嫌な予感
「オッケーで~す」
カット―、とヒイロが叫ぶ。
「え、ちょ、今のでいいの?」
チナツがきょろきょろと辺りを見回す。
「ああ、いい絵が取れたわ。 今日はもう帰ってもいいけど……」
もう一つ、頼みがあるとヒイロは言った。
「わりんだけどさ、お前メイクとか得意だろ? パーピー君の見た目、ちょっと良くしてやってくんね?」
チナツはサバゲーの他にもコスプレが趣味である。
高校に入った理由が制服がかわいいから、だったり、卒業後、一流ホテルでメイドをしていた経緯からもそれを察することができる。
「ロボットのメイクっすか…… 面白そっすね!」
チナツの快い承諾を得ると、その日はラボを後にした。
それから数日後……
その日は家で甲子園を見ながらだらだらしていると、アンジーがこれ見よがしに掃除機をかけて妨害してくる。
「おい、何だよ、見えねーっての」
「家でゴロゴロして、邪魔なのよね」
「んだよ…… ちっ」
ソファから立ち上がると、煙草を吸いに外へと出る。
(あーあ、今までと違って一緒にいる時間がなげーのはいいけど、今度は逆に邪魔者扱いかよ)
複雑な思いのヒイロだったが、急に思い立って、チナツにラインを入れる。
あれから一週間が経過し、メイクも終わったころだろうか。
次はいよいよパーピー君を立ち上げて、試験的に動かしてみる段階である。
掃除が終わって部屋に戻ってくると、野球中継の合間に突然、ニュースの速報が流れた。
「あん?」
男性ニュースキャスターが、原稿を読み上げる。
「速報です。 先ほど、都内にあるコンビニを爆破するという事件が発生しました。 爆破されたコンビニは合計6か所で、これらの事件の関連性を警察が総力を上げて調査中です」
「テロか?」
ヒイロがテレビのモニターを見ていると、以下の襲撃されたコンビニの名称が表示された。
日ノ出町三丁目店
猪田駅前店
ロフト付近店
リンリン商店街店
弁天通り店
陣内町四丁目店
「ん?」
ヒイロはあることに気が付いた。
これらの店の頭文字もつなげると、こうなる。
「ヒイロ、リベンジ……」
ヒイロは嫌な予感がして、スマホを見た。
「……」
チナツからの返事はない。
ヒイロは慌てて車のキーを棚から取り出し、外へと走った。




