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天敵







ここ帝都マルギス学園は小等学部から中等学部まではエスカレーター式かつ上流階級しか通う事が出来ない帝国屈指の学舎なのだが高等部からは狭き門ではあるものの一般からも入学出来る仕組みとなっている。


そしてその一般学部から入学してくるのがこの君恋のヒロインでありわたくしの天敵でもあるシャルロッテ・アイゼンハワーその人である。


とは言えど流石にある程度の地位と財力が無ければこの学園に入学する事は許されていない為シャルロッテの家庭は帝国でも五指に入る豪商の娘という設定である。


しかしわたくし事フランはいくら豪商であろうと金持ちであろうとその地位は何の意味も持たなかった。

貧乏であろうと没落寸前で権力すらなくとも貴族であれば人でありそれ以外は人の真似をする生き物でありそれ以上でも以下でもない。


地面を這う蟻や路傍の石等と同等程度として認識していた。


それは一重にあの家庭故のある意味での貴族至高主義英才教育の賜物である。


だからこそその路傍の石が上流階級の男達にあまつさえ恋愛感情を抱き、深い仲になっていく様が許せなかった。


上流階級の血に得体の知れない何か分からない異物が混ざる事に恐怖を覚えたのであり、それはある意味で今まで意識すらしていなかった物を初めて意識し始めたという事でもある。


いわばこのゲームの悪役令嬢が行った数々の嫌がらせ等の動機は恋愛関係の縺れから来る嫉妬ではなく純粋なる恐怖からくる敵対心であったのである。


そもそも恋愛結婚等、貴族で産まれた以上は最早夢物語であり政略結婚が当たり前の世界である。

それは言い換えれば動物としての生存本能故の攻撃的行動であったのかも知れない。


そう思えば悪役令嬢であったフランも貴族至上主義による被害者の一人であると言えよう。


もし庶民もまた人間であると知っていれば、見下し、嫌悪こそすれどあれ程の事はしなかったであろう。

これが本来わたくしが歩む筈だった未来であった。


そしてわたくしはその未来をぶち壊してみせますわっ!!


そう意気込みフランは力強く学園の門を潜って行く。


これから注意しなければならない人物、特に注意が必要なのはヒロインも含めたメインキャラクター五名である。


まず最重要危険人物はこの帝国第二王子(帝国を治める者が皇帝の為実際は皇太弟に当たりますが、以後ニュアンス的にも第二王子又は王子として記載させて頂きます)であるノア・ル・マルギスである。


何を隠そう記憶が蘇る以前のわたくしの初恋の男性だったコイツはヤバイ。


百年の恋も氷点下まで瞬間冷却される程ヤバイ。


わたくしの淡い恋心など記憶が蘇った瞬間に凍って砕けて粉々である。


それはもう砕け過ぎてさらっさらである。


そんな彼は君恋にある数多のエンディングで百四十八回、約半数ものエンディングでこのわたくしを殺しているのである。


ええ、それはもう様々な方法で。


プレイしてた頃はその度にスカッとさせて頂いたのだが、はっきり言って冗談じゃない。


もし今あの様々な方法でもって殺されると思うと身の毛がよだつ。


最早コイツに関しては会わない関わらない近寄らないの三原則を実行する必要があるし、今日この度フラン脳内決議にて満場一致で可決である。


そして残りはわたくしと同じ公爵家であり幼い頃から少ないながらも交流があるリカルド・コールドウェル、代々近衛騎士一番隊隊長として君臨する武の家系の長男であるレオ・クロスフィード、そして代々宰相となり皇帝の右腕として君臨する家系のこれまた長男であるアルビン・ダウニー・リアムである。


わたくしはこの者達三名により約百回ものエンディングで殺されている。


ノア王子と合わせると約二百五十回もこいつらに殺害された事になる。


最早この攻略対象キャラクター達には息をするだけで気にくわないと殺されてしまいそうである。


まさにわたくしの天敵。

君子危うきに近寄らず。

君子危うきに近寄らずであるっ!!


そんな訳で心の中に残り三年のスローガンを叫び体育館へと向かう。





一般入学組との合同入学式は恙無く終わった。


唯一思う事があるとすれば前世でも今世でも校長の話は無駄に長いという事位であろう。


「「フラン様おはようございます」」

「おはようございますミシェル様、リリアナ様。お互い同じ教室だと良いですわね」


入学式も終わり教室に行く為に校舎入り口に張り出されたクラス分け表を見に行こうと移動している時、二人の女性から声をかけてくれた。


この二人、ミシェル様とリリアナ様は小等学部からの友人である。


長いピンクの髪は緩い癖っ毛でふわふわとしておりタレ目も相まってほんわかとした雰囲気を醸し出しているおっとりしている性格の方がミシェル様で深い青色の髪をポニーテールで縛り女性武士と言われても納得してしまいそうな雰囲気を醸し出しているのがリリアナ様である。


そんな三人で春休みの思い出を各々キャイキャイ言いながら目的地であるクラス分け表のある場所まで向かう。


因みにこのお二人はゲームでは、フランのヒロインに対する嫌がらせの数々は己のそのプライドも相まって全て一人で行っている為出てきていない。


で、あるならば逆にこの二人との行動を多くすれば何らかのバッドエンドを回避できるかも知れないと姦しい会話の中で密かに考える。


「あ、ありましたよっ!!フラン様のお名前っ!!わたくし達と同じ教室ですわっ!!」

「あら、本当ですわね。今年もよろしくお願い致しますわ」


これは幸先が良いのではなかろうか?いや、むしろ逆に運を使い切ってしまったのではないかと恐ろしくなって来る。


「しかも見てくださいフラン様っ!ノア様とも同じクラスですわよっ!!」

一部、二部の誤字脱字を修正致しました。


他におかしな箇所等がございました場合ご気軽にご連絡くださいますと有り難く思います^ ^

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