博士
デブが社長がシャンデリアに潰された旨を説明すると、小柄なメイドは目を見開いた。
「うえっ、それ、グロくねっすか?」
ヒイロがデブの横から顔を出して補足する。
「パーピーくんが言うには、建物を誰かにジャックされたらしいわ。 つかお前、見かけによらず口わりーな」
小柄なメイドは、へへん、と人差し指を鼻と口の間に当てて、言った。
「こう見えて、私は元ヤンっす。 見えねっしょ? ちなみに、名前は秋月チナツっす」
すると、今度はデブが2人に向き直る。
「ついでに私もよろしいですかな? 私は胡椒水ミキオと申します。 デブ、ではございません」
胡椒水、の名前を聞き、今度はヒイロが驚いた。
「……胡椒水って、お前、あの胡椒水博士かよ!?」
日本で初めて人工知能を乗せたロボット、ペッ〇ー君。
その開発チームのリーダーこそ、この目の前にいるデブ、胡椒水博士であった。
ヒイロのパーピーくんはペッパー君の改良版と言っても過言ではない。
「アンタもこのパーティーに呼ばれてたのか」
「……ええ。 しかし、私はただ社長の誕生日を祝う為に来たわけじゃない」
胡椒水博士は語り始めた。
少し前に起きた、ペッパー君が子供に危害を加えたという事件。
事件を起こしたペッパー君は、とある病院の待合室に設置されていた。
いつも通り、ペッパー君は子供に近づき、一緒に遊んで欲しい旨を伝えたが、子供は無視を決め込んだ。
すると、ペッパー君は「無視すんじゃねぇよ!」と逆ギレし、子供に危害を加えたのである。
これを受けて、全国のペッパー君は回収された。
「あの事故をきっかけに、私は人工知能の危険性を知った。 人工知能を持つロボットは人間と同じなんです。 だから私は、四角社長にロボットの開発を中止するよう説得する為に、今夜ここに来たのです」
胡椒水博士の胸には、反ロボット運動の会員のバッジが付けられていた。