反抗期
深夜1時。
家族が寝静まったのを見計らって、ヒイロは外へとやって来た。
車に乗り込むと、キーを差してエンジンを回す。
そして、とある場所へと向かった。
やって来たのは、住宅街から少し離れた一角。
かつて、ヒイロがAIを開発する上で使っていたラボである。
自宅から30分ほど車を走らせた場所にそれはあるが、その路肩にもう一台の黒い車が停まっていた。
ヒイロが車から降りて、先に停まっていた車へと近づくと、パワーウインドが開いた。
「久しぶりす」
「……ああ、こんな時間に呼び出して悪いな」
現れたのは、チナツだった。
ヒイロがチナツと会うのは5年ぶりである。
「相変わらず、メイドやってんのか?」
「私、三十路っすよ。 もう結婚して引退っすよ」
「そーか。 とりあえず、中入ろーぜ」
車から降りて、2人はラボの中へと入った。
しばらく使っていないラボだが、壁に据え付けてある盤のブレーカーを入れると、周りの照明が点灯。
そして、部屋の中央に中味がむき出しの、作りかけのロボットの姿。
「まとまった金が手に入ったから、コイツの制作の続きができる」
そのロボットは、5年前に事件を起こしたパーピー君の後継機種であった。
「で、私は何を手伝えばいんすか?」
ロボットの研究にチナツが必要な理由。
ヒイロは説明を始めた。
「俺は、パーピー君に「良い子」を経験させてきたが、それが失敗に繋がった原因だったんだ。 俺は、人間のある重要な時期をパーピー君に経験させていなかった」
「……重要な時期?」
「反抗期だ。 お前の「元ヤン」時代の性格をコイツに反映させたい」




