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転生悪役令嬢は闇の秘密結社を作る  作者: Crosis


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尾行

悔しい。


神のクソ野郎の掌の上で踊らされていた事が。


そんな資格なんか無いにも関わらず能天気に楽しんでいた自分が。


そして何よりも生きる価値なんて無いと言われているようで。


その全てが悔しくて悔しくてどうしようもない。


「そっちがそのつもりでしたらわたくしは受けて立ちますわよ。このわたくしを相手にした事を後悔させてあげますわ」


わたくしを殺す事を諦めていないと言うのであればそんな事をほざくその口目掛けて拳を使い全力で殴り飛ばすまでである。


そしてわたくしは新たに生き抜く決意を固めるといつのまにか泣いていた流れ落ちて来る涙を腕でゴシゴシと拭き取り馬車へと戻る。


馬車の中はトイレ休憩に行ったのか誰も居なかったのだが寧ろ泣き腫れた顔を見られる心配も無い為好都合であろう。


後は学園まで狸寝入りでやり過ごす事にする。





「はぁ、まったく世話の焼ける奴だ」


おそらく寝ている者を起こさないという無駄な配慮なのだろう、フランが側仕えの犬っころを携えて馬車の外へと出て行く。


少し前ならばどうせ何も考えず自分勝手に行動している我儘で高慢ちきな令嬢位にしか思わなかったのだが、ここ最近そのイメージは薄れて今日の遠足でその評価はぶっ壊れた。


だから俺はフランを追いかける事にする。


いくら治安の良い帝都だと言っても絶対に安全だと言う訳ではない。


護衛も付けずフラつくのは余りにも不用心というものであろう。


それは他の者も同じ考え──というかそれが一般常識であるのだが──らしく外に出ている者達は集団となり、信頼の置ける護衛を数名連れて皆行動している。


それなのにフランと来たら自分の安全よりも俺たちの睡眠に重きを置いて行動しやがった。


はっきり言ってありがた迷惑という奴である。


それは他の同乗者も同じらしく俺と同様にフランを追いかける為馬車から降りて来る。


こいつら、狸寝入りしてたんじゃ、という疑惑も生まれるが俺も似た様なものである為あえてそこは突っ込まない様にする。


「さて、早いとこあのバカ女と合流するぐうぇっ!?」

「まあ待て脳きn……じゃなくてレオ。ここは尾行しようではないか。俺たちが居ない場所で信頼しきった側仕えと共にした時のフランがどの様な一面を見せるか知りたくは無いのか?」


そしてフランと合流する為に向かおうとした時ノア王子に襟首を掴まれ阻止されると尾行しようと提案される。


はっきり言ってノア王子の考えは気持ちが悪いのだが尾行という考えには賛成である。


これであいつの弱み一つでも握れる事が出来るのであれば尾行するのも悪くない。


それに、この班の護衛はあのノア王子の護衛である。


尾行しつつ護衛など息をするよりも簡単であろう。


まぁ、それに関しては俺も同じなのだが。


という訳で尾行を開始するのであるが、ノア王子にシャルロッテは本当に尾行するつもりがあるのかと言いたくなる程壊滅的に尾行が下手であった。


そもそも「フラン様に今から尾行しますので、尾行しやすく行動してもらうように交渉してみましょうっ!!」とフランの元へシャルロッテが駆け出そうとしたり、「あぁもう我慢ならんっ!!フランの残り香だけでは辛抱堪らんっ!」などとノア王子がフランの元へ駆け出そうとしたりと尾行よりも二人を止める事の方が大変であったと言えよう。


そんな中フランは花売りの少女から一輪の花を購入した後逃げる様に路地裏へと向かって行く。


初めは俺達の尾行がバレたのでは無いか?などと思ったのだがバレた所で逃げる理由が見当たらない。


なぜそそくさと隠れる様に路地裏に行ったのか疑問に思いながら覗いてみると側仕えに背中をさすられているフランの姿があった。


その姿を見てノア王子とシャルロッテが駆け出そうとするのだがそれを俺が二人の襟首を掴んで阻止する。

フランは野生の獣の様な人物であると俺は考えている。


であればあのような姿を他人には見られたく無い筈であろう。


それはまるで美しい毛並みを有するそれはそれは立派な獣が傷付き、一人で抱え込もうとする姿に見えた。


「───────わたくしは受けて立ちますわよ。このわたくしを相手にした事を後悔させてあげますわ」


そして聞こえ来た言葉は明確な決意と共に俺の耳に届く。


それはフランの心の叫びの様に聞こえた。


今フランは一人で潰れそうになりながらも強大な何かと闘っている。


そしてフランは自分が泣いている事にやっと気付いたのかまるで少年のように涙を腕で擦りながら拭うとこちらの方へ向かって来る。


その時の、戦乙女の様な美しいフランの姿に俺は不覚にも目を奪われてしまった。



何とか尾行されている事がバレる事も無く馬車に戻るとフランは誰がどう見ても狸寝入りをしていたのだがそれを咎める者は誰もいなかった。


今時子供みたいに「うーん、むにゃむにゃ。すぴー、すぴー」などと大根役者もビックリの演技をされれば誰だって騙された事にしてあげるというものである。


それもあんな事を見た後では尚更。


おそらくこの女は俺らから手伝ってやると言っても頑として首を縦に振らないだろう。

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