表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/288

引いて駄目なら





どうしましょう、普通に迷ってしまいましたわ。


ここまで完璧にわたくしの予想通りに物事が動き、澄まし顔でブラックローズの面々を送り出した手前ここで「迷子になりましたわ。どうしましょう?」とは、わたくしとペアを組んで一緒に来ているウルの前で言える訳が無い。


あの時の、目をこれでもかと輝かしていたウルの御主人様像を壊さない為にも。


そう思いながらコールドウェル邸をウロウロと不規則に移動する。


ちなみにただ移動するだけではウルに、わたくしが迷子になった事がバレてしまうかもしれないのでそこはかとなく適当に解術の魔術を要所要所に怪しい箇所へ放って行く。


迷子じゃないですよー。

ほら、わたくし解術してるのですよー。


「あの、フランお嬢様?」

「大丈夫よウル。このままついて来なさい」

「はいっ!!」


痛い。


その疑う事を知らない眩い瞳に見つめられて胸が痛む。


しかし、一カ月前まではまさかここまで心を開いてくれるなどとは思いもしなかった。


だからこそわたくしに向けて来るその瞳を護りたい。


そんなこんなで十一箇所目を適当に解術魔術を放った時、コールドウェル邸全体の雰囲気が手に取るように変わった気がした。


それは空気なのか視覚なのか魔力的な何かなのか分からないのだが、明らかに何かを解術出来たのは間違いない。


分からないのだがウルの瞳が更に輝き出した事だけは分かった。


「さぁウル、この突然出てきたこれ見よがしな扉はなんなのでしょうね……あれ?、開かない……小癪なっ!引いて駄目なら………全力で押すのみですわぁっ!!」


何かが爆破したような轟音と共に扉が開いた。


このわたくしに手間をかけさせる猪口才な扉など、わたくしの頭脳を持ってすれば敵ではありませんわ。


開かないからと言って破壊するのは脳筋のする事でありスマートではないとわたくしは思う。


そして扉の向こうには本日の役者が揃い踏みである。


そう、これは全て計算通りなのである。


あぁ、ウルの視線が何故だかわたくしの罪悪感を刺激する。


しかし、役者が揃っているのだ。


更にカッコいいわたくしを見せて差し上げましょう。


そしてわたくしはゆっくりと渦中の中へと歩いて行く。


「諦めなさい。既にこの件は然るべき場所へ通報させて頂いておりますわ」

「えっと………フラン様?」

「いいえ、違いますわ。全くの別人ですわ。きっと長い時間拘束されて疲れてらっしゃるのでしょう」

「いやでも、金髪のドリル──」

「違います。他人の空似ですわ」


ふぅ……危なかった。


勘のいいガキは嫌いだよ、全く。


しかしさすがわたくしの完璧な変装である。


一時はバレたかとも思ったがどうやら騙しきれたみたいである。


「ふむ、お前が誰か知らないがたった二人で何が出来る?残念だがここには我がコールドウェルの護衛であり冒険者ランクSSSでもある剛拳のゴウラムと剛剣のドウラムがいる。生きて帰れると思うなよ。殺れ、二人とも」

「「ハツ!!」」


わたくしとシャルロッテの会話が終わった後、既に通報していると知っているにも関わらず焦るそぶりも見せず余裕の態度を崩さないコールドウェル家の当主、ゲームでもお世話になったアードルフがわたくしに向けて護衛二人をけしかけて来る。


そしてわたくしは剛拳のゴウラムの拳を扇子一本で受け止め受け流しその勢いのまま扇子で殴り飛ばし、剛剣のドウラムの斬撃を扇子でその剣ごと斬り飛ばすとゴウラム同様殴り飛ばす。


「で、冒険者ランクSSSの護衛二人、剛拳のゴウラムと剛剣のドウラムがどうしたですって?」


五秒にも満たない一瞬の出来事が未だに信じられないのかアードルフやリカルドは半ば放心状態となっていた。


しかし、現状を理解して行くにつれて二人の表情はみるみる青ざめて行く。


そのまま放っておいても衛兵が来るまでこの状態の様な気がするのだが、何もせず放って行く程わたくしは甘く無い。


二人を捕縛魔術で捕縛するのだが、その間ウルがシャルロッテの腕と足を拘束していたロープをナイフで解いてくれていたのでついでに念のため回復薬も渡しておく様に指示を出す。


そしてわたくしは来た時に開けた扉で部屋を出てもうここには用は無いとコールドウェル邸を出ようか、それともタダで出るのも癪なので金品をパクろうか考えていたその時、廊下の先に人影が見えてくる。


「ここで何をしている、フラン」

「違いますわ。わたくしはフランではございません」


その人影はレオ・クロスフィードであった。


レオはわたくしを睨みつけ、殺気を隠す素振りもせず飛ばして来る。


その姿は威嚇するライオンの様であり今にも飛びかかってきそうな程である。


その表情はわたくしの返答を聞き更に険しくなるとともに苛立ちがその表情に加わる。


しかし、自分の当てが外れたくらいで心を乱し過ぎであろう。


修行が足りませんわ、修行が。


「そして、わたくしがここで何をしていたか知りたいのであれば実力でお聞きになればよろしいのでは?」

「あくまでしらを切るつもりか、フラン。しかし……実力で聞き出すって言うのは俺も賛成だっ!!」

「しらを切る、一体なんの事でしょう?フランなどわたくしは知りませんわ。それと、そんなにガッツく男性は女性に嫌われますわよ?」

誤字報告ありがとうございます!

大変助かっておりますっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] なんでこんなに戦闘力高いんだろ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ