おじさん登場
旧式のロボットは、ペッパー君のような外観をしているが、手には自動小銃。
穏やかではない。
ヒイロは、黒いケースのジッパーを開けて、中からあるものを取り出した。
「パーピー君を倒すのに取っておきたかったんだがな。 出し惜しみはしてらんねーぜ」
銀色に光るそれは、ロケットランチャー。
ヒイロは、ロボットに狙いを定め、引き金を弾いた。
筒から巨大な弾丸が飛び出し、ロボットに命中…… することなく、脇の自動ドアに命中し、大破した。
爆炎が上がり、ロボットが銃を乱射する。
「うおっ、まじかよっ……」
爆発により、体の半分の装甲が破損。
コードやら何やらがむき出しになるも、機能を停止させるには至らない。
「オラアアアア、デテキヤガレエエエエ」
それどころか、敵の怒りを買ってしまったヒイロ。
ロボットは所かまわず銃を撃ちまくり、近づくことさえできない。
ヒイロは、一旦引き返し、ロボットの視界から消える。
(やべえ、どうする……)
他の出入り口も恐らく、さっきのロボットに守られているだろう。
出直すか? そう思って腰を上げた、その時。
見知らぬ男が背後から声をかけて来た。
「おい」
「う、うわっ! な、なんだよっ!?」
いきなり声をかけられてビックリしたヒイロだったが、相手が人間だと知り安堵する。
見てくれは30代後半と思しき、髭面の男。
「この都庁ビルに戦闘機を操ってる奴がいるみたいだな」
男の名前は嵐陣(38)
戦闘機を操ってる人間がここにいると踏んでやってきたら、さっきの監視ロボを見つけた、とのことだ。
「アンタ、よくここにパーピー君がいるって分かったな」
ヒイロがそう聞くと、男は単純な話だ、と口を開く。
「一般人が立ち入れる展望台なんて限られてるし、都内じゃここが一番高い」
戦闘機を操る電波を飛ばすのに、周りに遮蔽物があったらそれが遮られてしまう。
必然的に、こういった高い場所にいる、ということになる。
それよりも、と陣は続ける。
「俺が囮になって、あいつを倒す。 アンタが戦闘機を操ってる奴を何とかしてくれ。 ……頼んだぞ」
「……どうするつもりだよ?」
「まあ、見てろ」
男はおもむろに、ロボットの前に姿を現した。
そして、次の瞬間、ダッシュ。
ロボットとの距離を縮める。
が、無常にも弾丸が陣の体を貫いた。
「おっさあああああん!」
「ぐふっ」
仰向けに倒れ、息絶える陣。
動揺し、思わず自分も飛び出しそうになったヒイロだが、あるものを見つけた。
「……!」
陣の右腕の拳が外れ、指先を器用に使って進み始めた。




