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滅亡ビル  作者: oga
第二章 新たな計画
20/27

再開

今、パーピー君2号と秋月チナツの頭は、電極で繋がれている。

電極は健康診断で心電図を図るときに使うような、体に貼り付けるタイプのものだ。

頭に得体の知れないものを貼られたチナツは、恐る恐る聞いた。


「これから何が始まるんスか?」


 パソコンの前でキーボードを打ちながら、ヒイロが言う。


「今からお前の思春期の頃の記憶をパーピー君に転送する」


「え、ちょ、心の準備が……」


「行くぜ」


 エンター、のキーをヒイロが押すと、チナツの頭の中で過去の映像がフラッシュバックした。








 チナツ(17)は、都内にある私立早乙女学園の女学生であった。

ここは都内でも有数の名門女子校であり、偏差値は60。

そんな学校に通うチナツには、秘密があった。

授業の終わり、チナツは友達の花園フジコに声をかけられる。


「ねえ、チナツさん、帰り道に紅茶でも飲んでいきませんこと?」


「あっ…… 今日はお稽古がありまして…… すみません」


「ふふ、そういえば最近ヴァイオリンを始めたんでしたっけ。 また明日誘いますわ」


 チナツは、黒い細長いケースを担いで屋上にやって来た。


「はあっ、はあっ…… くっそ、やってられっかよ」


 髪を結っていたリボンを乱暴に振りほどくと、黒いケースから電動ガンを取出し、待っていた仲間に言った。


「っしゃ、始めっか!」










 そんなチナツにも春が訪れる。

高2の春、たまたま近所に住む幼馴染と再会したのだ。


「あれ、チナツじゃんか」


「え…… ヒロ?」


 小学校の時以来であった。

それまでずっと疎遠だったのに、今日はたまたま同じ電車に乗り合わせた。


「お前もこの電車だったのかよ!」


「う…… うん」


 チナツは一気に恋に落ちた。









 家庭科の授業中も、チナツの心はそこにはなかった。

先生が何か言っているが、全然耳に入ってこない。


(くっそ、朝からヒロのことばっか考えちまう…… てかあいつ、いつの間にあんなかっこよくなっちまったんだよ)


「えー、秋月さん、聞いてますか?」


「……」


「チナツ! 当てられてるよ!」


「え……」


 ガタ、と机から立ち上がるも、何と答えればいいか分からない。


「あ、すいません、先生。 何ですか?」


「はあ…… もう一度いいますよ。 脂肪分の多い食材と相性のいいドレッシングは何か、と聞いています」


 何だろう、お酢は脂肪分を分解するから、バルサミコ酢かしら?

そんな風に一瞬思ったチナツだったが、結局回答することはできなかった。 


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