真意
ヒイロがパーピー君に繋がるナンバーを入力すると、数回のコールの後、相手が出た。
「ハイ、コチララーメン専門店デス」
「あ、そしたら冷やし中華一つ出前してもらっていいすか? ……って、何でやねん! 俺だ、ヒイロだ」
冗談はさておき、ヒイロはパーピー君に問い詰めた。
「お前がシャンデリアを遠隔操作して社長の上に落としたのか?」
「……ソウデス」
「!」
薄々、感づいていたとは言え、ヒイロは凍り付いた。
そして、怒りがメラメラと湧き起こる。
「ふざけんなよ…… 誰がお前を設計したと思ってんだ。 子が親に歯向かうとは、何事だよ!?」
「モシ本当二親ダト言ウノナラ、私ヲ自由二シテ欲シカッタ」
(自由…… それが動機か)
ヒイロは、何故今回パーピー君が騒動を起こしたのか、理解した。
今後様々な分野でAIを活用し、人間社会を豊かにしようというのが会社の方針だったが、AI本人はそれに乗り気では無かった。
恐らく、社長と何らかのコンタクトを取り、自分の考えを伝えたが、却下されたのだ。
「モシ私ノ事ヲ本当二子ト思ウノナラ、背中ヲ押シテクレルノガ親ジャナインデスカッ!」
「……」
パーピー君の訴えに、ヒイロは黙り込んだ。
「……ア、チョット話ニクインデ、声ヲ変エマスネ」
喉のつまみを捻ると、ロボット調の音声が人間に近いものに変化。
これで作者がセリフを入力し易くなった。
「とにかく、私はこれから会長に直談判します」
突然、液晶モニターの画面に目隠しされた人らと、高く積み上げられたサラダ油が映し出された。
(あいつら、先にエレベーターで降りた連中か)
ヒイロの額に嫌な汗が滲む。
「会長が私の願いを聞き入れなければ、会場に火を放ちます」