我が主人
「こんな事があって良いのか………今の教皇を止める者も、最早この世界にはおりますまい」
「諦めるにはまだ早いと思うぞ?」
そして最悪の予想が当たった事を嘆くのだが、シューベルト元教皇様は今のこの現実を悲観する事もなく諦めるのはまだ早いとこの俺におっしゃる。
一体何を根拠にあの神とも見紛う程の様々な奇跡を起こす事が出来る様になったあの化け物相手にどんな希望があるというのか。
「まぁ、今の我が弟を見ればそう思うのも無理は無かろう。しかしながら今のこの俺の姿を見て何も思わぬか?一度化け物へと変化したこの俺を元の人間の姿へ戻すだけではなく奪われた贓物も全て綺麗に再生されたこの身体を見てもお主は何も思わぬのか?」
「…………我が主人よ。俺にまだ出来る事が残されているというのであれば命令を」
気が付けば俺は再度シューベルト元教皇様へ膝をつき首を垂れていた。
シューベルト元教皇様の言っている事が正しければ、シューベルト元教皇様は一度化け物へと慣れ果てたにも関わらず一命を取り止めただけでなく元の人間の姿へと戻ったのだと言うではないか。
それも、奪われた筈の贓物も全て再生されていたという。
もし、仮にもしもその話が本当であると言うのであればシューベルト元教皇様を元に戻せるだけの人物がこの世界にはいるという事である。
そう思えば確かに、シューベルト元教皇様が言う様に諦めるにはまだ早い様である。
そして俺はシューベルト元教皇様からの命令を待つ。
認めたくはないのだが今の俺はあの化け物のお陰で人の力を外れた能力を手にする事が出来た。
ならば、こんな俺でもまだ出来る事が残されているのかもしれない。
「良い目に戻ったな。では俺を護衛も兼ねて聖教国へと連れてってくれ。ちょっと探したい物が一つあってな。引き受けてくれるな?」
「かしこまりました。シューベルト様」
◆
「使えないっ!我らが神より強力な力を頂いたと言うのに一体何をやっているのっ!」
まさか、あの凝り固まった老害まで居なくなるなんて、一体誰が信じようか。
しかもあの老害が居なくなった場所に来てみれば争った形跡が一つも無いときた。
それが意味する事として一瞬あの老害が裏切ったのでは無いかと思ったのが、老害故にそれは無いと言い切れる。
アイツはいつまでも血筋血筋と煩く喚き、時代錯誤も良いとこである。
シューベルト元教皇が亡くなった現在、我らが神だけが教皇の血を引いている為あの老害が裏切るという事は無いと言って良いだろう。
誤字脱字報告ありがとうございますっ!
ブックマークありがとうございますっ!
評価ありがとうございますっ!
この連休で仕事用に分けて使う予定の服を買う予定なのですが、結局買えないまま連休が終わりそうです^^




