聞き漏らす訳がない
「待てっ!!待たぬかっ貴様!!」
そしてわたくしがかっこよくこの場から去ろうとしたその時、先ほど助けた人から呼び止められる。
なんでしょうか?お礼でもしたいのでしょうか?なんてったってわたくし命の恩人でございますからね。
自分で殴り殺しかけた事など既に忘れている事をフランは忘れている事に気付いていないようである。
「良くもこの我に対して狼藉を働いてくれたなっ!!死んで償えっ!!」
そしてフランの予想は当然の如く違い、お礼ではなくフランの首と身体を離れ離れにするべく一切の躊躇も手加減も無い攻撃が飛んでくると、その攻撃はフランが常に展開している結界に弾かれてしまう。
「………いくら何でも流石に殺そうとしてきた人間に対しては流石のわたくしも手加減は致しませんわよ?」
「ふん、たかが小娘が吠えよるわ。変な仮面を被り変な技で我の攻撃を防いだみたいではあるが、この神である我、シュバルツに人間である小娘一人が敵う相手であると思われているとは片腹痛いわ」
そして件の人間、シュバルツはわたくしの前である言葉を発した事を、わたくしは聞き漏らさなかった。
聞き漏らす訳がない。
「しねぇぇぇえええええっ!!!!!!貴様が神かぁぁぁあああああああっ!!!!!!一発その顔面を殴らせろやクソがっ!!」
「ぐっ!?人間の小娘の癖になんとう威力のパンチを繰り出しているのだっ!?人間が出していい威力をとうに超えておるではないかっ!?」
やっと見つけた。
記憶が戻ってからずっと探していた。
ずっと我慢していた。
「貴様のせいでっ!貴様のせいでっ!貴様のせいでっ!貴様のせいでっ!貴様のせいでっ!貴様のせいでっ!」
「なんという手数のスピードであるかっ!?貴様人間ではなく化け物の何かなのではないのかっ!?」
前世の、俺の知人や同僚、そして友達。
そして家族にだって別れの挨拶の一つもできなかった。
今までメインキャラクターに囲まれていつ殺されるかと毎日朝が昇ってくるのが恐ろしかった。
自分が何者なのか、性別も定まらず、そして何のために悪役令嬢であるフラン・ヨハンナ・ドミナリアへと転生してしまったのか、何もかもが分からなかったし今も分からない。
「避けてんじゃねぇぞっ!!このクソ神がっ!!他人の人生を何だと思ってやがるっ!!貴様ら神の暇つぶしのせいで俺が今までどんな気持ちで暮らして来たのか分からないとは言わせないぞっ!!」
「ちょっ!?貴様っ!一体何の事を言っておるのだっ!?」
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