ギャピッ!
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黒い仮面達から放たれる想像を絶する未知なる攻撃の雨は我が眷属の身体ですら耐える事が出来ず、頭を残して見るも無残な状態となっていた。
その唯一残った頭、その目がぐりぐりと上下左右に動き出すと痙攣し始め口から泡を吹き出してくる。
そして、耳の穴から肌色のスライムの様な物がずるりと出て来る。
「ひぃ、ひぃ、………何なのだあいつらは……我が血を与えた者が一人だけでは無く何人も討伐されるなど」
そして我は這う這うの体でようやっと抜け出す。
我はいくら本体の分身体であるといえどあの攻撃を喰らってはひとたまりも無かったであろう。
「くそ、早く次の宿主を探さなければっ!」
この身体は脆く、外の世界では二時間と保たない。
このまま死んでしまうなど言語道断である。
我は、あのいけすかないオリジナルの身体を乗っ取ってやるまでは死んでも死に切れない。
そして我こそが最強であり神であるという事を全世界に知らしめてやるのだ。
「この世界全ては我の物であるっ!我に歯向かった糞共めっ!後悔しても仕切れないくらいの絶望を味合わせてやるっ!」
「本体が本体ならば分身体も分身体でなかなかの糞ですね」
「…………へ?」
けして警戒していなかった訳では無い。
この身体は脆く弱い為頭から出て行くにあたって周囲には細心の注意を払って出てきたつもりである。
であるにもかかわらず、先程の黒い仮面を被ったメイという女性が、まるで地面を這う虫を観察するかの様にしゃがんでこの我を見ている姿が目に入って来る。
一瞬絶望感に染まりかけるものの考え方を変えれば歓喜が我を満たして来る。
暁光っ!何という暁光であるかっ!あやつはまだ我の事を虫けらを見るかの様に見つめている。
それは言い換えれば我の能力を把握していないという事である。
もし我が他者に寄生し、おいおい身体を乗っ取る事ができるという事が分かっていたにならばこんなにも近くで危機感もなく我を観察なんかしていないだろう。
そうと決まれば警戒される前に奇襲一択である。
そして俺は仮面の女性、その耳に向かって飛びかかる。
ビチャッ!
しかし、我は仮面の女性に寄生出来ず、まるでスライムを壁に全力で投げつけた時に出るような音が当たりに鳴り響く。
「何も対策していないのに敵を前にこんなにも無防備な姿を晒しているとでも思ったんですか?馬鹿ですか?馬鹿ですね。では、貴重なサンプルとして捕獲致しますね。死んだら死んだで研究のしがいはありそうですし、ねッ!」
「ギャピッ!」
誤字脱字報告ありがとうございますっ!
ブックマークありがとうございますっ!
評価ありがとうございますっ!
余分な事は書かず手早く終わらしたいという思いと、余分な事を書いてもう少し長く書いていたいという思いがせめぎ合ってます^^




