命があるだけマシ
獣王ガイルが出会った化け物以外は。
「フン、口だけでは何とでも言えよう。それに倒した証拠も無ければなんだ?たった三名の女性が一瞬にして倒しただって?嘘を吐くにしろもう少しマシな嘘を付いたらどうなんだ?ガイルさんよぉ」
そのガイルが語った内容を嘘であると見下しているのはただでさえ長身である男の背丈よりも長い大剣使いのドゴーである。
彼は傭兵上がりのランクS S S級冒険者である。
茶髪の髪は短く切り揃えられ、大剣をまるで羽の様に操るその身体は厚い筋肉で覆われている。
そして身体中にある傷跡の数々が、彼が幾多の死線をくぐり抜けてきた猛者であると、見せかけの筋肉ではない事を告げているようである。
「嘘と思われるのならばそれで良い。しかしこれだけは言わせて貰おう。俺が口にした事は全て真実である。そして、その娘達は間違いなく俺たちでは逆立ちしても勝てない程力の差がある」
その唯一である化け物の討伐成功を報告したガイルであるのだが、想像していた通りガイルを信じる者はこの場には居ないみたいである。
「うーむ、あの化け物を倒したなどにわかには任じられぬのだが、それを証明する時間すら今は無いのがもどかしいのう。しかし、聖教国はとんでもない化け物を作ったもんじゃわい。ガイルの話が本当であれば、あの化け物も元が人間種であるいうのだから信じられん」
そう言うと蓄えた白い髭を撫でる老齢の冒険者。
現在彼は六十歳を超えているのだが、その肉体は筋肉で盛り上がり巌の様である。
彼こそが現在帝国の冒険者をまとめ上げる総長、ゲール・ドクシーその人である。
「それで、今現在化け物共はどうなっている?」
ゲールがそう言うと、彼の後ろで控えていた冒険者ギルドの職員である男性が手にしている資料を渡してくる。
「今現在発見されている化け物はガイル様のものを含めると五体、討伐成功はガイル様の一体のみで未だ残り四体については討伐中でございます。そして、鳥型の化け物と交戦していた冒険者ランクS Sである冒険者クラン青の薔薇のリーダー、絶対零度が敵の攻撃をくらい今現在瀕死の重体でございます」
冒険者ギルドの職員が発した言葉でこの場に訪れている者達が息を飲む。
女性五名からなる冒険者クラン青の薔薇、そのクランの冒険者ランクは S Sではあるのだがリーダーである絶対零度個人の冒険者ランクは S S S級である。
その彼女が瀕死の重症ともなるとここに集まっている彼等だけでなく今現在戦っている冒険者達にも倒す事が出来ずに死人が出てしまう可能性が出てきたのである。
「しかしながら絶対零度及び青の薔薇は帝都の医療施設へと運ばれており治療の最中で御座います。治療をしている者の話では何とか命だけは助かるとのことです」
そしてその言葉を聞いて空気が重くなる。
皆冒険者ギルドの職員の言葉を聞き、絶対零度の復帰は絶望的であると知ったからである。
それでも命があるだけマシであろう。
むしろあの化け物に殺されかけたガイルからすれば幸運であったとすら思う。
「そして、その絶対零度を助けたのが帝国第二王子であるノア様率いるクラン、風嵐の誓いであり、現在風嵐の誓いが件の化け物と交戦中との事ですっ!」
誤字脱字報告ありがとうございますっ!
ブックマークありがとうございますっ!
評価ありがとうございますっ!
すみません、少なめです。
父の日で祝ってました^^
明日は遠出の予定ですので、更新は未定です。
恐竜博物館とか行きます^^




