エルフの精神攻撃
「しかし、こうもお転婆だと嫁の貰い手がいないと嘆かなければならない所であったが、第二王子であるノア様には悪いが何とかその心配はしなくてよさそうですね!!まぁ、せいぜい婚約破棄されない様に気を付けるんですよ、我が妹よ」
「だが調教師として生きては行けるであろうから万が一婚約破棄されたとしても金銭面に関しては悩まなくて済むなっ!!」
そしてわたくしのお父様とお兄様が実に楽しそうに笑いながらわたくしの事を話し出し、お父様に至っては大口を開けて「ガハハハッ」と笑い出す始末である。
その内容はまるでこのわたくしは、ノア様の婚約を破棄されてしまったら貰い手がなくなって余生を一人寂しく過ごす羽目になってしまうという内容である。
解せぬ。
そもそも可愛い娘ないし妹を捕まえて「お前なんか結婚できない」と言って笑う等言語道断であるのだが、これ程までに美しく可憐であると自画自賛しているわたくしが結婚できない等あるはずがない。
そこまで思った所でわたくしは気付いてしまう。
そうこれはあくまでもジョークであり冗談であるのだと。
わたくし程の女性相手だからこそ成り立つ笑い話であるという事に。
あぁ、美しいというのは罪なのですね。
オホホホホホホホッ!!
「何でフランまで一緒になって笑っていられるのですかっ!笑い話ではないですのよっ!鈍い鈍いと思っていたのだけれども私の娘がここまで鈍感であったなんて………いいですか、フラン。お父様やお兄様が仰っております通り、ノア様に婚約破棄されると本っっっ当に結婚相手が見つからないのかもしれませんのよっ!少しは危機感という物を持ってはいかがかしら?フランさん。このままでは花嫁修業に費やすお時間を増やすかどうか考えなければならないかもしれませんわ」
そこまで言うとお母様は深いため息を吐く。
そしてわたくしは、都合の悪い言葉は全て右耳から左耳へと通り過ぎて行くのであった。
真実というのは時に気付かないからこそ幸せである場合もあるのだ。
最悪、お母様やお父様、そしてお兄様がおっしゃる通りの未来が待ち受けていたとしても、その時にわたくしの『本気』をお見せして差し上げようではないか。
◆
「ケホッケホッ!………」
あのエルフの野郎に蹴られたお腹がじくじくと鈍い痛みとなって私を襲ってくる。
ポーションを使ったといっても元々効果の薄い低級のポーションである上に、更にその低級ポーションの粗悪品である。
生きているというだけで有難い。
「お兄様………」
私の兄はエルフに滅ぼされたウカリダ王国、その亡国の王子であった。
しかし、今頃はきっとエルフの男共の慰み者にされているであろう。
その屈辱に耐えかねて自殺をしていなければ、とは思うものの今現在は私自身が生き延びる事で精いっぱいである。
エルフの繁殖率の低さは勿論出生率の低さでもあるのだが、それに加えてエルフの男性は男色を好む傾向が強いからとも言われている。
あの、厳つい巌の様なお兄様がお兄様とは正反対である美麗なエルフ達に嬲られる………なんだか知らないけれどもその事を想像するだけで、あぁ、イケませんっ!そんなふしだらな事を想像するなんてっ!あぁ、なんといけない妹なのでしょうか。
きっとこれもエルフの精神攻撃なのであろう。
実に許すまじ、エルフ。
エルフだけで楽しみやがってっ!私にもその光景を生でみる権利があるはずですっ!なんてたって実の妹なんですもの………はっ!?今私は何を考えていたんですかっ!!エルフ達めっ!!このような精神攻撃ではわたくしはやられませんからねっ!!
◆
何故だろう、エルフに我が国を滅ぼされて数か月。
久しぶりにあった妹が俺を見る目が何だか少し気持ち悪い気がするのだが、気のせいであろうか。
そして、久しぶりにに話す内容はオブラートに包んではいるものの要約すれば『どのような辱めを受けたのか?尻は大丈夫か?』と言った内容なのは気のせいであろうか?
「おい、せっかく兄妹が揃ったんだ。何か言う事があるんじゃねぇのか?」
そんな疑問を抱き始めた時、この俺を奴隷にし、そしてその奴隷契約の主であるエルフがニタニタとした笑顔で話しかけてくる。
「私如きの為に妹と会わせて頂きありがとうございます。ご主人様に感謝を」
「フン、すこし投げやりな気もするが良いだろう」
そして俺は怒りをぐっと堪え、土下座し続ける。
きっと今の俺の表情は憤怒に染まっているのであろう。
「だが、感謝の言葉が足りないんじゃぁないかなっ!」
「ぐえぇっ!?」
誤字脱字報告ありがとうございますっ!
ブックマークありがとうございますっ!
評価ありがとうございますっ!
すみません、普通にサボってました(*'▽')
その間積みラノベ化していた魔王様リトライを最新刊まで読み進め、ひなまつりを全巻大人買いし、時間も忘れて読みふけってました。
しかしながら、12巻が二冊あって17巻が無いんですよね。
悲しみ(*'▽')ぐぬぬ
積みラノベ、漫画は大量にあるんですが、一回積んでしまうとなかなか手が伸びない不思議(*'▽')




