閑話4──足さばきを制する者◆
そして試合開始から半刻ほど過ぎてなお、俺はこの結界魔術を突破する事が出来ずにいる。
その事に自分自身苛立ちが増すばかりである。
それに対して俺の対戦相手であるメリッサは徐々に俺の動きに慣れて来たのか、試合開始当初とは違い緊張感が抜け、確実に動きに余裕ができているようになってきている。
「っ!?」
「も、もう少しだったのに………っ」
そして、メリッサの動きが良くなるにつれ徐々にメリッサの手数も増えて来ており、先ほどの様に危ない一撃も増えてきている。
その要因にメリッサの立ち回りと、ロングスカートの様な異国風の見た事無いズボンのせいであろう。
その動きは、目の前の素人然とした者が出せるような動きではなくまさに鍛錬を積んだ強者の動きなのだ。
そして急加速、急停止は勿論、足音が聞こえて来ず、幅の広いズボンのせいで足さばきが全く見えず、目視で相手を捉えていると自分の培ってきた経験からくる予測とのズレが生じてしまうのである。
それはまるでこの俺が培ってきたもの全てが無駄であったと言われている様ではないか。
この俺を勝たせるつもりであると当初は思っていたのだが、そんな生易しい物ではなく俺の心を砕きに来ているという事に、ここに来てやっと気づく。
「畜生………」
太刀筋や防御はまるで素人。
しかしながらそんな彼女の立ち回りと結界魔術のみで俺は今攻める側から守る側へと変わっていた。
「足さばきを制する者が剣道を制す、以前ローズ様が仰った言葉です。どうですか?実際に相対してみて」
「…………だ、黙れっ!!」
そんな、たかが素人に苦戦をしている俺に向かって師範であろう女性が話しかけてくる。
その言葉は今現在実体験として経験している俺へ突き刺さるのだが、それを認める事が出来ない自分がいる。
当たり前である。
そう簡単に今までの事を否定できる程の生易しい鍛錬は積んでいない。
そんな状況の中、メリッサは何かに気付いたのか俺の左側へと回り込む様に立ち回りはじめた。
恐らく彼女は気付いたのであろう。
俺の左目の視力がほとんど無いという事に。
そしてそこからは一方的であった。
竜殺しの英雄と謳われたこの俺が素人から一方的に攻撃される。
最早この俺に竜殺しというプライドや、今まで費やして来た鍛錬による自身など砂上の城の如く崩れ去っていた。
そして、心が折れれば最早勝ち目など無く次の瞬間にはメリッサの勝利を宣言していた。
「な………何故、魔剣術を使用しなかったのですか?」
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すみません、今日も少なめです。
とりあえず痩せた五㎏を維持すべく腕立て伏せでもしようかと思い、思い立ったが吉日とやり始めたのですが、筋肉痛で無事死んでおります。
本日は、異世界転移物で私のおすすめアニメでも紹介させて頂きます(*'▽')
作品
天空のエスカフローネ
この作品は簡潔に言うと女子高生が異世界転移して頑張るという作品ですね。
あらすじ
高校1年生の占い好きな少女、神崎ひとみは突然地球から異世界ガイアに飛ばされてしまう。月と地球を天空に抱くその世界では人の“想い”が世界を変える力となる。その地で、彼女は自国を滅ぼされた若き王、バァンと、彼の乗る人型機械「エスカフローネ」、陰のある騎士アレンたちと共にガイア全土を取り巻く戦いへと巻き込まれていく。




