?お母様っ!!見合いって何ですのっ!?聞いてませんわそんな事っ!!お母様ぁっ!!待って下さいお母様っ!!」
やられた。
見合いなんてそもそもするつもりなど無い上に今世では結婚すら捨てる覚悟で生活し、更にこれからの活動を考えているのだ。
見合いなどもっての外である。
そりゃわたくしも花も恥じらう乙女で御座いますので結婚、それも男性と結婚するという事に夢を見る事も御座いますわ……ま、まぁ女性も行けましてよわたくし。
しかしそれは夢だから良いのですっ!!そもそもわたくし、結婚が墓場であると知っておりますのっ!!お母様ぁっ!!
「諦めろ妹よ」
「で、でもっ!お兄様っ!!」
そんなわたくしの狼狽具合を見て笑いを必死で堪えながらお兄様が思いやりのカケラすら感じられない言葉を投げかけてくる。
今の態度と言葉、わたくし一生忘れませんからね、お兄様。
「そもそもお母様はお前が人の話を聞いていない事を前提に空返事をするように仕向けて話していた節がある」
「………は?」
「その証拠に今日のお母様は普段しないのに直ぐに出かけられる様に荷物を側付きに持たせて直ぐに行動出来る様にして食事を取っていた事、それと余りにも早すぎる見合いの日取り、その全てがそう考えるとしっくりくる。そう考えると恐らく今回の見合い話はお前が逃げられない様に用意周到に計画されている可能性が高いとみて良いだろう」
「そ、そんなぁ……ハメましたわねっお母様っ!!」
お兄様の話を聞きみるみる顔を青ざめて行くわたくしをお兄様はとびっきり笑顔でこう言うのであった。
「だから諦めろと、そう言ったのだ。妹よ」
◆
今思い返してもあの時のお兄様はわたくし史上一番腹が立った笑顔である。
恋は盲目とは言いますがあれで貴族令嬢にモテモテと言うのですから貴族令嬢も見る目がないですわね。
お兄様の本性を知っても好きと言えるのかしら。
「フラン様、何か悩み事ですか?」
「わたくし達が出来る事があればおしゃって下さい」
「ありがとう、ミシェル様、リリアナ様。けど大丈夫よ。憂鬱なのは今日一日だけですので明日になればケロッと元どおりですわよ。心配させてしまったみたいで申し訳ないですわ」
「そ、そんな事御座いませんわっ!」
「むしろフラン様はもっとわたくし達に迷惑をかけて下さって、頼って下さって良いのですわよっ!」
「貴女達……」
あぁ、ミシェル様とリリアナ様がわたくしの事を心配してくれてこうして声までかけてくれ、更に頼っても良いと言ってくれる。
たったそれだけで憂鬱な気分が少しマシになった。
「そうだぞフランっ!この者達の言う通りだ!!頼っても良いのだぞっ!!むしろ望むところであるっ!!」
「の、ノア王子様っ!!」
「流石ですわっ!!」
「わたくしノア王子様に聞いてほしい悩みが御座いますのっ!」
「わたくしもですわっ!!わたくしは最近ノア王子様を見ると胸のあたりが締め付けられてしまいますのっ!これは病気でしょうかっ!?」
「あっ、こらっ、お前たちっ!今俺はフランと話しているのであってだなっ!!」
そんなわたくしとお友達との大切な空間にノア様が土足で入り込んんで来た時はどうしてやろうか?下剤でも仕込んでやろうかしらと思ったのだが直ぐ様取り巻き達───ミシェル様とリリアナさも含む───に囲まれてしまうのを見てザマー見ろっ!と少し溜飲が下がったのであった。
◆
「フランさん、準備は宜しくて?」
しかし時間というのは残酷でわたくし一人の為に止まってくれたりなどするはずも無く流れ、そしてやって来るのである。
誤字脱字報告ありがとうございます!!ありがとうございます!!
もう数ヶ月もピクシブスケッチを更新してないので絵描こうと思うのですが、気が付いたらyoutube観てるダメな人間です^^自分




